魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep4闘う意味Act27まじか?マジカ!
ヘンテコな6輪装甲車に乗せて貰い、親衛隊本部迄辿り着いたミハル。
その前に現れた部隊に戸惑う内に車内から車長の腕が伸びる・・・。
作者注)今回、ミハルには悪いですがギャグ・・・です。
装甲半軌道車を睨んだまま。
「どうするんです?軍曹」
リンがミハルに振り返ってこれからどうするのかを訊いて来る。
「う、うん。どうしよう・・・」
ミハルは判断に迷って口篭もった。
「これはもう反乱を鎮圧する行動みたいな光景ですね。親衛隊が何をしたんです?」
リンが強い口調でミハルに問い質す。
「何って・・・何も、誰も反乱なんて企てたりしてないよ。
もし、あるとすればその反対。皇王陛下に反乱を企てている部隊が襲っているのかもしれない・・・」
ミハルは中央軍司令部がリーンを捕えに来たと思ってそう答えた。
「皇王様への反逆!?それは大変だっ車長っ!
我々はどうすればいいのですかっ!?
我々皇都警備隊は?今夜までは、まだその任に当たっていますよね!」
リンが車内へ伺いを立てると、またまた車内から腕がニュッと突き出てくる。
「へっ?私?私ですか?」
無言で指がミハルを指し、それからその指を車内へと向ける。
「は?どう言う事・・・ですか?」
<こいつはいい。この車両の指揮を執れってさ。この6輪バギーの車長代理を任せるとさ>
宝珠のミコトがミハルに教える。
「え?ええっ?どうしてですか?」
体を見せない車長に訊くと、腕が早くしろとでも言っている様に激しく指で招く。
「ミハル軍曹、車長の命令ですから、早く中へ入って来てください」
リンがそう言うと、キューポラから車内へ引っ込んだ。
ー どうしよう?
他の人に迷惑掛かるんじゃないのかな。リンやランネさん、それにこの車長さんに・・・
戸惑いながら躊躇っていると、キューポラから腕が伸びて。
「えっ!?きゃああっ!?」
在り得べからぬ長い手がミハルの手を掴むと、強引にキューポラへ連れ込まれる。
ー ひええっ何なのこの手っ!?どれだけ長いのよっ?!
パニックになったミハルをその手はキューポラへと導く。
「わっ判りましたっ、解りましたからっ」
ミハルは手に導かれてキューポラへと潜り込んだ。
「いらっしゃいませ。ミハル軍曹!」
ランネが操縦席から振り返って笑う。
リンが車体前方射撃手席へ座って計器のチェックを始めた。
「・・・って。あれ?車長は?」
車内を見渡しても2人以外は誰も乗っていない・・・
「あれ?リン。車長はどこ?」
車内を探してリンに訊く。
すると・・・・。
((ツン、ツン))
「ひゃあっ!車長っどこにいらしたんで・・・へ?」
指で背中を突かれて振り返ったミハルの眼に車体から直接伸びた手が。
その先に名刺をヒラヒラさせてミハルに差し出してきた。
ー ・・・・(は?)
その手から名刺を受け取り一読する。
「特別陸戦騎、マジカ・マギカ6輪快速戦車・・・少尉・・・さんですかぁ」
名刺に書かれてある名を読んで、その手にニッコリと微笑んだミハルは・・・
「う、ううーん?!」
口から泡を噴いて・・・卒倒した・・・・。
「あーあ。だからいわんコッチャない少尉。
ちゃんと挨拶してからじゃなきゃ駄目なんですってば!」
リンがこの車体全体に向って注意した。
「しっかりして下さいミハル軍曹っ!寝てる場合じゃないですよ!」
リンに起こされたミハルが気付くと。
「あ、私。何か得体の知れない者に会った気が・・・」
まだ焦点の定まらない眼を擦って身体を起こした。
「はっ!そうだリーンを護らないと。リン!ランネ!状況はどう?」
我に返ったミハルが2人に現状を確認する。
「あ、はい。
どうやら庁舎内で発砲があった様ですね。トラックの歩兵隊が庁舎内へ突入を開始した模様です」
ランネがペリスコープを動かして庁舎の方を確認して言った。
「発砲!?何発聞こえたの?」
ミハルが血相を変えて訊く。
「えっと、十発位ですかねぇ」
ランネが小首を傾げて天井を見上げると・・・
((ニュッ))
その天井から腕が伸び出てきた。
「ひえええぇっ。
夢じゃなかったの?本当にこの車体がマジカ少尉さん・・なの?」
ミハルが腕にびっくりして訊いてみるが、腕はミハルの問いに答えずランネに指で示す。
「あ、軍曹7発ですって。車長がほら、5本と2本を交互に出してますからね」
「あわわっ、解りました。7発ですねマジカ少尉」
ミハルが怯えて了解すると、腕が頷くようにパタパタと手を振った。
「あああっ。私・・・、私はどこ・・・ここは誰?」
グルグル眼を廻したミハルに、
「ほら、しっかりしてミハル軍曹。慣れればいいもんですよ、車長って。よく気が利くし・・・」
ランネがあっけらかんとそう言うと、腕がうんうんとでも言うように手の平を振る。
「な、馴れる訳無いでしょう!まるで異世界に来たみたいでしょうがっ!」
ミハルの一言でランネもリンも固まった。
「ああっ!ミハル軍曹っ。言ってはならない事をっ」
・・・・・・・・・
「はあ、はあ、そ、それじゃあ、私が指揮を執れば宜しいんですね?」
ミハルが涙目でマジカ少尉に問う。
目の前に居る腕が一振りコクンと頷いた。
「解りました。指揮権を授かります。・・・では、もう放して頂けませんか?」
そう、ミハルは不用意な一言を言ってしまった為に、マジカの腕にグルグル巻きに拘束されたままだった。
ー うえええん。何なの、この車両は?何なのよこの展開はぁ?!
ミハルはあまりの理解不能な出来事に涙する。
ー もうっ!・・・どうなってるのよぉ馬鹿ぁっ・・・
漸くマジカから解放されたミハルが咳払いしながら命令を下した。
「ごほんっ、ではまず前方に居る半軌道車に向います。・・・戦車前へ!」