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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep4闘う意味Act13赤毛のリン

髪飾りを手にしたミハルに突然店に入って来た2人の少女が青く輝くその髪飾りを求めてくる。

その少女の髪の色は赤く美しく靡いていた。

思い出のある髪飾りに手を指し伸ばした時。


((カララン))


ドアが開ききる前に・・・


「おっばさーん!やっぱりあの髪飾りを頂戴!」


元気な声がミハルの手を停める。


「お邪魔しますぅ」


ドアを開けて、賑やかに女の子達が店に入って来た。


「おや、昨日の子達かい。いくら言ってもそれはまけないよ」


カウンター越しにラウンおばさんが言って、ミハルに目を向ける。


「ほら、他のお客さんも見ているんだから」


ミハルが見ていた髪飾りの事を言っているらしかった。


「あーっ!その髪飾りはあたしが・・・え!?あわわっ?!」


2人の女の子はミハルと同じ軍服を着ていた。

その服とは戦車兵のユニフォーム。

ただし、一般の戦車兵服とは違う枯草色をした特殊部隊らしい兵服の。


「しっ、失礼しました。軍曹!」


陸戦騎兵員服を着た2人の少女がミハルの下士官服を見て姿勢を正した。


「ここは娑婆よ。そんなに畏まらないで・・・」


ミハルが優しくそう言ったのだが。


「あっ!騎士章!うわあ、初めて見た・・・あっ、いえ、その・・・」


赤毛の髪を短く切った少女がミハルの騎士章に気付くと、更に緊張する。


「ぐっ軍曹殿は魔鋼騎士なのですね!しかも騎士章授与者の・・・すっごーいっ!」


長い金髪を括った少女がミハルを見て瞳を輝かせている。


「別に・・・凄くないよ私なんて」


2人があまりにマジマジと自分を見詰めるので気が引けてしまうミハルが、

話題を変えようとして髪飾りを指差し手に取ると。


「あなたが欲しいのはこの青い石が付いた髪飾り?」


手に触れた髪飾りがミハルの魔砲力で光を放った。


ー  え?これって魔法石・・・私の力に反応した?


ミハルの手が触れた瞬間、碧き光が宝石から放たれた事に驚く。


「この石は・・・魔法石。

 魔力を持つ者が力を求める時に必要な、魔法を秘めた石・・・」


ミハルが呟く。


「軍曹。

 今、手に触れた時に一瞬光を放ちましたよね。やっぱりその髪飾りは魔導石なんですね?」


赤毛の少女が瞳を輝かせてミハルに訊く。


「軍曹!それをあたし達に譲って下さい。お願いします!」


髪を結った金髪の少女がミハルが買うと思ったのか自分達に譲って欲しいとお願いしてきた。


ー  この娘達はこの石を知っているのかな。

   魔法石を持つ事の意味を・・・それがどんな不幸を齎すかと言う事を・・・


「あなた達。この髪飾りを手にしてどうする気なの。

 今、あなたが言った通り、この石には不思議な力がある。

 これを手にした魔法使いは直ぐに魔鋼騎に乗せられて闘いの中へ放り込まれるのよ。

 それを解って欲しいと言うの?」


ミハルが2人に魔鋼騎乗りの宿命を告げる。

自分が辿った数々の悲劇を思い起こして。


「軍曹。軍曹は何を見てきたのです、その瞳で。そんな悲しい瞳で・・・」


赤毛の少女が訊く。


「それでも・・・私達には魔法石が必要なんです。生き残る為には・・・」


金髪の少女がミハルに言った・・・真っ直ぐな瞳で。


「必要?何故なの。生き残る為って・・・」


赤毛の少女が黙ってその髪飾りを手にする。


((ポワァッ))


ー  えっ!?この娘も!?


髪飾りが碧き光を放つ。


「あなたも・・・魔法力が?」


ミハルの見ている前で赤毛の少女の瞳が青く染まり、髪が青くなっていく。


「そう・・・あたしも魔法使い。

 この世界へと飛ばされてきた魔法使い。

 今日やっと気付いたのです、この石に気付かされたから。

 ・・・だから軍曹、私にこの髪飾りを譲って下さい!」


碧き瞳になった少女がミハルに願う。


ー  凄い魔法力。私でも一瞬しか輝かなかったのに。

   それに今、この娘が言った、この世界へ飛ばされて来たって。一体この子は?


