魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep4闘う意味Act10久しぶりの学校
ミハルはリーンと晩餐会に出席する事を承諾する。
その式の時間までマモルが通っていた幼年学校へと調査に向う。
バレン中尉がリーンとミハルを交互に見て念を押した。
「ふぇっ?私、私が宮殿に?
あわわっ、無理ですっそんな事。
だって私、作法なんて知りませんし!
侍女だなんて言われても何がどうしたらいいかなんて・・・」
ミハルが慌てて両手を振って断わるったのだが。
「大丈夫。ミハルは着いて来てくれるだけでいいの。
それに、本当の目的は式に出る将官と話をすることなんだから」
リーンが慌てるミハルを宥めて、何故式に出るかを話す。
「マーガネット姫はユーリ姫を解放する為に行かれるのです。
ただ単に式へ出席される訳ではない。
公の場なら姫の命を狙う事もないでしょう。ですが・・・」
ファブリットが補足する。
そして、咳払いしてから。
「お着替えの場に我々がご一緒する訳にもいかないですから。頼まれてくれないかね、シマダ君?」
訳を聞いたミハルは手をポンと叩いて、
「なーる程、それはそうですね。殿方が入る訳にもいきませんですもんね」
リーンを見て大きく頷いて。
「判りました。それだけ大事な役目なら喜んで行きましょう。
なにせリーンのお目付け役ですから・・・ね?」
3人に了承する。
「ああ、良かった。ミハルに断わられたらどうしようと思ったわ。頼むわね、ミハル」
「はいっ。こちらこそ!
他にお話がないのであれば早速学校に向いたいのですが。宜しいでしょうか?」
ミハルが話を切り上げて弟探しに掛かりたいと3人にお願いする。
「うん、じゃあ今晩の式に間に合わせてね。5時に此処で落ち合いましょう、遅れないでね!」
リーンが軽く手を振って予約する。
「あっ、はい。5時ですね、解りました!」
鞄にライネの写真を収めて姿勢を正し、敬礼する。
そのミハルにバレン中尉が近寄り、小さめのホルスターを渡すと。
「万が一と言う事もある。持っていくといい」
やや真剣な瞳をしたバレンが渡したホルスターには、
実弾が装填された小型拳銃コルト1911が入っていた。
「・・・出来れば必要ない事を祈りたいですね」
受け取ったホルスターを上着のポケットに入れてそう答えた。
「それでは何か解りましたらお知らせします。では!」
もう一度敬礼したミハルが部屋を退出した。
本部庁舎を出たミハルは鞄を手に一路、幼年学校へと向うのだった。
アルミーアと共に1年半を過した懐かしい建物。
卒業してからは一度も来た事は無かった。
「外観は何も変らないな・・・」
見上げた校舎は昔と何も変わりが無い。
「さて・・・行きましょうか」
ミハルは自分に気合を入れて校門をくぐる。
守衛の所へ行き、自分が卒業生で失踪した弟を探す為に話を伺いたい旨を告げる。
守衛はミハルの姿をまじまじと見て、胸の騎士章に気付くと態度を改めて取り次いでくれた。
守衛に通され教員室へ行くように言われたミハルは、勝手知った校内を歩く。
ー 久しぶりだね・・・アルミーア
旧友と仲良く歩いた懐かしい想い出が溢れてくる。
想い出の中で手を繋いで笑いあったアルミーアの制服姿が眼に浮かぶ。
ー もう、想い出の中でしかアルミーアに逢う事が出来ないのが・・・悲しいよ
エレニアでの戦闘で自分を庇って死んだ友の事を思い出して悲しい気分になってしまう。
そんな気分を振り払う様にミハルは教員室のドアをノックして、
「21期生シマダ・ミハルです。入っても宜しいでしょうか?」
中へ声を掛けた。
「おーっ、入れ入れっ」
しわがれた男の声が招き入れる。
「失礼します・・・」
ドアを開けて教員室へ入ると、そこには学生時代の当時の恩師達が迎えてくれる。
「良く還ってきたな。大変だっただろう、元気にしていたようだな」
「立派になったなあ。見違えたぞ」
口々にミハルを喜んで迎えてくれる。
「はあ、先生もお元気そうで・・・なによりです」
そう言ったミハルは教員室の隅で眼を合わせようとしない一人の男に気付いた。
ー あいつは・・・あの時の検査官。まだこの学校に居たの?
ミハルは自分を貶め、アルミーアとの仲を裂いた憎むべき男に視線を注ぐのだった。
あの検査官ギャガンと再び相対し警戒を強めるミハルに恩師が紹介したのは、
同室だったライネ・ダグラムという少年だった。
次回 ライネ・ダグラムという少年
君は真実を探る、異質な者の影に気付きながら・・・