表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
12/632

魔鋼騎戦記フェアリア第1章魔鋼騎士Ep3訓練!あの戦車を撃て!Act6

バスクッチ曹長を車長に向え、ミハルの射撃訓練が始まる。

ミハルは標的車を発見した事を、車長のバスクッチ曹長に報告する。



「よし、標的車捕捉!

これより射撃訓練を始める。

ラミル、車体を左90度に向けろ。少しでも敵に投影面積を少なくするんだ!」

        (注・投影面積・敵の弾に晒す車体面積の事)


ラミルが車体を廻して、敵の弾に当たりにくい形に持っていく。

ミハルはそれに併せて砲塔を旋回させた。


「射撃準備完了。標的車確認!」


曹長に報告すると、ミハルは照準器を睨む。



照準器の中に捉えた力作車から信号弾が上空へと放たれた。


ー  どうやら、こちらに気付いた様ね。

   距離1800。こちらの有効射程に入っている。

   もし、これが戦闘なら、こちらから先手を打てた筈・・・


8倍の照準器には、力作車の車体が照準点からはみ出していた。


「目標!左舷前方の力作車。目標は停止中。

 距離1500、徹甲弾。力作車後方30メートルにある標的を狙え!」


車長の命令で、力作車が引いてきたキャンパス製の標的に照準を合わせる。


「照準よし!」


ミハルは標的の中心を、十字線の真ん中に合わせて引き金に指を掛ける。


ー  この砲の特性が解らない今は、照準器を頼るしかない。

   この一発で癖をつかまなきゃいけない!


ミハルの思考がバスクッチ曹長の命令で途切れる。


て!」


っ!」


復唱と共に、指がトリガーを引き絞る。



((ボムッ!))



くぐもった射撃音が車内に響き渡る。



((ガシャッ!))


薬莢が尾栓から弾き出される音が続いて聞こえたが、

ミハルの目は照準器から離れなかった。


低伸する弾道をわき目も振らず見詰る。


「命中!」


バスクッチ曹長の声にも反応を示さず、標的のキャンバスにうがかれた穴を見て。


ー  狙った位置から右へ1メートル程ずれた。

   1500メートルでこの誤差なら、大した物だわ。

   でも、有効射程ぎりぎりの1800メートルなら外れていたかもしれないな


ミハルは慌てず誤差修正の為に、照準器右側の修正摘みを左に廻す。


「第2射!同じく徹甲弾」


ミリアは、すかさず装填してボタンを押すと。


「装填よし!」



マイクロフォンを通して、報告が入る。


「続けて、標的に撃て!」


曹長の命令と共に、ミハルの指に力が入る。


((ボムッ!ガシャッ!))


再び射撃音と、排出音が車内に轟く。


低伸する弾が、今度は標的の中心を射抜いた。


「よし、ど真ん中だ。射撃中止、信号を送る!」


曹長はキューポラから半身を乗り出し、信号弾を上空に向けて発射した。


「ミリア、ミハル。

 次は動標的を撃つぞ!

 力作車が信号弾を発射したら、射撃再開。

 オレの命令を待たずに標的に当たるまで発射し続けろ。いいな!」


曹長の指示に、


「了解!」


短く返事をして、砲塔旋回レバーに手を掛ける。

ミリアは徹甲弾を装填して、次弾を抱えた。


力作車がスピードを増し、それに連れて標的も加速しだした。

そして力作車から発煙弾が打ち上げられた。


「よし、撃ち方始め!」


曹長の命令を受けて、


っ!」


ミハルはトリガーを引き絞る。


((ボムッ!))


距離1500メートルで発射された弾は、残念ながら標的の1メートル程後方を通過してしまう。


「ミハル!敵速30キロ。距離1500、5シュトリッヒ前方を狙え!」


曹長が偏差射撃を命令する。


「了解!」


ミハルは標的の前方5目盛の所に中心点を合せて、再びトリガーを引き絞る。


((ボムッ!ガシャンッ!))


