表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
130/632

魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep4闘う意味Act20カーチェイス

宮殿から本部へ戻る車内で、ミハルが気付く。

後ろから追ってくる一台の車両がある事に・・・

「バレン中尉。ユーリ姉様は釈放されたのですか?」


助手席に座っているバレン中尉に後席からリーンが訊く。


「いいえ、まだです。

 父が今、迎えに行っております。間も無くこちらへ向って来る手筈になっております」


バレン中尉の父ファブリット中将がユーリ大尉の身柄を確保する為に、

中央軍司令部へと向っている事を教えた。


「そう。ファブリットが迎えに行ってくれているのなら安心ね」


リーンがほっとした顔をして座り直した。

宮殿から僅か2キロ程離れた親衛隊本部までの道で車内の4人が話をしていた。


リーンが一安心した様な顔をした時、助手席のバレンの横に付いていたバックミラーに影が写った。


ー  何者かが後を付けて来ている?


気付いたミハルがガラス越しに後ろを振り返ると、一台の影が見えた。


「バレン中尉。私達の後から本部へ戻る車が出ましたか?

 部下の人達に直ぐについて来る様に命じられましたか?」


後ろの車を睨みながらミハルが訊いた。


「何?そんな命令は出していないぞ」


バレンがミラーを確認し、つけて来る一両の車に注意を向けた。


「おいっ、飛ばせ。急いで本部へ戻るんだ!」


バレン中尉が危険を感じて本部へ逃げ込む様に運転手へ命じ、


「撃ってくるかもしれません。頭を低くして下さい」


リーンに避ける様に言って腰の拳銃へ手を伸ばした。


「撃って来た場合は応戦します」


ミハルもポケットからコルトを出して尚も近付く車両を睨んだ。

スピードを上げた車よりも早い後ろの車から、横乗りになって身体を車外へ出した黒服の男の手には。


「撃って来ますっ!リーン伏せて。運転手さんっ、私の言う通りに車体を動かして下さい」


ミハルはそのマシンガンを持った男に視線を向けたまま叫んだ。


「左へ!左へずらしてっ!」


ミハルの叫びに運転手がハンドルを廻す。


((ガガガガッ))


車体の脇を銃弾が弾ける。

そのまま走っていたら直撃されていただろう処だった。


ミハルは左側の窓から半身を出して銃を構える。

バレン中尉も右側の助手席から応戦する為半身を出す。

リーンも応戦しようと身体を起すと。


「リーンは隠れていて!狙われてしまうからっ!」


ミハルはあくまでリーンを護る為にそう言った。


「でもっ、ミハル!私も闘うわっ!」


「駄目です姫。我々はあなたを護るのが責務なのです。

 姫を護り抜くのが課せられた勤めなのですから!」


バレン中尉もミハルと同様に隠れている様に諭した。


「うっうん。解った・・・」


リーンは2人にそう言われて仕方なく後席でしゃがみ込んだ。


((ドガガガッ))


((バンッ バンッ))


次の連射が車体を襲い、2発の直撃を喰らった。


((バンッ バンッ バンッ))


バレン中尉の拳銃が火を噴き、後ろを追う車のフロントガラスを撃ち破った。


「よしっ、これで・・・」


バレンが相手を怯ませたと思ったが。


「バレン中尉!頭を下げてっ!」


ミハルに叫ばれて咄嗟に頭を引っ込めたバレンの直ぐ傍を弾が通り抜ける。


((ビュンッ ビュッ ビュッ))


数発の銃弾が車体右側を襲う。


((ガンッ ガンッ バリンッ))


とうとう数発の弾が後面ガラスを破り車内を通り抜けてフロントガラスまで破られてしまった。


「うっくっ!リーンっ大丈夫?」


ガラスの破片を払い除けてミハルが叫ぶ。


「私は大丈夫っ、それより後どの位で隊門にたどり着けるの?」


リーンがバレン中尉と運転手に訊く。


「あと2・3分ですっ!まもなく隊門が見えます。あの角を曲がれば!」


バレンが前方の交差点を指差し言うと、戦車戦の感が働いたミハルが叫ぶ。


「駄目ですっ、直進して下さい。

 カーブを切ったらスピードが落ちます。そして側面を晒す事になってしまいます。

 相手はそれを狙って集中射撃を加えて来ますよ!」


魔鋼騎士の言葉に納得したのかバレン中尉が運転手に命じる。


「おいっ、訊いたとおりだ。直進しろ、曲がるな。

 銃撃音で隊の者が気付けば応援を寄こしてくれるかも知れないからな。それまでの辛抱だ!」


バレンはそう言うと、拳銃の弾倉を変えて再び射撃体勢に入る。


「もうあの角が隊門への入り口だ。何でもいいから撃つんだ!」


そう叫んだバレン中尉がめくらめっぽうに射撃する。

隊内に銃声を聞かせる為に。


((バンッ バンッ バンッ))


バレンと反対にミハルは割られた後ろガラス越しに狙いを定める。


ー  足を止めるには運転手を倒すか、タイヤを狙うしかない。

   このコルトで命中させる事が出来るか解らないけど・・・


ミハルは左側運転手席を見る。

その運転手は片手に拳銃を握り、片手でハンドルを操っている。


ー  ハンドルを握っている左手を撃ち抜くなんて出来ない。

   だってそんな事をしたらあの人を殺してしまう。

   だったら狙うはタイヤ、右でも左でもいいから撃ち抜けばきっと運転はままならなくなる筈!


