魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep4闘う意味Act37マジカとユーリ マジカの秘密
ユーリを救ったリーンの前にある6輪装甲車を見上げると、そこから腕が伸び出てくる。
何かを知らせたいのかその腕はユーリに近付く。
車体のハッチから観ている二人は・・・
「はあ、今回ってホント、脇役だよねぇー」
「うん、ホントにホント・・・」
リンとランネが、ユーリとリーンを眺めてため息を吐く。
((ポカッ ポカッ))
マジカ少尉の腕が2人の頭をコツいた。
そんな3人を眺め、リーンとユーリの姿を見ているミハルはキューポラで想った。
ー 少なくとも今見ているリーンとユーリ大尉の間には、あの2人の姉みたいな溝は無い。
むしろその逆。
固い絆で結ばれた姉妹を越えた間に見える。
良かったねリーン!
姉妹が6輪装甲車に近付くとマジカ少尉の腕がユーリに近寄るように伸びて来る。
「ん?何だこの6輪装甲車・・・まさか?」
伸び出た腕と6輪装甲車を見たユーリの瞳が、大きく見開かれる。
「お前は・・・マジカ?あのマジカか?」
伸びた手を掴んで、ユーリが訊く。
マジカ少尉の手が喜ぶ様にブンブン振られて、
「やっぱりマジカか!目覚めたのね良かった!」
にこやかに顔を輝かせて語り掛けるユーリを見たリーンとミハルが。
「えっ?お知り合いなんですか?」
2人が目を点にして、交互に見比べる。
「ああ、知ってるのよ。この娘は私の大の親友なんだから!」
そう言うユーリがしっかりとマジカ少尉の手を握る。
「ねぇマジカ。そうでしょ、私達!」
懐かしそうに6輪装甲車を見上げた。
「わっ!?うきゃっ!」
突然マジカ少尉に車内に引き込まれたミハルが悲鳴をあげる。
「むわっ!?」
「わひゃっ!?」
リンとランネも車内に戻され連れ込まれたミハルと折り重なって前部に積み込まれる。
「なっ、何ですか?マジカ少尉?」
ミハルが訳を教えて貰おうと振り返ると、
キューポラからユーリ大尉がマジカ少尉の腕と共に入ってくる。
「あら、シマダ兵長・・・じゃなかった軍曹。こんな所で押し競饅頭?」
ユーリが前部座席で寿司詰め状態の3人に訊く。
「ユ、ユーリ大尉。訳を教えて貰いたいのはこっちですっ!」
リンの上で振り返ったミハルが抗議する。
連れ込んだマジカ少尉がブラウン管の中で両手を合わせている姿が写っているのに気付く。
「んっぷはっ、軍曹!くっ苦しいっ。胸をどけてくださいっ、死、死にゅう!」
リンが目を回してミハルに頼んだ。
「あっ、ごめん。でも狭くて起きれないんだ。少しだけ上にあげるから!」
ミハルが何とか身体を丸めてリンから離れると。
「ふえぇ。死ぬかと思った。
ミハル軍曹の胸って凶悪なんですね。埋もれて死ぬかと思いましたよぉ」
「ふぇ?何言ってんのよ、もう!」
リンとミハルが呆けた事を言ってる横からランネが。
「あの・・・お二人さん。マジでマジカ少尉が頼んでられるんですけど?」
ランネが額にデカイ汗を垂らして忠告してくる。
「おおっ!そうだった。ミハル軍曹、一つお力をお借りしたいんです!」
リンが我に返ってミハルに頼んでくる。
「ん?何をするの?」
ミハルが胸元に顔を擦り付けてくるリンに訊く。
「ええ、私とミハル軍曹の力で、マジカ少尉のホログラフィーを再現してあげたいんです」
先の戦いで見せた力を使って、
再びマジカ少尉の姿を現してあげて欲しいとリンに言われたミハルがユーリを見る。
「そっか。そう言う事か・・・解ったわ!」
頷いたミハルが右手を翳す。
「じゃあリン。いくわよ!」
ミハルの瞳と髪が青くなってゆく。
((ポウッ))
6輪装甲車の側面に紋章が浮かび上がる。
「ん?あれはミハルの紋章?中で何やってんのかしら・・まったく」
蚊帳の外に居るリーンが、腕を組んで6輪装甲車を見上げて呟いた。
「マジカ・・・本当に久しぶりだね。その姿で逢えたのは!」
ユーリがホログラフィーに手を伸ばす。
だが、その手はマジカのドレスを通り抜けてしまった。
「「うん、ユーリ。どうしても話したかったの。
私・・・あれから一体どうなったの?どうしてこんな姿になってしまったの?」」
車体のスピーカーからマジカの声が流れる。
リンが車内通話回路をスピーカーに切替てスイッチを入れていた。
「マジカ・・・覚えていないの?