射撃音と共に、飛び出した徹甲弾が標的を捕えた。


「命中!射撃停止」


ミハルは少し安堵して、トリガーから指を離した。


ー  この砲は優秀だな。

   変な癖も無いし、殆ど散布範囲も暴れない。

   撃ちやすい、良い砲だな・・・


ミハルはこの47ミリ砲が自分には扱い易いと感じていた。


「次は、走行射撃をする。

 ラミルには、標的と並ぶ様に走ってもらう。

 並行運動に入り次第、射撃を再開する。いいな!」


「了解!」


ラミルとミハルは同時に返事を返した。


復唱と同時に車体が進み始める。


ラミルは、車体を標的の左側に見て走らせる。


「ミハル、車体の揺れに上下運動に注意しろ。

 ラミル、距離600まで接近。標的の頭を押さえる角度で近付けろ!」


バスクッチ曹長の命令で、ななめ前方に向きを変え、接近を開始した。


「ミハル、射撃命令と同時に発射しろ。

 敵速30キロ、距離600、2シュトリッヒ前方を狙え!」


「了ー解!」


ミハルは右側の摘みを廻し、射撃諸元を併せて標的にまとを合せる。


「射撃諸元、併せました。射撃用意良し!」


「よし!距離600。撃て!」


ミハルは命令と同時に発砲した。

弾が、動く標的の左下に当たる。


「ミハル、次はもう少し、前方を狙え。

 それと上下運動に注意しろ・・・射撃を続けろ!」


曹長の注意を聞き、修正を加えて次射を放つ。

揺れに注意を払って撃った弾が、標的の中央を射抜いた。


「よし!命中!ミリア、残弾は何発有る?」


曹長の問いに、


「徹甲弾6発と、魔鋼弾が2発です。」


ミリアが落ち着いた声で返答する。


「よし、思っていたより少ない消費で済んだな。ミハル、上出来だぞ!」


曹長が、ミハルの射撃術を褒めた。


「いえ。この砲が変な癖も無くて・・・。当て易かっただけです」


ミハルが謙遜して答えると、


「いや、そうじゃない。ミハルだからこそ当てられたのさ。

 この砲は能力ちからのある者でこその砲なのだから」


曹長が意味有り気な言い振りをする。


能力ちから・・ですか?それってどう言う意味なのですか?」


ミハルがバスクッチ曹長に訊くがそれには答えずに。


「よし、訓練を終了する。合戦準備用具納め」


訓練の終了を宣言されて、


「ラミル力作車と合流する、力作車の後方に付けろ。

 キャミー、無線封鎖を解く。少尉に合流すると連絡しろ」


ラミルとキャミーは、それぞれ命令通りに行動した。


「曹長、先程の話なのですが・・・」


ミハルが気になった事を訊くとキューポラから下を覗き込んだ曹長が、

マイクロフォンを押えずミハルに口を開いて声には出さず、


<後でな>


と、眼で伝えてきた。


ミハルも声には出さず、了承する合図に首を縦に振る。


ー  言い辛い事なのかな。どんな意味が有ったのだろう?


ミハルは曹長が自分の知らない秘密を隠している事に不安を感じた。




「皆、ご苦労でした。

 これより基地に帰り、整備に掛かります。

 不具合があったなら直ちに整備班と共に修理、復旧に当たる様に!」


小隊長から無線連絡が入る。

キャミーが各員に聞こえる様に回線を開いておいたのだ。


ー  そういえば、最初に砂煙を上げていたのは何だったのだろう。

   訓練の欺瞞車両なら合流してきてもいい筈なのに・・・


「車長、最初に見た砂煙は訓練用の車両だったのですか?

 そうでしたら、合流してきてもいいのでは?」


ミハルはバスクッチ曹長に疑問を訊く。


「小隊長、今回の訓練にもう一両、何かを使いましたか?」


早速、曹長がリーン少尉に尋ねてくれる。


「もう一両?そんな予定に無い事はしないわ。

 その車両の形式を確認したの?」


ー  何ですって!それじゃあ、あの砂煙の正体は?


「各員、戦闘配備!

 これは、訓練では無いっ。砂煙の正体を確かめるぞ。

 ラミル、力作車の前方に回りこめ!」



砂煙を上げていた謎の車両。その正体は・・・。

咄嗟に開始される戦闘。それは、これからのミハル達にとっての初戦となる。

次回Act7

君は生き残る事が出来るか

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