ミハルは後席の背もたれに手を据えて、狙いを絞る。


「角を過ぎるぞ!」


バレンの声が聞こえる。

後ろの車両があきらかに焦りを見せてスピードを上げた。

こちらが角を曲がると踏んでいたのだろう。

それまで控えていた銃撃が再び始まった。


((ガンッ ガガンッ))


後部のいたる所に銃弾が突き刺さる。

この車両が軍用車でなければ、とうの昔にガソリンタンクを撃ち抜かれて発火していた事だろう。


ー  この銃がマチハの砲だったらなあ。外しはしないのに・・・


右手の指に触れているトリガーを引き絞る時、ミハルは戦車砲なら必ず命中させてみせるのにと思った。


((バシッ))


コルトが火を噴いた。

しかし、弾はタイヤに命中せず地面に火花を散らしただけだった。


ー  ううっ。これじゃあ、何時まで経っても鬼ごっこを続けなきゃならないのかな?


狙い定めて放った弾があっさり外れてミハルはヘコんだ。


<困ってるみたいだな、ミハル。手伝おうか?>


右手の宝珠からまたもや出たがりミコトがしゃしゃり出て来た。


<うっ、ミコトさん。何を手伝ってくれるっていうの?>


ミハルは心の中で冷や汗を垂らして伝説の魔女に訊く。


<そうさなあ。例えばお前の銃の眼になってやろうか>

<銃の眼?どう言う事ですか?>


ミハルは意味が解らず聞き返す。


<まあ、銃眼を見てみれば解る>


ミコトに言われた通り、半信半疑にコルトの薄い銃眼に目を当てると・・・


「!こっこれって!」


ミハルが驚いたのは無理も無い。

そこには半透明の照準鏡が現れたのだ。


「なっ成る程っ!これなら狙えるかもっ!」


まるで砲を照準するかの様に、手馴れた感覚で的を絞る。

ミハルが銃を右手だけで持って、

まるで砲を操作しているみたいに銃から目を離しているのに気付いたリーンが。


ー  ははあ、どこかの誰かさんが、またミハルに茶々を入れているんだな。伝説の魔女さんが・・・


ふっと笑顔になったリーンがこう叫んだ。


「ミハルっ!後方から近付く車両の足を止めるわよ。

 目標敵車両左タイヤ。2シュトリッヒ手前を狙え。撃てっ!」


リーンは戦車戦同様の命令をミハルに与えた。


「はいっ!撃ちますっ!」


リーンには見えない照準器を睨んでミハルは右手のトリガーを引き絞った。


((バンッ))


ミハルの放った弾は狙い通り、運転手側前輪を撃ち抜いた。


((ギャギャギャッ))


タイヤをバーストさせられた後方の車両がスピードに負けてスピンした。



「やったな!おい」


引き離した事で安心したのかバレン中尉がミハルを褒めてくれる。


「ほえ?あれっ私・・・私が当てたんですよね?」


ミハルが我に還ってバレンとリーンに訊く。


「そうよ、ミハルが命中させたの。ナイス射撃だったわ!」


リーンが身体を伸ばして親指を立てる。


「えっ。あ、はい!」


まるで他人がした事の様に感じて呆けて答えるミハル。


「それじゃあ、隊内へは横門から入りましょう。それで善いわよねバレン中尉」


正門から入ろうとするとあの車両に戻ってしまう事になる訳なので、別の門から親衛隊本部へ帰る様に勧める。


「了解です、姫。おいっ西門から入れ」


運転手に直ぐ横に見えてきた小門へ着けるように命じたバレン中尉が、

ミハルの手に握られたままの銃を観て。


「それにしてもさすがだなミハル軍曹。

 砲でも銃でも射撃はぴか一なんだな。おみそれしたよ」


ミハルの腕前に感服した。


「い、いえぇ。そんなぁ~(汗)」


半分は自分の腕前じゃない事が解っているミハルは照れて口を濁すのだった。


リーンとミハルが本部へ戻るとそこにはまだユーリの姿は見えなかった。

ファブリット中将の副官ラダル大尉にミハルが知らされる、学生からの連絡があったと。


次回 一本の電話

君は少しでも知りたがる、失われた肉親の秘密を・・・

ここで皆さんに感謝を込めてミハルのサービスカットを!

<夏のミハル>

挿絵(By みてみん)

どうぞ!


改稿に伴いまして消そうか迷いましたが・・・恥を忍んでそのままにしておきます・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