「軍曹、リンは別の世界からこの国に来たらしいんです。

 どうしてかはまだ解らないんですけど。

 私はリンを元の世界へ帰してあげたいのです。

 その為にもこの髪飾りが必要だと思ったのです。

 どうか解って下さい。決して戦う為だけに必要だと思っている訳ではないと言う事を。

 人を殺す為に必要だと思っている訳ではないと言う事を」


金髪の少女がミハルに言った。


「あなた達・・・あなた達は一体?」


2人を見てミハルが訊く。


「あたしは陸戦騎207戦隊所属の勇騎・リン。

 そこの金髪のはマジョカ・ランネ。同じ車両の乗っている大切な友達」


青い瞳をミハルに向けてそう言ったリンと、ランネがミハルに頭を下げて自己紹介した。


「ユウキ・リン・・・あなたは日の本から来たの?私と同じ様に?」


名乗られた日の本名に気付き、ミハルが訊ねた。


「日の本?どこですかそれ?

 すみません、あたしまだ記憶が全て思い出せた訳じゃなくて。

 名前だけしか判らないので・・・」


青い瞳を伏せてミハルに謝った。


「軍曹?軍曹はその日の本・・・ヤポンから来られたのですか?

 失礼ですがお名前を伺っても宜しいでしょうか?」


金髪の少女ランネがミハルの名を訊く。


「あっ、ごめんね。名乗ってなかったよね。私はミハル、シマダ・ミハルっていうの。所属は・・・」


ミハルの言葉を遮って2人の少女が大声を上げた。


「ええっ!?シマダ・・・ミハルって。あの噂に聞いた<双璧の魔女>の紋章を持つという、鬼の魔鋼騎士!」

「ひえええっ!こんな所で、あの敵を一発で2両倒した伝説の串刺しミハルに会うなんて!」


ー  どんな噂なんだ、全く・・・


ミハルは頭にデカイ汗を載せて呆れた。


「いや、あの。噂を信じちゃいけないよ。<双璧の魔女>の紋章って処だけ本当だけどね」


2人にパタパタ手を振って噂を否定する。


「えっ?でも帰還した先輩陸戦騎乗りの人から見たって聞いたんですけど?

 一発で2両倒したり、2000メートルの距離で走行中射撃を命中させたり・・・とか」


リンが瞳をキラキラさせてミハルを見詰めている。


「うっ・・・ま、まあ。そんな事もあったかな」


ミハルがリンの瞳に押されて認めてしまった。


「やっぱり!先輩の言ってた事は本当だったんだ。

 部隊に帰ったら自慢しようっと。

 あの串刺しミハルに会ったって!本当に一発で3両やっつけたって言ってたって!」


ランネが得意そうにそう言ったのを。


「こらこら、一両増えてるって。人をバケモノみたいに言わないでよ!」


ー  ハッ!いつの間にか2人の話に乗せられてるっ!何なのこの娘達は・・・


「んーっ、ごほん。

 とっとにかく。あなた達はその髪飾りを使って闘いに出る事になるのよ。

 どんな運命が待っているかは誰にも解らないのよ、それでもいいのね?」


気付いたミハルが二人に注意を与える。


「ミハル軍曹、それでもあたしは帰りたいのです、自分の居るべき世界に。

 それがあたしのたった一つの願い。それがあたしの闘う意味なのです。解ってもらえませんか?」


ー  この娘の闘う意味・・・か。自分を取り戻す為に闘いに身を置く・・・

   私とは違うけど、それも確かに闘う理由だね


「判ったわ、リン。あなたに譲る、その髪飾り。

 決して闇に、悪しき魂に染まらないと約束してくれるなら・・・ね」


そう言ったミハルは右手を差し出す。


「はいっミハル軍曹。誓って悪い様にはしません。決して無為に力を使ったりしませんから」


リンは誓ってからミハルの手を握り返した・・・



堅く握手を交わした2人。

そして宝珠の中からミコトが止める。

その少女に宿る、とある能力者に気付いて・・・

次回 神官巫女ミサト

君は知る。有り得べからぬ異能の巫女が現れた事を・・・

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