魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep4闘う意味Act266輪装甲車現る!
ミハルの前に現れた見た事も無い車体。
その車体を見上げて立ち止まっていると、声を掛かられた。
作者注)これより暫くほっこりモード?
まあ、読んでみて下さい。主人公のミハルには悪いけど・・・
大きな6輪タイヤ、前面を傾斜させた装甲板。
その上に載った砲塔。
見た目には軽戦車とも思える車体がミハルに前にあった。
ー 何?これ?6輪装甲車?
ミハルが呆然と車体を見上げて立ち止まっていると・・・
「あっれーっ。もしかして昼間の軍曹?」
車体のハッチが開いて声を掛けられる。
「えっ!?あ、あなた達はっ!」
ミハルの前に半身を出したその少女には見覚えがあった。
「ランネさん!」
そして車長用キューポラから姿をみせたのは。
「ミハル軍曹!奇遇ですねぇ」
「リンちゃん!」
ニヤニヤ笑っているリンの名を呼んだ。
<あ・・・やばい。こいつと関わったら駄目だぞ継承者よ。ろくな事にならんぞ?>
宝珠の中でミコトが呟く。
<え?あ、うん>
ミハルが宝珠に答えてから。
「ごめんリンちゃんランネさん。私、急いでいるから!」
そう挨拶抜きで走り出そうとするミハルに。
「何処へ行かれるのですか?乗っていかれませんか?走るより早いですよ?」
ランネがミハルを呼び止める。
<うっ、そ、それはそうだけど・・・どうするのミコトさん。乗せてって貰う?>
ミハルが宝珠に伺いを立てる。
<うむ・・・背に腹は返られん。ここはお言葉に甘えるしかあるまいな>
ミコトも優先をリーンの身を案じる方に決めた。
<うん。了解しました>
「ほんと?じゃあ皇王親衛隊本部まで乗せてって!」
ミハルは振り返ってランネとリンに頼む。
「ひええっ!皇王親衛隊ですか?」
ランネが驚いて聞き返してくる。
「車長!どうしましょう?」
リンが車内の車長らしき人物に訊く。
すると、リンが居るキューポラから腕が出て来てコイコイと手で招いた。
「ミハル軍曹、車長の許可が出ました!乗って下さい」
リンがミハルを車上に手招きする。
「ありがとう、お願いします!」
6輪装甲車に昇って砲塔後部へ立つミハルに。
「じゃ、ミハル軍曹。行きますので振り落とされない様に、しっかり掴まってて下さいよ?」
前方ハッチからランネがミハルに声を掛ける。
「了解っ、全速でお願いっ。急いでっ!」
ミハルは砲塔の縁を持ってランネにお願いした。
「ほう・・・全速って言いましたねぇ。車長、全速出していいですかぁ?」
リンがまたしても車内の車長らしき人物に訊くと・・・
またもや手がにゅっと出て、前方を指差した。
「お!了解っ!ランネ、許可が出たぞ、行けっ!」
リンが操縦手のランネに命令を復唱して教えた。
「ほーい。全速でね!」
ランネが舌なめずりをして車内に引っ込んだ。
((ドルルルルルッ))
突然エンジン音が響き渡り、車体の振動が激しくなる。
「さあ軍曹、行きますよ。しっかり掴んでいて下さい。
それと全速中は喋らないように。下を噛みますから・・ね」
リンがミハルに注意を与える。
「え?そうな・・・っのーーーーぉっ?!」
((ギャッギャッギャッギャッ))
6輪全輪が地を噛み、猛烈な速さで発進する。
どうやらこの車体は6輪駆動車らしい。
ミハルが返事を返す途中でいきなり車体が急発進した。
ー うっぎゃあああっ!何これっ何これっ何これっ!?
ミハルはあまりの事に涙目になる。
生まれてこの方こんな急発進の経験が無かった。
いきなり車体から投げ出されそうになる。
おまけに自分は車外に両手二本で掴まっているだけ。
ー ひいいっ何キロでてるの?ちょっと、ちょっと待って。落ちる、死ぬ、助けてっ!
両手で必死に砲塔を掴んで飛ばされない様にしがみ付く。
既に両足は宙に浮かんでいた。
((ギャギャギャッ))
6輪全部が一斉に向きを変えてコーナーを曲がる。
ミハルの身体が完全に宙へと舞う。
ー あ・・・もう駄目、死んだ。これはもう死んだ・・・
猛烈な砂埃を上げて疾走する6輪装甲車の砲塔にしがみ付きながら、
全速でと頼んだ事を後悔し、ミコトが言った関わるなと呟いた意味を理解した。
((ドッギャッギャッギィイイイィッ))
盛大なブレーキ音を響かせて車体がつんのめる様に急停車する。
((ガンッ))
「いったたたたっ?!」
ミハルはぶつけた頭を押さえて蹲る。
「ほーいっ着いたよ。後50メートルで本部隊門だからね」
ランネがお気楽に教える。
ミハルは目をグルグル廻して呟くように、
「ふええ。あ、ありがと・・・」
そう答えるのがやっとだった。
「あれあれー。魔鋼騎士様もコイツの速さに目を廻したんですねー。ニシシ!」
リンがニタニタ笑ってミハルを見る。
「ふわわ。ほんと・・・死ぬかと思った・・・」
リンに抵抗する気力もなく、素直に降参する。
後20メートル位に近付いた隊門の所に、
見慣れないトラックと半軌道車が停まっているのに気付いたランネが完全に停止させた。
((ガンッ))
またもや不意を尽かれたミハルは頭をぶつけて、
「いたたっ。今度は何よ?」
頭を押さえて砲塔越に前を見ると、
「軍曹・・・これってヤバくないっすかね?」
リンがじっと半軌道車を睨んでミハルに訊く。
「うっ、何で半軌道車が?それに何で機銃に配員しているのよ?」
前方の半軌道車は全車戦闘配置に付いている。
その機銃の銃口を親衛隊本部庁舎へと向けて・・・
ミハル達の前に見えてきたのは、親衛隊の隊門に集う部隊だった。
その部隊に戸惑いこれからの行動を思案している時、銃声が響き渡る・・・
次回 まじか?マジカ!
ああ・・・君は信じられない事実に気を失う?