魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep4闘う意味Act30リインの剣
リインの魂に導かれ、剣を手に取ったリーンの身に変化が・・・
在り得ない力の前にリーンは自らの魔法力に目覚めるのか?
リーンがフロアの壁に飾ってある一本の剣を見上げた。
「これを?どうするの?」
<リーン、あなたはまだ知らない。本当の力を、本当のあなたの力を。
私が教えてあげる、私が聖王女と呼ばれたその理由を・・・>
((ピイイイィン))
剣にリーンの手が触れた時・・・
「あ、ああ?!」
リーンの身体が突然自由が利かなくなり、身体が勝手に剣を握り振り翳す。
「いい?リーン。良く見ておきなさい。
これがあなたに授けられた力。
あなたと私が授かった神聖王女の魔法の闘い方。しっかり心に留めて置いて・・・ね」
リーンとリインが入れ替わった。
そう、今のリーンの身体はリインのもの。
そのリインの瞳に写る物だけがリーンに見える現実。
「行くよリーン。これから起きる事を心に焼き付けておきなさい!」
そう教えるリインは右手に剣を抜き放って走り出した。
((ズダン バンッ ガンッ))
リインの目の前にバリケードを破って突入して来る兵が見える。
そのバリケードの傍に横たわっているバレンの姿が・・・
「居たぞ!マーガネット姫だ、捕えろ!」
兵の後ろから指揮官らしき男が命じる。
「姫様!危ないです退がって下さい!」
親衛隊員がリインに隠れる様に叫びかける。
リインの瞳に横たわり血まみれになって既に動かないバレン中尉の姿が映る。
ー バレン!どうして?どうして!?
リーンが瞳の中で叫ぶ。
「リーン、これが真実だ。お前を護る者が死んでいくのを見たくないなら闘え。この私と共に!」
リインがリーンに決意を求める。
その手に握った剣を真っ直ぐに兵に付きつけて。
ー はい。もう誰も私の為に傷付くのを見たくないから。もう涙を見せたくないから!
リーンはリインの求めに応じて共に剣を握る。
「そうか・・・善く言った。
ならば教えよう、聖王女の闘い方を。本当の魔法使いの闘い方を!」
リインは剣を振り翳し、突入して来た兵へ突き進んだ。
「私はフェアリア皇国聖王女リイン・フェアリアル。
我が民に仇名す者には手加減はしない。退かぬとあらば、この剣を振るうのみ!」
親衛隊員が止めるのも無視してリインが銃を向ける兵に斬りかかった。
((ザシュッ))
リインの剣が兵の持っていた銃を真っ二つに切裂く。
返す刀で横に居る兵にも剣を振る。
((バギャッ))
2人の兵が何が起きたのか解らず立ち尽くして、
手にした銃が用を成さなくなっているのに気付いたのはリインが自分達に突きつけた時だった。
「ひっひいいっ!」
慌てふためく二人の兵を尻目に、
「さあ!退がるがいい。さもなくば、ただではおかない。少し痛い目に会う事になるぞ?!」
リインはバリケード越しに群がる兵達に言った。
「ば、馬鹿な?剣で銃を叩き斬るとは。ええいっ構わん射殺しろっ!」
指揮官が発砲の許可を下した。
「しょうがない。私は無益な殺生を好まないが・・・少し痛い目に会う事になるぞ!」
リインの瞳がすっと細くなる。
ー えっ?リインさん・・・何をする気?
リーンが剣を天に突き上げたリインに訊く。
「リーンよ、観ているがいい。
これが私の力、この魔法力をミコトがくれた。私の魔女から授かったお前の力の一部だ」
リインが剣を天に突き上げると共に髪が金色に染まりネックレスが輝く。
「我が聖なる力を身を持って知るがいい。邪なる者に手を貸す者共よ!」
((キュイイイイィンッ))
翳した剣の切っ先から風が巻き起こる。
「リーン!これがお前の魔法っ!聖なる力だっ!!」
リインが剣先を群がり銃を構えた兵達に突き付けて叫んだ。
「烈風牙!」
リーンの見ている前で、信じられない事が起きる。
剣先から光と共に竜巻が発生し、群がる兵を飲み込んで数十メートル先まで吹き飛ばした。
ー すっ凄い・・・これが・・魔法・・本当の魔法・・・
「これが、お前の持つ力。
これが聖王女としての運命を背負った継承者の力だ。よいか心しておくのだ、リーン」
親衛隊員も攻め寄せた兵達も、誰もが口も利けないほどの衝撃を受けた。
「ま、魔法使い・・・本当の魔法使い。姫様は伝説にある通り、本当の聖皇女なんだ!」
一人の親衛隊員が呟く。
「ああ。僕達の希望。僕達の救国の皇女!」
横に居た兵も頷き、感動の涙を零す。
「うわあああぁっ!」
親衛隊員が喜びの歓声を、攻め寄せた兵が恐怖の声をあげた。
親衛隊員達に振り返ったリインが告げる。
「さあ皆の者、私と共に闘うのだ。邪なる者に組する者共に屈せず!」
<<わああああぁっ>
親衛隊員が雄叫びを上げ歓呼する。
「馬鹿者!怯むなっ、多寡が一人の魔法使いなど銃弾の前には何程の事がある。
総員建物ごと吹き飛ばしてやれっ!」
指揮官が総攻撃を命じると共に、伝令に命じる。
「かまわん。全員を射殺してでもマーガネット姫を亡き者にしろ!あれを呼べっ!」
指揮官の命に伝令が横の奥にある林にサーチライトを向けた。
((ガルルォッ グルルアッ))
途端に白い煙とエンジン音が辺りを震わした。
林の木立の中から現れたのは・・・
「姫!奴等は戦車まで繰り出してきました。ここは危のうございます!どうか中へ!」
一人の兵が林から出て来た4号中戦車F型の砲身を見て叫んだ。
ー まさか!陸戦騎まで用意していたの?
これでは闘いにならない。私達には有効な対戦車兵器を持ってはいないもの
リーンが瞳の中で青ざめる。
「いいえ、リーン大丈夫よ。彼女達が来てくれたから」
リインの声にリーンが訊ねる。
ー 彼女達?誰の事・・・なんですか?
「うふふっ。それは・・・ね。あなたと私の魔女。・・・そう」
リインがリーンに答えた。
リーンが求めていた最高の答え。
ー ミハル!
「ミコト・・・よ!」
二人の声が同時に放たれた。
戦車を前にしたリーンの瞳に、紋章を浮かべる車体が写る。
車体に輝くその紋章は・・・
次回 <魔法の騎姫>
君は魔法の融合を眼にする、その力とは・・・