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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep4闘う意味Act33悠久の時を越えて

ミハルがリーンに駆け寄った時、宝珠が気付いた。

千年の永きに渡って彷徨い求めた愛しい人の姿が今・・・目の前にあった。

リーンが振り返った。


「ミハル!ありがとう善く戻って来てくれたね」


剣を持ったままのリーンが、ミハルに呼びかける。


<あ、その姿は・・・その顔は、リイン。リインなんだ!>


宝珠が歓喜の声をあげる。

走り寄るミハルに、ミコトが頼む。


<すまんがミハル。少しだけ、少しだけでいいから身体を貸してくれ!>


ミコトはそう願うと魂をミハルに注ぐ。


<あ、ああ。見える、見えているリインの姿が!>


剣を右手に持つ凛々しい姿。

千年前と変らず美しい青い瞳、美しい金髪。


「リイン!リイン!リイン!」


ミハルの口をついてミコトの声が聖王女の名を呼ぶ。

呼びかけられたリーンの瞳が大きく見開くと。


「ミハル?・・・ミコト!」


リーンの瞳が更に澄んだ色に変わり始める。


「ミコト!私のミコト!私の聖巫女!」


走り込んで来たミコトを受け止めて抱き合う。

挿絵(By みてみん)


「リイン!リインなんだね。

 やっと逢えたんだ、自分の瞳で身体で感じ取れる。

 魂だけじゃなく生身の身体で触れ合えているんだね!」


「うふふっミコト。やっと願いが叶ったね。

 果せるなんて思ってなかったけど。この娘達に感謝しないといけないね」


抱き合う2人がお互いを見詰めてそっと唇を交わす。


「ああ、この悠久の時を越えてまた巡り会う事が出来たなんて。何て幸せなんだろう」


リインが頬を染めてミコトに言った。


「ああ。この一瞬を求めて千年もの永きに渡って彷徨い続けてきた。それが報われた気がするよリイン」


「私達の約束は今果された、この娘達によって。

 次はこの娘達の願いを果させてあげようよ、ミコト!」


「そうだ、その通りだリイン。

 それには奴を討ち果たさないとな。

 あたし達が残してしまった闇を。あたし達と同じ様に目覚めた奴を!」


ミコトがリインに決意を求める。


「そう・・・だよね。

 私達が完全に討ち果たさないと。私達が残してしまった闇を・・・ルキフェルを!」


リインとミコトが宮殿を見上げて誓った。




・・・ ・・・


「ふぇ?あれ?リーン。どうしたんだろ私達?」


ミハルがリーンに抱かれたまま気付く。


「ごめんねミハル。少しだけこのまま抱かせて。もう少ししたら魔法力が戻るから」


リーンがミハルの耳元で呟く。


「ひゃあんっ。リーン!耳、耳弱いからっ。吐息を吹き掛けちゃ駄目っ!」


ミハルが身体をビクンと震わせリーンから逃れようとする。


「ご、ごめんっミハル。そんなつもりじゃ・・・でも、もう少しだけ」


((ギュウッ))


ミハルを強く抱き締めてリーンがミハルのうなじに顔を付ける。


ー  はああ、安らぐわぁ・・・ミハルの匂い、ミハルの温かさ。

   魔法力が戻る事よりずっとこうしていたい、抱いていたなぁ・・・


リーンは眼を閉じてミハルを感じていた。


「あ、あの・・・リーン?恥ずかしいよぉ(真っ赤)」


リーンに抱締められて真っ赤な頬のミハルが、自分達を見詰める人達に気付いて恥ずかしがった。


「はっ!そ、そうね。あはは、ごめんミハル」


魔法力が回復したリーンが気付いて謝り、そっと放した。



「ミハル・・・バレンが。バレン中尉が犠牲になってしまったの・・・」


目を伏せてバレンの死をミハルに教えた。


「えっ!?中尉が?」


ミハルがリーンの見る方に眼を向けると数名の遺体が目に入る。


「バレン中尉!」


駆け寄ったミハルが見た姿は、

リーンの身を護る為に亡くなったバレン中尉と部下数名の戦死した光景だった。

「どうしてっ、どうして?」


その理不尽な出来事にミハルが繰り返し呼び掛ける。


「バレンも亡くなった人達も皆、私を護る為に凶弾に倒れてしまったの。

 こんな私を身を挺して護ってくれたのよ・・・」


リーンが眼を背けて呟く。


「私・・・私がもっと早く来ていれば・・・

 私がリーンから離れなければ。護っていてば・・・私がっ私がっ!」


ミハルはバレン中尉の亡骸に縋り付いて謝る。


「ミハル、自分を責めないで。責められるとすればこの私。私に責任があるんだから」


リーンが瞳に涙を溜めて唇を噛む。


「違う!リーンは悪くない。

 悪いのは自分の保身の為には手段を選ばないこの人。このサインをした人!」


ミハルはポケットから一通の書類をリーンに差し出した。


「これは?エリーザ・・・姉姫の・・・サイン」


差し出された書面に直筆のサインが書かれてあった。


「そう、攻め方の指揮官が持っていた書類。これが証拠、これがバレン中尉達を殺した命令書!」


ミハルの瞳が澱む、強い怒りを伴って。


「リーン!急ごう。そこに書かれてある名は一人じゃない。

 リーンだけを狙った訳じゃない。ユーリ大尉まで狙っているんだ!」


ミハルが眦を決してリーンに促す。


「う、うん。でも中央軍司令部に乗り込むなんて・・・敵に捕まりに行く様なものよ。

 私一人ならともかく、ミハルにまで危険が及ぶもの」


リーンが躊躇うのを見たミハルが叫ぶ。


「リーン!私はあなたの為ならこの身を捧げる覚悟なんだよ。

 リーンが求めるなら何だってする。

 例え群がる敵の中へ行けと言われたって構わない。それがリーンを護る為になるならっ!」


ミハルの真っ直ぐに輝く瞳を見たリーンが、ふっと息を吐く。


「ふう。ホント、こうと決めたら絶対曲げないんだから。

 ありがとうミハル、それじゃあ行こう!ユーリ姉様を助けに。私とあなたで!」

「うん!行こう。邪な者達からユーリ大尉を助け出す為に!」


リーンとミハルが駆け出す、同じ心で。


この国を闇から救う為に、救いを求めている同志の元へと。


再会を果たした<双璧の魔女>。

その志を秘め、大切な人を助ける為に向おうとする2人の前にそいつ等が居た。

ああ・・・・。


次回 ・・・リーンも・・かいっ?

ああ、君も私と同じく・・・気絶する?

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