魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep4闘う意味Act29悲しき訴追
リーンが居る親衛隊本部にエリーザの私兵達が襲い来る。
その時リーンは、バレン中尉は・・・
突然、官舎が慌ただしくなった。
「マーガネット姫!反逆者達ですっ奥へ!」
バレン中尉がリーンの居るフロアに駆け込み叫ぶ。
「反逆者?どう言う事なのバレン?」
リーンが席から立ち上がって訊き返す。
「今は説明している場合ではありません。お早くこちらへっ!」
バレン中尉がリーンの手を取って走り出す。
「えっ?ちょ、ちょっと。バレン?」
走りながらもリーンはその訳を訊く。
「中央軍司令部が姫の捕縛に動いた模様です。
一個小隊以上の兵力で攻めて来ました!我々の力では防ぎきれません。
何卒お隠れになっていてください!」
バレンが決死の表情でリーンに答える。
「中央軍司令部が?私を?」
リーンの瞳が曇った。
「はい、とうとう奴等は実力行使に出たのです。姫を捕え、継承権を奪う為に!」
バレンの言葉にはエリーザとリマンダ、この2人の姉が命じた事を指していた。
ー ああ、こんな事になるなんて・・・
ユーリ姉様を助けたいばかりに出しゃばった私に腹をたててしまったんだ。
いえ、逆だ。追い詰められたと勘違いしてるんだ。
継承権を私に独り占めされたと想いこんだんだ。
そんな事、私は望んではいないのに・・・
リーンの瞳が涙で曇る。
やりきれない歯がゆさだけが心を支配する。
「バレン!私は投降します。
無益な闘いはしてはなりません。見方同士で闘う必要なんていらないのだから」
リーンは手を引くバレンに自ら2人の姉に捕われてでも不必要な闘いを避ける事を望んだ。
「いいえ姫、それはなりません。
そんな事をしたら皇王様はどうなるのです。
あの2人の姉姫がそのままにしておく訳がありません。
きっと強制的に退位させるに決まっています。
そして自分達がこのフェアリアの王になるに違いありません。
そんな事になればこの国は一体どうなるのです。お判りになられませんか!」
バレンに強く言われたリーンは、はっとする。
ー このフェアリアの為。
そう、私が一番望んでいた事は・・・この国に平和を齎す事。
この国を護る事。その為に私は力の限り闘って来た。今迄も、そしてこれからも・・・
「バレン、一つ訊きたい。エリーザ姉様が女王となったらこの国はどうなると思う?」
リーンが訊くとバレンは急に立ち止まり、リーンの瞳を見てこう言った。
「・・・滅ぶでしょう、何もかも。
民も国土も皆死に絶えてしまう事でしょう。
人に罪を擦り付ける者が国を守ってしょって行ける訳がありません。
残念な事ですが、それが私の見てきた事実です。それが此処に居る者全ての認識です」
バレンにそうまで言われてしまったリーンが心を決める。
「解りましたバレン。
皆の心がそう答えるのなら、私も共に闘いましょう。この国を護る為に」
バレンの手を離してリーンが立ち向かう決心を告げた。
「姫、姫様!」
バレンが呼び止めるのを背中で聞くリーンがフロアへと戻る。
「バレン!ここに居る人達の中で皇王派以外の人は?」
歩きながらリーンがバレンに訊く。
リーンの姿を眩しく想えるバレンが当然の様に、
「皆、皇王様の臣下。皇王様を守護奉る精兵です!」
「ならば命じます。
リーン・フェアリアル・マーガネットの名において、
この私を護り、皇王陛下への忠義を尽くしなさい!」
リーンの凛々しい姿に感動を覚えたバレンが、
「はっ!皇女様。直ちに総員を配置に付かせ、逆賊を討ち果たします!」
バレンがリーンに臣下の礼を捧げ、走り出した。
リーンは走り去り命令を下達して廻るバレンの姿を見ながら思った。
ー ミハル。ミハルがここに居てくれたのなら何も恐くないのに。
ミハルがここに来てくれたのならどんな辛い事にも立ち迎えられるのに・・・
リーンは微笑むミハルの顔を思い浮べて、心細く寂しく感じていた。
「マーガネット姫を連行する、大人しく引き渡せ!」
指揮官らしい少尉がバリケードに向って叫んだ。
「貴様等っ、恐れ多くも姫を連行すると言ったな。
誰の命令か?礼状無しでそんな戯言を訊くほど親衛隊はヤワではないぞ!」
バレン中尉が拳銃を手に前へ進み出る。
「貴官に告げる、我々は第1皇女エリーザ様の命を受け出動した者である。
これは勅命である。さっさとマーガネット姫を差し出せ!」
指揮官の言葉に怯まずバレンが答える。
「断じて断わる!
姫は我らが希望、我らが求める救国の姫なり。欲しくば力ずく奪ってみろ!」
バレンが両手を広げ立ち塞がった。
((ズダン、ズダン、ズダンッ))
銃声が7発響き渡る。
「ちゅ、中尉殿っ!」
バリケードから少年兵が走り出てバレンをバリケードの中へ連れ戻る。
腹に弾を食らったバレンは息絶え絶えに。
「姫を・・・姫を奴等に渡すな。何としても・・・」
周りの部下達にそう命じ、目を閉じてしまった。
「中尉殿ーっ!」
周りの兵がバレンに呼びかけた時には、もう息絶えていた。
「うっくっ、よくも、よくもーっ!」
怒りに瞳を曇らせた少年兵が押し寄せた兵に発砲した。
その発砲した少年兵と共に、応戦を開始した親衛隊とエリーザの私兵達との間で、激しい戦闘が幕を開けた。
<リーン。闘うのよリーン>
胸のネックレスから言葉が流れ込む。
「うん、闘うわ私は。私は自分だけの為ではなく、この国を愛している人々の為に」
リーンがネックレスに応える。
<そう・・・じゃあ、そこの剣を取りなさい。その聖剣を!>
古の王女リインの魂が話し掛ける。
闘えと。邪なる者達にこの国を渡すなと・・・
リインの力が今、甦る。
次回 リインの剣
君は聖王女の魔法力を知る。その伝説の魔法力を!