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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep4闘う意味Act16姉妹対決

宮殿に昇ったリーンはユーリの釈放を求めて二人の姉と対峙した。

第1皇女エり-ザと第2皇女リマンダの姉妹は、

美しい2人の娘を見て苛立った顔を向け睨み続ける。


紅いカーペットを歩むリーンとミハルが、ゆっくりと2人の皇女の前へと進む。


「おお、マーガネット姫だ。お美しくなられたものだ」

「以前より増してお美しくなられた。凛々しくなられた」


武官や政府官僚が囁く中、リーンとミハルは歩む。


やがて、リーンは姉達皇女の前まで進むと、スカートを摘んで軽く会釈する。


「お姉様方、お久しゅうございます。マーガネットめにございます」


そう挨拶の言葉を述べて頭を下げる。


「今日はまた何の用があって参ったというのかリーン?」


第1皇女エリーザがリーンに下問する。


「はい、どなたかの指図でユーリ姉姫が拘束されておられます。ユーリ姉姫の釈放を求めにまいりました」


リーンが下問に答えて顔を上げる。



ミハルはずっと頭を下げたまま2人の会話を聞く。

ー  うわあ。リーンもこの皇女さんも言葉は普通だけど声色は喧嘩ごしだ。恐いなあ・・・


リーンに危害を加えようとする者が居ないか辺りの気配を探りながらミハルは思った。



「ユーリの釈放ですって。それはまたどうしてですの。

 ユーリは軍事作戦を妨害したと聞いております。

 軍の事は軍に任せておりますので私達には知らぬ事です」


「そうです。軍に属しているなら軍に釈放を求めたら宜しいでしょうに。

 それをわざわざ私共に求めると言うのはお門違いじゃありませんこと?」


2人の皇女は、リーンに嘲る様に告げる。


「そうですか姉上様。ならばこの事は皇父様も御存知なのですね。

 姉上様がお伝え申し上げておられるのですね?」


リーンが顔も上げず2人の姉に言う。


「そ、それは・・・妹の不始末を父上様にお伝えする訳にはまいりません。

 お伝えしていないに決まっているではないですか!」


慌てる様に言い繕うエリーザに。


「では、私から申し上げましょう。

 ユーリ姉姫は私からの意見具申を上奏しようとして拘束されたと」


リーンが顔を上げ2人の姉を睨む。


明らかに動揺する2人の姉を細い目で見上げながら。


「宜しいですね、姉上様」


そう宣言するリーンに、動揺したエリーザが。


「お待ちなさい。何を証拠に・・・」


慌てて引き止める二人の姉に決然とリーンが言い放つ。


「証拠?いいでしょう。ファブリット中将とバレン中尉をこれに」


リーンは振り返り下座に控えていた二人を呼びつける。


「皇王親衛隊のファブリット中将とバレン中尉。

 この2人が証人です。

 ユーリ姉姫がどうして拘束されたかを目で見、耳で聞いておりました。

 それに私が送った電文も持参しております」


どうだと言わんばかりにリーンは二人を紹介する。


「くっ!どうなっているの、ヘスラー参謀長!」


慌てふためく2人の皇女が、自分の懐刀を呼ぶ。


「はっはっはっ、これはマーガネット一派の勝ちですな。我々の手落ちです」


ヘスラーは眼鏡の縁を直して笑った。


「な、何を言っているのです、参謀長。私は知りませんよ。知らぬ事です!」


自分の責任を逃れようとする二人の姉の浅ましさを観て。


「見苦しい事をなさらないで下さい、姉上。

 間も無く皇王様もおみえになられます。

 ここではっきりとお命じくだされば良いのです。

 ユーリ姉姫を釈放せよと。そうすれば皇父様にこの件は上奏しませんから」


リーンが2人の姉にユーリの解放を迫る。


「知りません。ユーリの事は最初に言った様に軍に任せております。

 釈放を命じるのはヘスラー参謀長に命じさせる事です!」


2人の姉はリーンへの敗北を認めず、責任をヘスラー参謀長に転嫁する。


「そうですか、ならばヘスラー参謀長。ユーリ姉姫様の釈放を命じなさい、いいですね」


リーンの瞳が鋭くヘスラーを睨みつける。


「それはマーガネット姫の命でしょうか。

 それとも辺境の一小隊長が命じたのでしょうか?どちらです」


眼鏡の奥からリーンを見る瞳には、黒い闇が支配していた。


「当然フェアリア皇国第4皇女リーン・フェアリアル・マーガネットとしてです、参謀長!」


