魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep1闇の魔鋼騎Act3新兵の着任
エンカウンターの古城。
ここはフェアリア皇国、独立陸戦騎第97小隊が基地として駐屯している。
そう、ここが物語の始まりの地。
そして今から始まる新たな物語の始まりの基地。
ここエンカウンターの古城。
陸戦騎独立第97小隊の基地で、新入隊の申し継ぎが行われたのは昨日の事だった。
「えっ?マクドナード曹長。本当ですか?」
ミハルが整備班の班長を務めるマクドナード曹長に訊いた。
「ああ、オレ達が技本で言い渡されたんだ。
新車両の配備に当たり、整備員を増員しろとな。
まあ、こっちは猫の手も借りたい位だったから。
・・・新兵と言えども色々と助かると思ったから、一緒に連れて来たんだ」
マクドナード曹長が、ミハルに答えてから小隊長であるリーンに申告する。
「中尉、二人を紹介します。彼等は2人共整備科を卒業したての二等兵です」
そう告げてからドアに向って、
「よし、ハンネ、ザルバ。入れっ!」
2人の新兵を指揮官室へ招き入れた。
ドアを開けて入って来た少年を見たミハルが眼を大きく見開いた。
ー う、嘘。そんな・・・そんな!
ミハルの身体が自分の意思とは関係なく、少年に抱き付いていた。
「マッ真盛っ!マモルぅ!」
黒髪の少年兵に抱き付いたミハルが叫ぶ、弟の名を呼んで。
「おっ、おいミハル?」
マクドナードが驚いて止めるが、ミハルは涙を流しザルバを抱締める。
「ああ、無事だったのねマモル。良かった、てっきり連れ去られたものと思っていたんだよ?」
ミハルの言葉に居合わせた全員が固まってしまう。
「おいミハル?誰と勘違いしてるんだ?」
マクドナードがそんなミハルに声を掛ける。
「ミハル?落ち着いて・・・彼はあなたの弟じゃないわ」
ザルバに抱き付いたミハルの肩に手を置いてリーンも止める。
「えっ?・・・えっ?」
ミハルが顔を上げてザルバの顔をマジマジと見詰める。
ー あ、確かにマモルと善く似ているけど・・・別の人だ・・・
気付いたミハルが慌てて飛び退くと。
「ご、ごめんなさいっ。勘違いでした、とても似ていたので・・・つい・・・」
ザルバに謝った。
「はあ、軍曹殿。
僕が誰と似ていたかは存じませんが、突然抱き付かれるのはどうかと思いますが」
ザルバが困った様に苦笑いを浮かべる。
「ご、ごめんなさい。ホント、ごめんなさい!」
顔を赤くしてミハルが謝った。
「はあ・・・ミハル。落ち着きましょうね。では2人、自己紹介をして頂戴」
リーンがミハルを宥めてから2人に命じた。
「ザルバ・ガンオム。二等整備兵です。中尉殿」
横に居た銀髪の少女が同じく申告する。
「ハンネ・パルミール。同じく二等兵です」
切れ長の青い瞳をリーンに向けて紹介した。
敬礼を返したリーンが、
「ザルバ君とハンネさんね、これから宜しく。
ではマクドナード班長の指揮下に入りなさい。
解らない事があれば班長以下古参者に遠慮無く訊く事。解ったかしら?」
優しく教えた。
「はい。整備長の指揮下に着任します」
2人が再び敬礼をしてリーンに答えた。
「着任式はマクドナードに任せるから。準備出来次第に連絡して」
リーンが式の事をマクドナードに任せる。
「了解、準備が整い次第に報告します」
マクドナードが2人と共に指揮官室を出る時に答えた。
「ねえミハル。そんなに似ていたの?あのザルバって子」
3人が部屋を出て直ぐリーンが訊いた。
「う、うん。そっくりだった。
一年半前に別れたままの顔・・・でも善く見たらおかしいよね、違うのが判ったんだよ」
「確かにフェアリアでは珍しい黒髪をしているし、歳も同い年位だものね」
リーンも3人が出て行ったドアを見ながらそう言ってミハルの見間違いを責めなかった。
「ううん。顔形がそっくりでも、瞳の色が違ったの。
マモルの瞳はザルバ君みたいに・・・私みたいに黒くはない・・・赤鳶色なの」
ミハルが思い出す様に、少し悲しげな顔でリーンに教えた。
「そう・・・か。もう一人の継承者は、ミコトの瞳と同じ色をしているんだね」
リーンの口からリインの声がする。
「そう、あたしの槍を秘めたもう一人の継承者は、あたしと同じ瞳の色をしているんだよ、リイン」
ミハルの口からミコトの声が答えた。
新加入した新兵の姿に戸惑いを見せるミハル。
突然現れた<双璧の魔女>達に意識を乗っ取られて、戸惑いを隠せない二人。
そして、ミハルとリーンは次なる戦場に想いを馳せる。
次回 次期作戦目標は?
君は更なる闘いに想いを馳せる・・・