魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep4闘う意味Act19刺客 後編
控え室に封じ込められたリーンとミハル。
狙撃手が狙いをつける中、なんとか脱出を計る2人にカスターが助けに現れた。
手をドアに添えて・・・
「リーン、ドアを動かすから注意してね」
ミハルが女官を撃った相手がまだ狙っているのかを調べる為にドアを内側から押し、手に持ったドレスを放り投げた。
((バンッ))
ドレスが地に落ちる瞬間、微かな銃声が聞こえる。
「やっぱりまだ狙っていたんだ」
銃声を聞いたリーンがドアの陰から外を覗く。
「でもリーン。銃声がした割には着弾しなかったよ。何処へ向けて発砲したのかな?」
ミハルは落ちたドレスを見て不思議に言った。
「そ、そう言えばそうね。女官を撃った腕前があるにしてはおかしいわね。どうするミハル?」
軍服に着替え終わっているミハルに訊ねたリーンも、
自分のポケットから出した小型拳銃を右手に持って構える。
ー このまま此処に釘付けにされていても誰かが銃声に気付いてくれる筈。
無理に出て撃たれるよりはもう暫く様子を見た方がいいかも・・・
ミハルはリーンに首を振って外に出る危険を教えた。
「もう少し待ちましょう。今の銃声を聞きつけて誰かが来てくれる筈ですから」
そう言うとリーンにあまり前へ出るなと手で合図する。
「そうね。焦って出て撃たれてもつまらないし。もう少し待つしかないわね」
ドアの傍から退がってミハルに同意したリーンの耳に、足早に近付いてくる靴音が聞こえた。
「マーガネット姫!一体これは何事ですっ!」
その声はバレン中尉の声だった。
「何者かが私達を狙ってきたのですバレン中尉」
ドアから首を出してミハルが中尉を促す。
「何者かがですって!?誰なのです?」
バレン中尉が数名の親衛隊員と共にドアまで来て中のリーンに訊いた。
「解りません。私達を狙ったその女官が部屋から出た途端に撃たれました」
リーンがドアの外で倒れている女官を見て訳を話す。
「そうですか・・・口封じに殺したんでしょう。それよりお怪我はございませんか?」
バレンが軍服に着替えているリーンの身を案じた。
「私とミハルに怪我はありません。それより犯人を捜してください。
女官を撃った角度から見て、あのベランダ辺りが狙撃犯の潜める場所だと思うから」
リーンが指を差して犯人が潜んでいで居たであろう場所を教える。
「了解です。
おいっ向こうへ回れっ、何としても犯人を捕えろっ。抵抗すれば射殺しても構わんっ!」
バレン中尉は親衛隊員に命令し、
「姫、今の内にお車へ。さあ、お早く!」
リーンの身を案じ、早急に宮殿から退出する様に勧める。
「解りましたバレン中尉。行きましょう」
リーンはバレン中尉の後についてミハルと共に歩き出す。
そして狙撃手が居ると思われるベランダに目を向けた。
そこには・・・
ー えっ!あれはカスター卿。どうしてカスターがあそこに?!
リーンが立ち止まってベランダに佇みこちらを見詰めるカスターを見る。
「どうかなされましたか姫?」
バレン中尉がリーンが振り返って立ち止まったのに気付き訊ねる。
「い、いえ。何もありません」
そうバレン中尉に答えてリーンは再び歩き出した。
ー リーン。確かにあの影はカスターさんだよね。
どうしてあそこにカスターさんが居るんだろう・・・そう思っているんだよね?
ミハルはベランダの影をよく見て思った。
ー きっと、さっきの銃声はカスターさんが撃ったんだ。あの手に握った銃で・・・
ミハルは気付いた。
カスターの手に握られている拳銃に。
「ありがとうカスターさん。あなたが犯人からリーンを護ろうとしてくれたんですよね?」
ミハルはベランダの影に向ってお辞儀してからリーン達の後を追った。
「ふふっ、あの娘は気付いたのか。
何と感の善い子なんだ。確かミハル・・・とか言ったな。また会える日を楽しみにしているよ」
カスターは走り去るミハルを目で追って呟いた。
その時荒々しくドアを蹴破ってバレン中尉の部下達が室内に乱入して来た。
「動くな!銃を捨てて手を上げろっ!」
親衛隊員が小銃をカスターに突きつけて叫ぶ。
「ああ。遅かったじゃないか君達。犯人は此処でくたばっているよ」
カスターは拳銃を放り投げて後ろで倒れている狙撃犯に首を振って教えた。
親衛隊員達は、カスターの後ろにサイレンサー付きの自動小銃を持って死んでいる男に気付いた。
カスターに無事助けられた二人はバレン中尉が用意した車に乗り親衛隊本部へと戻ろうとした。
本部へと走る後ろからヘッドライトを消した車がつけてきていた・・・・。
次回 カーチェイス
君は怯まずに闘う。勝手の効かない車内で・・・