リーンが威厳を正して命じた。


かしこまりました」


唯一言・・・そう伝えるとヘスラーはその場から下がる。


「マーガネットこれでいいでしょう。

 これで引き下がりなさい。間も無く皇父様がお越しになられますから」


姉姫達がリーンに下がる様に告げた時だった。


「下がる必要などない。久しぶりだな、リーンよ」


上段の幕からフェアリアル皇王の声が掛かる。


皇王おとう様っ!」


2人の姉姫が幕を振り返って驚きの声をあげる。


リーンとミハルは幕に頭を下げ、再び畏まった。


「リーン良く参った。健やかであったか?」


皇王の慈父たる声がリーンに届く。


「はい、皇父様」


返事は返すが頭を下げたままのリーンに皇王が。


「いまだに闘いに明け暮れておるのか。この皇父の願いを訊かずに」


その言葉が述べられると幕が下から少しだけ上がり、皇王の足元が見えた。


「はい、皇父様」


再度リーンが一言肯定する。


「古来の力を宿すそなたこそ、このフェアリアを救う王女なるぞ。

 それを何故判らぬのだ。何故に拒むというのか?」


皇王の声が少しだけ大きくなった。


「・・・皇父様、以前にも申し上げました通り、私は世継ぎではございません。

 まして正妻の娘でもありません。どうか世継ぎは姉上様へお譲り願います」


リーンは頭を垂れたまま返事をした。


「どうしても認めぬか、リーンよ?」


「私が世継ぎを認めれば、この国の中で争いが起きましょう。

 それは皇父様とてご承知の事と思っております。それでもまだ私を世継ぎと申されるのですか?」


リーンは顔を上げ幕の中を見上げて言った。


「承知の事だと言っておる。

 譬えこの国が内乱となっても構わぬ。それがこの国を救う為ならばな。

 それを乗り越えた暁には必ずこのフェアリアは平和を取り戻せるだろう。救国の聖王女リーンよ」


幕の中から皇王がリーンに皇位継承を求めてくる。

だが、リーンは首を振って拒んだ。


「いくら皇父様の命だとて、私に皇位は勤まりません。

 それでは長子継承権の儀が失われてしまいます。

 どうかご再考を・・・私は継承権の放棄を願い奉りとう思います」


リーンはとうとう皇王に継承権の放棄を願った。

しかし、皇王はリーンの願いを認めなかった。


「それは許さぬぞリーン。

 そなたの中に秘められた力をこの国の為に使うのだ。

 それが聖王女として定められたそなたの運命。人の世を救うそなたの運命なのだ!」


一方的にリーンの願いは否定されてしまう。


「どうして?どうしてお判りくださらないのです。皇父様!」


リーンが唇を噛んで俯いて呟く。



「ヘスラー参謀長よ、先程の話の通り、第3皇女ユーリの釈放を命じる。よいな」


リーンとの話を打ち切り、皇王は軍に捕われているユーリ大尉の即時解放を命じた。


「はっ、ご命令とあれば・・・」


遜ったヘスラーが承服する。


「それでよい。後は内閣政府と政策を話すがよい」


リーンの前で幕が下がり、皇王が退出して行く靴音がした。


「皇父様の命ですヘスラー参謀長。ユーリの釈放を命じます」


エリーザがそう言うと。


「私達も疲れたわ。もう下ります。後はそなた達で善きに計らってくださいな」


後事を放棄して広間から出て行ってしまった。


「あ、姉上様。それでは政策の決定が?!」


リーンが出て行く2人の姉を呼び止めたが、リーンを見る事もなく足早に行ってしまった。


「こんな事では・・・この国は・・・

 この国の民に見離されてしまう。皇王制はいづれ崩れてしまう・・・」


リーンは悲しい瞳を二人の姉達に向けて呟いた。


「さて、どうしますかリーン姫。あなたは先程継承権の放棄を上奏されてましたが?」


ヘスラー参謀長が眼鏡をついっとあげてリーンに訊いてくる。


「私は王になる器ではありません。

 ですが、この国を護る為には力を尽くしていく所存です。私の力なんて大した事などありませんが」


ヘスラーに向ってそう言い放つと顔をあげ。


「では、ユーリ姉姫を釈放してくださいヘスラー参謀長!」


軍参謀長に命じて広間より出て行くリーン。


その皇女に対し、呼び止める声が・・・


この国の未来を想って暗い気分になったリーンが、広間を後にしようとした時。

リーンの元に近付く輩が・・・

次回 ヤサ男?カスター卿

君は見掛けで人を判断していませんか?

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