魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦 終章 暗黒面<ダークサイド>と闘う意味
皇都で皇位継承争いに終止符を打ったリーンとミハル。
2人の闘いはまだ始まったばかりだった・・・
2人は還る・・・戦場へと。
未来に向って歩む為に・・・
重々しい機械音が響く。
まるで鼓動を告げるかのようなリズミカルな音が。
((ブオォン ブオォン))
何かの機械が作動している・・・
「フェアリアに<日の本>の海軍が運んだ新兵器が稼働態勢となるまで、あと何ヶ月掛かるんだ?」
一人のロッソア将官が参謀に訊く。
「はっ、スパイの情報によりますと、1ヶ月・・・いや、3週間程度かと・・・」
若い参謀がメモを捲り答える。
「早くとも2週間以内に結果を出さねばならん」
将官がドアを開けて入ったのは、何かの研究室だった。
((ブオォン ブオォン))
開けた瞬間に機械音が響き渡る。
将官の後に続けて入った参謀が。
「はい、将軍。実験結果も良好な様です。後2・3日でモノになりそうです」
参謀が見上げるのは一両の車両。
「うむ。これが新魔鋼騎か。どれ程の実力があるのか?」
将官が参謀を見て下問する。
「砲はこのクラスには搭載限度の85ミリ砲。そして自動装填装置を備えて、5連発を撃てます」
参謀が車体を見上げて答える。
「違う、砲の事等訊いてはおらん。魔法の力を訊いたのだ。元の力と比べてどうなのだ?」
将官に能力度を訊かれた参謀が、自信有り気に答える。
「は。元の彼女がレベル4なら、今はレベル5マイナス。
そうです、これは究極の力を発揮させる事が出来る殺人マシーンですから」
「ほう、そうか。
ならばあのフェアリアにいる<双璧の魔女>とやらの紋章を浮かべる戦車にも勝てるのだな?」
将官がニヤリと笑った。
「は。多分実力では・・・勝っているものと思われますが・・・搭乗員次第では・・・」
参謀が口を濁して答える。
「搭乗員が劣るというのだな。
・・・それは心配いらん。格好の搭乗員を作ったからな」
将官がほくそ笑んで応える。
「造った?どう言うことです、閣下?」
参謀の質問に応えず、将官は口を歪めて笑う。
そして教えた、悪魔の言葉を。
「この車体に最高の搭乗員を造ったのだ。最高に似合う、呪われし搭乗員をな!」
笑いながら話す将軍の前にある車体。
その車体に魂が通った様に、一つの紋章が浮き出て揺らめいていた。
その紋章は赤紫色に輝き、邪な形を浮き立たせている。
・・・その紋章とは・・・
槍に蛇が絡みつく、魔女の紋章。
そう、ミハルがエレニアで倒した因縁の紋章だった・・・
第2章 エレニア大戦車戦 終章
エピローグ 闘う意味
エンカウンターへ向う列車の中で、窓から入ってくる風に黒髪を靡かせてミハルが訊いた。
「ねえリーン。いいの?」
同じ様に金髪を靡かせているリーンを眩しそうに見詰めて、小首を傾げる。
「うん。私は隊へ戻るって決めていたから」
リーンはそんなミハルに微笑んで答えた。
「そう・・・なんだ。
でも、大丈夫?
あのまま皇都で皇王様やユーリ皇女と共に戦争終結に努力していた方が良かったんじゃないの?」
ミハルが戦場へ戻る事を心配して訊ねたが。
「いいえ、ミハル。
私の居るべき場所はあそこでは無いと思う。本当に向かうべき場所じゃないと思うから」
リーンは青く輝く瞳をミハルに向けて言った。
「向うべき処?そこはどこなの?」
真剣な瞳でリーンを見て、ミハルが訊く。
「そこはね、ミハル。あなたの向うべき処でもあるのよ。私達2人が向うべき所」
リーンも真剣な瞳で返す。
暫く考えていたミハルが気付く。
「そっか。・・・それがリーンの居場所。そこが目指すべき所なんだね?」
瞳を緩ませてミハルが応える。
「そう。私とミハルが背負った運命。<双璧の魔女>の継承者の運命。
これからが本当の闘いだと思うから・・・ね」
リーンの瞳は何の曇りも無く輝きを放っている。
「そうだね、それが私達の運命というのなら。
抗ってみせる護ってみせるリーンを、このフェアリアを。
それが私の闘う意味。それが大切な人ともう一度めぐり逢える、たった一つの方法だから」
ミハルは拳を握り締めて決意を表す。
その拳にそっと手を置くリーンが。
「そう。私達の願いを果すその時まで。ミハルと共に闘うのが私の運命。
ずっとずっと昔から約束されていた聖王女の誓い。
今こそその果されなかった想いを遂げて、邪なる者からこの国を、この世界を救うの。
・・・あなたと共に・・・ミコト」
リーンの瞳が聖王女リインと重なる。
「ええ、リーン。それが私達の闘う意味。
それが1000年前に倒しきれなかった闇との決着だと言うのなら。
あたしと共に闘ってくれ、リイン!」
ミハルの瞳が聖巫女の輝きと重なった。
「ええ、ミコト。
この娘達を護り抜き、必ず決着をつけてやりましょう!」
「ああ、リイン。
奴がどれ程力を持ったかは知らないが、闇は葬らなくてはならない、完全に!」
ミコトの手がリインの手に重なる。
リインが両手でミコトの手に重ね持って微笑んだ。
「さあ、約束の時が迫っている。ミコト、宜しくね」
「ああ。今度こそ全ての憂いを消去って安住の地へ行こう。2人で!」
ミコトもリインも、ただ見詰め合って微笑んだ。
その表情には真の闘う意味を知った二人の少女の姿が、陽の光を浴び輝いていた・・・・。
第2章 終わり
どうでしたでしょうか?
この第2章、ミハルが自分が闘う意味を求めて苦しみ、
そして<双璧の魔女>の目覚めと時を同じくして気付く迄を描いたつもり・・・なんですが。
ミハルとリーンの闘いは魔法力の増加と共に更に激しく、そして悲劇を生んで行くのです。
次章 双璧の魔女 では、ミハルと共に闘う者達にも次々と苦難が訪れて来ます。
そしてミハルの家族、マモルとの邂逅。
ミハル自身の力を求めて戦争の醜さが襲い掛かってくるのです。
その時ミハルは、リーンは一体どう切り抜けていくのか・・・
それでは、次章 双璧の魔女 で、お会いしましょう!
これまで「魔鋼騎戦記フェアリア」を応援して頂き、ありがとうございました!
これからも私達を応援してねっ!