あなたは死んだ・・・いえ、死に掛けていたの。
もう駄目だと思ったわ。でも、死なせたくなかった。
だから必死に頼んだのシマダ夫妻に、あの夫妻に・・・」
ユーリがマジカのホログラフィーに教える。
マジカがどうしてこの6輪装甲車と同化したのかを。
「「あのお2人に?私が死に掛けた?」」
記憶を辿る様にマジカが小首を傾げる。
「そう、あなたが私の身替りとなって巻き込まれた事故。
・・・いえ、暗殺事件。
その所為であなたは瀕死の重傷を負ってしまった。
もう誰も手をだせない程の傷を負ってしまったの。
だけど私は諦められなかった・・一縷の希望をシマダ夫妻に託したの。
例えマジカの身体が失われたとしても魂だけは救って欲しいと。
そしてあなたもそれを望んだんだよ?覚えていないの?」
ユーリの瞳から涙が零れ落ちる。
「「判らない・・・思い出せないよ、ユーリ」」
ユーリの瞳から顔を背けてマジカが戸惑う。
「そしてマジカは願ったの、例えどんな姿となろうとも私を護るって。
こんな私を護って再び盾となるって・・・そして息を引き取ってしまった。
だから私はシマダ教授にお願いした。
可能性が1パーセントでもあるなら、マジカを救って欲しいと!」
辛い思い出に耐え切れずユーリが泣く。
「「ユーリ。その結果が、今の私・・・なんだね?」」
「そう、シマダ教授が開発した魂のリーク。魔法使いの魂を魔鋼騎へ転移させる技術・・・」
ユーリが自分の手を見詰めて、そう答えた。
「「それで私は今、この姿になっているんだ」」
ユーリを見詰めてマジカ少尉が呟いた。
「マジカ・・・許して。
あなたを苦しめる事になるなんてちっとも思ってなかった。
あなたを失いたくない私の独りよがりだった。
あなたが転移に成功して喜んだのは私だけだった・・・」
「「そう、目覚めた時はパニックになった。
どうして私がこんな姿となったのか解らなくて。
でも今、ユーリの言葉を聞いて納得出来た。
心が軽 くなったし、少しだけ記憶が取り戻せた様な気がするの」」
「マジカ・・・」
ホログラフィーのマジカが、微笑んでユーリに言った。
「「うーん!やっぱりユーリはいい人だよ。ちょっと私より大人になったけどね」」
ぐーんと背伸びして笑うマジカにユーリが顔をあげて訊く。
「マジカ?許してくれるの?」
ニャッと笑ったマジカがこう言った。
「「あははっ、ユーリ。この姿も慣れると結構善い物だよ。
何せ強いし、速いし。そして大切な仲間と一緒になれたから・・・ね!」
その瞳はリンとランネに向けられた。
マジカ少尉の転移の訳を知るミハル。
そしてマジカにユーリは命じる事になる。
自分が願った本当の理想を・・・・。
次回 2人と一両の旅立ち
君は望む、大切な人が元へ戻れる事を・・・