魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep4闘う意味Act21一本の電話・・・
本部へと辿り着いたリーンとミハルにラダル大尉が教える。
一本の電話があった事を・・・
隊内へと戻ったリーンとミハルを休ませて、
バレン中尉は父の副官であるラダル大尉に報告を入れた。
「ですから大尉殿。
ユーリ姫の身にも危険が迫っている恐れがあるのです。至急応援に向かわせてください」
ファブリット中将の副官を勤めるラダル大尉は即座に命じる。
「よし、解った。1個小隊を率いて迎えに行こう。
君はリーン姫を護って動くな。いいな!これは命令だ。
副官の私が迎えに行く方が話が纏り易い。解ったな!」
ラダル大尉はバレン中尉にそう命じてから。
「私はリーン中尉とミハル軍曹に話しがある。
話が終るまでに出動小隊を指揮し、用意を整えるように」
バレン中尉は敬礼し、命令に承服した。
「はっ!それでは指揮小隊の出動準備に掛かります」
バレン中尉は宿直室から走り出していった。
「くそっ、親姉派の奴等め、とうとう実力行使に出たのか。
それならば早く伝えねばならんなミハル軍曹に・・・」
ラダル大尉は宿直室を出てリーンとミハルの居るフロアへ向った。
片手に握った通信欄を持って。
「ユーリ姉様とファブリットは大丈夫かな?」
自分が狙われた事で反姉派であるユーリの身を案じたリーンがポツリと呟く。
そんなリーンの気を紛らわせようとミハルは珈琲を淹れたカップを差し出しながら、
「大丈夫だよリーン。
もし本当にユーリ大尉の身に危険が迫っているならリーンの宝石が何か知らせて来る筈でしょ?」
ミハルが差し出したカップを受け取ると。
「うん。そうね・・・そうだよね」
胸元に納めてあるネックレスを押えて頷いた。
「此処に居られましたか、マーガネット姫」
ラダル大尉がフロアに入り、声を掛けてきた。
ミハルは大尉に姿勢を正して敬礼する。
「君がシマダ・ミハル君だな?」
リーンの横に立つミハルの名を呼んだ。
大尉に階級抜きにフルネームで呼ばれたミハルが敬礼を解く。
「は、はい、初めまして。私は陸戦騎独立第97・・・」
自己紹介するミハルを制してラダル大尉が、
「シマダ君。今日学校へ行ったみたいだな。ある生徒から連絡があった、これだ・・・」
ラダル大尉が通信欄を差し出しミハルに渡して。
「匿名の電話だったが君に話しがあると言っている。君の弟、マモル君についてらしいのだが・・・」
ラダル大尉に渡されたメモを読むと。
<<今日の夜、9時に学校の裏側にある旧校舎に来て欲しい。
そこであなたの弟がどうなったのかを教える>>
ー ・・・そうか、きっとあの子なんだ
ミハルは咄嗟に時計を見る。
「約束の時間までには着けそう・・・」
時計の針は8時を少し廻った所だった。
「行くのかシマダ君?」
ラダル大尉に訊かれたミハルは頷くと。
「はい。少しでもマモルの事が解るのなら・・・どんな事でも知っておきたいのです」
そう答えてからリーンに振り返って。
「リーン、私ちょっと出かけなければいけなくなったから。
ユーリ大尉が来られるのを待っててくれない?」
出かける為にコートを羽織ながら伝える。
「ミハル、どうしても行くんだよね。
だったらこれを持っていって。用心に越した事無いから」
リーンがミハルにホルスターごとコルトを渡す。
「えっ?どうして?」
ミハルはホルスターを受け取りながらもリーンに訊く。
「どうしても。何か胸騒ぎがするから。ミハルのコルトは残弾があるの?」
リーンは先程の銃撃戦で、ミハルのコルトが弾切れに近い事を知って自分の銃を渡したのだ。
「う、うん。リーンがそう言うなら・・・一応持っていくね」
ミハルはホルスターをズボンの後ろポケットに入れた。
「それじゃあこのコルトは置いていくね。後2発しかないから」
自分が使っていた銃を上着のポケットから出して机の上に置く。
「時間が無いからもう行くね。
直接幼年学校へ向うから、何かあったら学校の方に連絡を入れてくれないかな」
足早にフロアから出て行くミハルにリーンが更に注意を促して来る。
「ミハルっ、くれぐれも警戒を怠らないで。危険な事に巻き込まれないでね!」
心から心配して教えて来た。
そんなリーンに手を振って応えてミハルは学校へと向った。
夜の帳がおり、戦時下というのも手伝って辺りの民家から洩れる灯かりも少なかった。
その中をコートで防寒したミハルが小走りで学校へと向う。
その後姿を追う人影がある事に、ミハルは気付いていなかった。
後ろから忍び寄る影に気付かないミハルは学校へと急ぐ。
そこで待ち受けていた者とは?
次回 邪の魔手
君は少年の心の変化を問う