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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep4闘う意味Act12ラウンの店

ライネとの会見を切り上げ、学校を後にしたミハルが皇都の街並みを懐かしげに見上げ歩いた。

落ち着いた声をワザと造って。


「ライネ君、それではまた・・・授業にお戻りなさい」


ライネを教室へと戻す様に恩師に促す。

教員に教室へ戻されるライネを見送るふりをして、物陰に潜む影へと注意を向ける。


ー  頭かくして尻隠さず・・・か。

   隠れたつもりでも足先が見えているわよ。靴がね・・・


ミハルはその靴の色と形を記憶する。


「待たせたねミハル。もういいのかい?」


恩師に聞かれたミハルは影の男にも聞こえる程の声で。


「はい。だいたいの検討はつきましたので。

 弟が誰かに連れ出されたのかが。

 いえ、事件に関与している者が掴めましたので」


チラリと影の男に瞳を向けて恩師に答えた。




教員室へ戻ると、そこには検査官の姿がない。


「ミハル君。君にはこの事件の犯人が解ったのかい?」


恩師にそう言われて、


「いえ、犯人かどうかは解りませんが、関与した人物は特定出来ると思うのです」


「ほほう?どうやって特定するんだい。

 ライネとの会話ではそんな事一つも言わなかったじゃないか」


恩師が疑問を投げ掛けてくる。


「はい。確かに彼は一言も返答してくれませんでしたが、顔色や瞳で応えてくれましたから。

 誤魔化しようの無い心の葛藤が全て出ていましたから・・・」


恩師はミハルを見て大いに驚く。


「そうか。流石は歴戦の勇士だな。見違えるほど成長してくれたんだな、ミハルは・・・」

「いいえ、そんな・・・」


ミハルが照れて返答した時、教員室に検査官が戻って来た。

ミハルは直ぐに彼の靴を確認する。


ー・・・居た。この検査官が全ての鍵だ・・・


同じ型、同じ色。

間違いなく物陰でこちらを探って見ていた人影が履いていた靴だった。


「ギャガン検査官、どちらへ行っておられたのです?」


恩師がミハルの気勢を制して声を掛けた。


「ちょっと、小用で」


自分の席へと戻る検査官に、ミハルがカマを掛けた。


「小用で私達を見ていたのですね。何も隠れて見なくてもいいじゃない」


ー  さて、敵の反応は如何に?


ミハルの口車に検査官は乗った。


「隠れてなど見ておらん。たまたま通りかかっただけだ」


ー  あっさり釣れた・・・


あまりに呆気なく引っ掛かった検査官に拍子抜けしてしまうミハルに。


「そう言う事なのか?ミハル」


恩師もどうやら解った様子だった。




「それでは・・・先生もお元気で、御身体大切に・・・」


「ああ。ミハルも元気にな。必ず戻って来るんだぞ、友を大切にな!」


ミハルが校門を出るまで見送りに来てくれたこの教員に、頭を深々と下げてお辞儀した。


ー  さあ、この後だ。

   犯人に関係ある人物を特定出来た事だし・・・

  リーンに相談してみよう、きっと何かいい知恵を貸してくれるだろうから



鞄を手に街を歩く。


一年半ぶりに帰って来た皇都は、戦時下と言う事を除いては何も変った様子は無い。


ー  ああ、まだあるんだ、あのお店。

   懐かしいな、小さい頃お父さんやお母さん、それにマモルと一緒に善く来たっけなぁ


ショーウインド越しに見える品物は戦時下と言う事もあり、

幾分数少ないみたいだが営業は行っているみたいだった。

ミハルの足は知らず知らずの内にその店に向けられていた。


((カララン))


ドアを開いて一歩店に入ると、何も変らない平静さがこの店にはあった。


ー  変っていない。何もかも・・・

   このお店の中は何年も前と同じ。変ったのは私のほうなのかもしれないな


店の中で懐かしい気分に浸っていると、


「あらまあ!もしかしてシマダさん家のミハルちゃん?大きくなったわねぇ」


カウンター越しに初老の婦人が声を掛けてきた。


「あ。ラウンおばさんっ!お久しぶりです」


この店にずっと勤めている初老の婦人にミハルは懐かしそうに答えた。


「暫く見ない内に立派になったわね。

 ミハルちゃんも軍隊に取られちゃったのかい。可哀想に・・・」


ラウンおばさんはカウンターから出て、ミハルの手を掴んで再会を喜んでくれた。


「それで今日は何か必要な物でもあったのかい?」


この店に寄った理由を訊くラウンおばさんに微笑んで。


「ううん。久しぶりに皇都へ来たから懐かしくて」


店内を見回しながら答えた。


「そうかい、そうかい。ゆっくりしておゆき。今、お茶でも煎れようかね」


ラウンおばさんがカウンターの中へお茶を注ぎに行くのを、


「あ、おばさん。構わないでください!」


呼び止めたが。


「ちょっと位、いいじゃない。直ぐに出すからね」


そう言うとお茶の用意を始めてしまった。

ほっと心が休まる様な気がして、ミハルは嬉しかった。


店内を見回すと、とある品に眼が止まる。


「あ、これ。まだあったんだ」


思わず近寄って見詰める先には青く光る宝石が付いた髪飾りがあった。


「「お姉ちゃんに似合うと思うんだけどな。お父さん買ってあげてよ」」

「「ははは。まだミハルには大きいよ。もっと大きくなったらな」」

「「そうねぇ、高等部へ上がったら・・・ね」」


マモルや父母の面影が、ミハルの記憶と共に現れる。


ー  マモル・・・お父さんお母さん・・・今、何処に居るの?


そっと、その髪飾りを手にしようとした時・・・


ラウンの店で思い出の髪飾りを手にしようとしたミハル。

そこに入って来た赤い髪の少女がミハルが手にしようとしている髪飾りを求める。

その少女とは・・・

次回 赤毛のリン

君はもう一人の巫女に出会う。気付かない内に・・・

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