魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep1闇の魔鋼騎Act2プロローグ後編
雪の中でそれぞれの想いを抱く人達が、その想いを遂げようと動いている。
雪は白く舞い散り、辺りを変貌させる。
そう、雪はその白さとは裏腹に、何もかも埋め尽くす・・・
雲は吹雪となって降りかかる。
その中を数両のフェアリア中戦車が進んでいた。
「併せて4両。・・・やるぞ!」
雪の中に砲身だけを出している車両に女の声が響く。
砲身がゆっくりと先頭の4号H型へと向けられ・・・
((ズッドオオッムッ))
その砲口が火を噴いた。
((ガッ グワンッ))
狙われた4号は、車体後部を撃ち抜かれて爆発する。
不意を衝かれたフェアリアの小隊は先頭車両の被弾状況から、左舷に砲塔を旋回させ始めた。
だが・・・
((ズッドオオムッ))
また砲身だけを出していた車両からの一撃を受けて、2両目も撃破されてしまった。
フェアリアの残り2両は慌てて車体を敵が撃って来た方向に正面を向ける。
だが、一番装甲の厚い部分に・・・
((ガッ グワアーンッ))
3両目の砲塔正面装甲をも、難無く貫通させて砲塔を噴き飛ばしてしまった。
最後の4両目にその砲身が向けられる。
4号H型も、漸く敵の砲身に気付き75ミリ砲を向け、
((ズッドオオムッ))
突き出されている砲身に向けて応射した。
((ガッキィイイン))
当り処が悪かったのか75ミリ砲弾は雪の中に隠れている車両に弾かれてしまった。
と、同時に車体を隠していた雪が崩れ、車体の一部が露出する。
白い雪の中から見える車体は、真っ黒く塗装され少しの雪では隠し様が無い程目立っていた。
「ふふふっ、私に弾を当てて、生きて戻れはしないぞ!」
不気味な女の声が車体を震わせる。
フェアリアの4号H型に向けて車体が動き出す。
雪に覆われていた車体が姿を現した。
長大な砲身。
その割には車体自体は小さく、軽戦車並だった。
唯一、目立ったのは・・・
雪が崩れたその車体正面装甲に浮き出た赤紫色の紋章。
それは、この車体が魔鋼騎である事の証。
赤紫色に発光するその紋章は・・・
「あっ、あれはっ!暗黒魔鋼騎!」
4号H型の乗員が叫んだ時には、その砲が火を噴いていた。
4両のフェアリア中戦車が煙を上げて撃破されている場所から走り去る軽快な車体。
その車体から女の笑い声が流れ出る。
「あははははっ、さあ早く来るがいい。
今度は私がお前を倒してやる。一人残さず葬ってやる!」
真っ黒な車体に赤紫色の邪大蛇紋章を浮かべた軽戦車が、吹雪の中に消えていった。
__________
「・・・・で、これはどう言う事ですか、班長?」
リーン中尉が額に手を置いて訊いて来る。
「う、え、えっと・・・ですね・・・モゴモゴ」
ミハルがしどろもどろで答えようとする。
「ミハル軍曹、オレ達も怒っている訳じゃあ無いんですぜ。間違いは誰にでもあるんだからさ」
マクドナード整備長も、ため息を吐きながら問い掛ける。
「い、いや、あの・・・その・・・ご、ごめんなさいっ!」
ミハルは涙目で二人に謝る。
3人の後ろには大きな穴が開いた城壁があった。
「まあ、誰も怪我人が出なくて良かったけど・・・どうしたのよミハル。らしくないじゃないの?」
リーンがため息を吐く様に訊いた。
「あ、あの。ぼうっとしてて・・・ごめんなさい!」
ミハルは2人に謝るしかなかった。
とても本当の事を話す訳にもいかなくて。
ー だってまさか実弾を装填されていたのが解りませんでした、なんて言えないし。
私が怒られれば済むのなら・・・それで済むのなら・・・
ミハルは整備場で砲身を磨いている少年を見てそう思った。
「んー、しょうがないわね。
でも誰かが責任を取らないと示しが就かないから・・・ミハルには始末書を書いて貰うわね」
リーンが困った様に額を押えて命令する。
「は、はい。解りました」
「んー、それと罰として隊内の掃除を命じます。いいわね?」
「えっ?あ、はい。了解です・・・Orz」
リーンに命じられて軽い罰にしてくれたリーンに感謝する。
「ミハル、リーン中尉に感謝しろよ。普通なら営倉行きものなんだからな」
マクドナード整備長に言われてしまう。
「ええ、勿論。感謝してますよ、ホントに!」
ミハルは苦笑いを浮かべて頭を下げた。
ミハルの姿を砲を磨きながら黒髪の少年がじっと見ていた。
眼に怪しげな光を滲ませながら・・・
プロローグをお贈りしました。
どうでしょう?意味深な感じで始まった第3章。
次回からは何時もの通り?の、形式で続けて行こうかと・・・
では、次回もお楽しみにっ!
次回 新兵の着任
君は新たな若人に心を躍らせる?!