魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep4闘う意味Act31<魔法の騎姫>
爆音をあげて場内へと突入するマジカ。
リインの危機に間に合うのか。
4号中戦車の砲身が向けられる・・・
何か・・・金属が押しつぶされる嫌な音が鳴り響いた。
((ドッガアッ))
轟音と共に半軌道車を乗り越えて、6輪装甲車が門を破って場内へと突入する。
「リンちゃん!発砲は控えてっ。怪我人を出来るだけ少なくするからっ!」
ミハルが砲撃システムを操るリンに命じる。
「了解、車長代理っ!」
キューポラで指揮を執るミハルに答えてリンが射撃安全装置を発砲モードへ入れる。
途端にリンの髪が青く、瞳の色も碧く染まる。
砲塔側面に青く輝く紋章が現れ、この車両が<魔法の騎士>である事を告げた。
ー これは!?この紋章は!
ミハルの眼に魔鋼騎である証の紋章が映る。
逆円錐型の枠にユニコーンの・・・
伝説の駿馬の紋章が青い輝きの元、まるで天を駆けているみたいに踊って見えた。
「そう・・・か。マジカ少尉自体が魔法使いなんだ。この6輪装甲車自体が魔法の力を持っているんだ」
ミハルは場内へ突入した車内を眺め渡して思った。
「ふふふっ、だったら私も応えてあげなきゃ失礼だよね。そうですよね、マジカ少尉」
ミハルが右手の宝珠へ力を求める。
<しょうがないな。これっきりだぞ継承者>
ミコトがやれやれといった感じでミハルの求めに応じる。
((パアアアアッ))
宝珠が輝き、ミハルの瞳と髪を碧く染めた。
3人の魔法使いの力が一つに合さり、伝説の紋章がユニコーンの紋章と一つになる。
その紋章は・・・
リンもランネも、そしてマジカ少尉もその力に驚く、<双璧の魔女>の紋章がユニコーンを飲み込み
<聖天馬の巫女>へと昇華した。
主砲の20ミリ機関砲が長砲身30ミリ砲へと変り、
前面装甲板が厚く、そしてマジカ少尉のあるべき姿がホログラフィーの様に車内に現れた。
「あ、ああっ!マジカ・・・少尉!?」
その姿を見たリンとランネが目を見張る。
「う、嘘。マジカ少尉が!現れた!」
銀髪を靡かせた美少女。
長いドレスを着て碧い瞳を大きく見開いたその姿。
「あ、私。今、人の姿に戻れているの?ブラウン管の中ではなくて・・・」
マジカ少尉が自分の手を眺めて喜んだ。
だが、その手は自分の身体をすり抜けてしまった。
「あ・・・。でもまだ映っているだけ・・・か。完全に人へとは戻れないんだ」
少し悲しげになるマジカ少尉は、
それでも元の姿に戻してくれた力の持ち主、ミハルを見上げて思った。
ー ありがとう、伝説の魔女。
少しでも私を戻してくれて、少しの間でもこの娘達に私の姿を見せてくれて
「ああ、マジカ少尉が・・・初めて姿を見せた。ブラウン管の中じゃなくて」
ランネが瞳を輝かせて見詰める。
「マジカ少尉!私達の車長!いつかきっと戻りましょう、あるべき姿に!」
リンがマジカ少尉に微笑んだ。
「ええ!いつかきっと。きっと元の自分を取り戻してみせるね。それまで頑張ろうね。リン!ランネ!」
「はいっ!」
ホログラフィーのマジカが、リンとランネに求める。
共に歩もうと、たった一つの願いの為に。
自分達のあるべき所へ戻る為に。
ー そう・・・自分達の願いを果すその時まで・・・
私と変らないね。願いは違っても、生きている限り願いの為に闘うその姿は・・・
ミハルは3人の想いに共感する。
「さあ!突き進んで!その願いを果たす為に!」
ミハルが3人に命じる。
「目標っ本部庁舎前に迫る中戦車。乗員を疵付けず砲撃出来ない様にする。攻撃始めっ!」
ミハルが本部庁舎に迫る3両の4号に対して発砲の許可を下した。
「了解っ、目標4号F型3両!砲を無効化する為に発砲しますっ!セーフティーロック解除!」
リンの右手が射撃システムの安全スイッチをオフにする。
セーフティーロックを解除された砲塔が、リンの照準に合わせて回転を始めた。
「よしっ目標、砲塔砲身基部。砲撃始め!」
ミハルの号令に30ミリ機関砲の自動装填装置が初弾を薬室内に込める。
「ランネさん!突撃始めっ。
4号の側面を取って!リンちゃんっ、ぎりぎりまで近付いて一発で決めるのよ!」
ミハルが戦車戦のイロハを教える。
「了解!」
2人がミハルの命令に応える。
キューポラに半身を出したミハルが叫ぶ。
「リーン!今行くよっ!」
75ミリ砲が建物に狙いをつけてくる。
「くっ!どこまでも私を亡き者にする気ね。そうはさせないから!」
リインが剣に力を込める。
ー ミハル、早く来て。私を・・・皆を護って!
リーンが心で叫ぶ、愛しき者の名を。
((グイイイィンッ))
3両の4号が砲身をリインの居る方へ向けてくる。
「くっ!」
発砲されると覚悟を決めた時だった。
6輪装甲車が突撃して来る。
3両の4号中戦車に・・・
「あ。あれはっ!魔鋼の光!」
6輪装甲車に浮かぶ紋章が見える。
そして・・・
「リーン!今いくよっ!!」
キューポラに半身を乗り出している少女が叫んだ。
ー 来てくれた。来てくれたんだ私のミハルが!
「いいえ、ミコトだから・・・ね?」
その碧き瞳、碧き髪。
そして額に浮かびあがるその輝きの中には、聖巫女の紋章があった。
リインの前に現れた少女の額に浮かぶのは
古の聖巫女の紋章だった。
ミハルはリーンを護る為に闘う。
次回 これが私の闘い方
君は大切な人を護る為に立ち向かう、相手を傷つけないようにしてまで。