魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep4闘う意味Act25胸騒ぎ
ミハルはギャガンと対峙していた。
そのピンチに呼びかける者が・・・
「その手に握られた銃は、何だと訊いているんだ!」
ミハルの前に立つその人は、昼間学校を訪れた時に再会した恩師だった。
「お前に教える必要などない。私は銃を持つこの娘から身を護っているだけだ!」
見つかった事に焦るギャガンが言い訳をするが、
「ならばその銃を渡しなさいミハル。私にだ」
恩師が手を差し出し二人に近づく。
「先生・・・」
ミハルは彼がギャガンに対して快く思っていない事を知っている。
「どうした検査官。
ミハルの銃を私に渡させればいいではないか。それとも私を信用していないのか?」
恩師は強い口調で問い詰める。
「くっくそっ、邪魔をしおって。こうなれば貴様を殺してでもこの小娘を・・・」
ギャガンは遂に開き直って自分の銃を教員に突き付けようとした。
<今だミハルっ!術が緩んだぞ。こやつを倒せっ!>
ミコトの声が脳裏に響く。
<体が動くっ!>
ミハルが瞬時に悟り、魔法を呼び覚ますと。
身体を捻りながらギャガンを蹴り上げた。
((ドガッ))
確かな手応えを感じると共に、右手でポケットのコルトを引き抜きギャガンに向ける。
「ぐはっ、キッ貴様!」
「動かないで!左手の銃をゆっくり床に置きなさい!」
ミハルが観念する様に命じる。
だが、ギャガンには邪眼がある。
ー 検査官の目を見ては駄目。また術に嵌ってしまうから・・・左手だけに集中しないと
顔を合わせない様に注意しながらコルトを構える。
「先生!ギャガン検査官の目を見ては駄目です。彼は術を使って身体を操るんですっ!」
ミハルは恩師に忠告してから、
「先生、衛兵隊に連絡を。犯人を捕えたと知らせてください!」
ギャガンの左手から目を逸らさずミハルが応援を要請した。
「よし、判った。直ぐに連絡を入れてくる。それまでギャガンを押えておくんだぞ!」
恩師はそう答えると教官室に走り出した。
「ギャガン検査官、間も無く親衛隊から応援が来るわ。諦める事ね」
ミハルがそう告げると突然ギャガンが笑った。
「はっはっはっ。私がむざむざと捕えられるとでも思っているのか?
お前達の仲間が此処へ来たとしても私は連行されはしない。無駄な努力だ!」
憎まれ口を利くギャガンに、
「あなたこそ、私達の仲間を侮っている。さあ、両手を挙げなさい!」
コルトを突きつけられたギャガンは銃から手を放すと、薄く笑いながらも両手を挙げた。
暫く待つと校門に大型車が止まり、親衛隊員がミハルを迎えに来てくれた。
「ミハル、親衛隊の方が来てくれたぞ。もう安心だからな!」
恩師が親衛隊員2人を連れてくる。
「シマダ軍曹、お手柄でしたね。後は我々が本部まで連行します!」
短機関銃を構えた衛兵が、ギャガンの身体検査しながらミハルに言った。
「はい、御苦労様ですが宜しくお願いします。
それからこの男は目から術を放ちます。目隠しをした方が良いかと・・・」
ミハルがギャガンの邪眼を封じる様に教える。
ミハルの言葉に従って衛兵がアイマスクを被せた。
「では、これより本部へ連行します。シマダ軍曹はご一緒されますか?」
ミハルに同乗して本部へ戻るか訊いてきた。
「いいえ。今少し調べたい事があるので」
もう少しマモルの行方について調べたかったので断わった。
そしてアイマスクをされて連行されるギャガンにもう一度だけ訊く。
「一つだけ教えて。
マモルはこの国にもう居ないと言ったわよね。
では、何処の国へ連れて行かれたの?周辺国?それとも・・・敵国?」
マモルの行方。
それは両親も一緒に居るはずの国。
そして、ミハル自身が何かの部品と成った場合には必要とされず殺されてしまう国。
「解っている筈だ。さっき話した物事を整理すればな」
明確な答えは言わないが、暗にその国とは・・・
「ロッソア・・・ね?ロッソア帝国に連れて行ったのね?」
ミハルが口に出した国名を聞いたギャガンが顔を歪めて笑った。
「ふっふっふっ。諦める事だなシマダ・ミハル。
もうお前の家族には逢えはしない。お前がこの国で闘う間は・・・な。はーっはっはっはっ!」
高らかに笑うギャガンは衛兵に連れられて大型車に乗り込んだ。
ー そんな・・・私は・・・私はどうすればいいの?
どうすればマモルやお母さんお父さんに逢う事が出来るの?
ミハルは絶望感に瞳を澱ませる。
呆然とギャガンが乗り込んだ車を眺めて考え込んでいた時。
「ミハルっ危ない伏せろっ!」
横から恩師がミハルに覆い被さった。
((グワンッ))
爆音と爆風が二人を襲った。
「あぐっ!」
背中を地面で強打して声を出したミハルが助けてくれた恩師に慌てて、
「先生!大丈夫ですかっ!?」
身体の安全を確かめようと訊く。
「ああ、間一髪の所だったな。ミハルは大丈夫なのか?」
「はい。ありがとうございます先生」
2人は目の前で燃える大型車を見る。
3人の衛兵と共にギャガンも燃え盛る炎の中で既に死んでいた。
「くそっ、口封じか。
これで尋問のしようが無くなってしまったな。ミハル・・・これからどうするんだ?」
恩師がミハルに気遣って尋ねる。
「私、本部へ戻ります。何か胸騒ぎがして来たんです。
大切な人に危険が迫っている気がして。
先生!警察隊に連絡を入れて外へ出ないで下さい!」
恩師にお辞儀をして駆け出すミハルの背中に向かって、
「ミハルも無茶はするなよ。必ず戻ってくるんだこの皇都に!」
教え子に対する惜別に、手を振って叫んだ。
ミハルは学校を後にして走る。
リーンが待っている筈の親衛隊庁舎へ。
ー この胸騒ぎは一体何だろう。もしやリーンの身に危険が迫っているの?
宝珠が告げる。
<そうだミハル。リインの身に危険が迫っている!急げっ!>
宝珠の中でミコトが叫ぶ。
「解ったっ!」
ミハルがその叫びに答えて走りを早める。
((キキキーッ))
ミハルが角から飛び出すのとブレーキ音が重なった。
「あっぶねーなー。急に飛び出しちゃあいけないと学校で教わらなかったのかい?」
ミハルがびっくりして急停止した車体を見上げる。
そこには見たことも無い車両が停まっていた・・・
リーンの危急を告げる胸騒ぎがミハルを突き動かす。
走り出したミハルの前に一台の車両が止まった。
遂に現れたその車両。
それは魔法の戦車。
魔鋼騎を凌駕したその車両にミハルは・・・
次回6輪装甲車現る!
君はその車体に戸惑う・・のか?