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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep4闘う意味Act5海でも陸でも

バンダ一曹から海での闘いについて話を聞くミハル。


その戦場もやはり悲惨な様相を呈していた・・・

一口・・・お茶を啜ってからバンダ一曹が続ける。


「我々の艦隊は・・・

 ロッソアの巡洋艦隊と交戦して、ほぼ壊滅させられてしまった。

 僕の乗っていた艦も敵の集中砲撃を受けて沈められたんだよ」


バンダ一曹は、悲惨な戦場を思い出すかの様に瞳を伏せる。


「それは酷い有様だった。

 仲間が次々と死んでゆく。

 上官も同僚も、あっという間に爆発に巻き込まれて倒れていった。

 そして退艦命令も発せられずに艦は沈んだんだ。

 ・・・海に飛び込んで助かったのが嘘の様だった。

 周りには数十人の仲間が浮かんでいたんだが一人、また一人力尽きて沈んでいった。

 艦の元へ戻っていくように。

 僕は必死に泳いだ。

 艦の防水材に辿りついたのは天の助けだったのかもしれない。

 そして、近くに浮いていた士官を助けたんだ。

 その人を助ける事が出来た事が、

 あの地獄の中で唯一僕が出来た戦果だったのかもしれない。

 還ってから知ったんだけど、僕が助けたその人は艦隊副旗艦の艦長だったのさ。 

 その褒美がこの一曹という官職という訳なんだよ」


薄く苦笑いを浮かべてバンダ一曹が2人に自分が海軍一等兵曹となった訳を話した。


ー  海でも・・・海の上でも戦場は悲惨なんだ


ミハルはバンダの話を聞いて、目を伏せた。




「僕の話はいいとして、ミリアは戦車に乗っているんだろ?

 何を任されているんだい?

 まさか運転手とか・・・ないな。

 昔っから方向音痴だったからな」


気を取り直したバンダ一曹が、ミリアに話を振った。


「しっ、失礼なっ!これでも立派な装填手なんだから!」


ミリアは頬をぷぅっと膨らませて拗ねた。


「へーっ、装填手を務めているんだ。

 海軍なら花形な配置だぞ。

 艦砲の砲撃要員なら、皆から羨ましがられるなぁ」


ミリアを宥める様にバンダが笑い、


「それで軍曹の下で務めているのか。・・・務まっていますかミリアは?」


ミハルに勤務態度を訊いてきた。


「はい。良い装填手だと思います、ミリア兵長は」


微笑んでバンダに答えると、


「うっ、嬉しいですミハル先輩!」


涙目になって嬉しがり、ミリアが喜んだ。


「ははは。そうですか、それは良かった」


バンダ一曹は笑って二人を見て、お茶の入ったカップを手に取った。





((ガッシャーン))


突然3人の横で物の壊れる音がする。

3人が音のした方へ向くと、そこでは海兵と陸軍の兵が言い争っていた。


「何してんのかしら、全く!」


ミリアが海兵と陸軍兵を見て呆れる。

しかしバンダ一曹はすっくと立ち上がり、商店へ向けて走り出す。


「待てっ、何を騒いでいるんだ。やめろっ!」


駆け寄ったバンダ一曹が数名の男達に命じた。


「あっ、一曹!こいつらが文句を言ってきやがったんですよ。

 海の者がここらに出て来るなって!」


若いセーラー服を着た兵が、バンダ一曹に説明した。

見ると数名の陸軍兵が3人の海兵を睨んで立っていた。


「なんだ、お前の部下か、こいつらは。しつけがなってないな海軍さんは!」


その中で一人の軍曹がバンダ一曹を睨んで言った。

海軍の事を馬鹿にされて頭に来た一人の海兵が、


「なんだと、もう一度言ってみやがれっ!」


怒鳴り声を上げて、陸軍下士官を睨む。


「おいっ、黙っていろ」


その彼にバンダ一曹が、やめる様に言って。


「我々も皇国軍人に変わりがありません。

 別にあなた方陸軍の方に迷惑をお掛けするような事をした訳では無いと思うのですが。

 何かお気に召さない事をしたと言うなら謝ります」


バンダ一曹は礼儀正しく軍曹に言った。

だが、軍曹が放った言葉は海兵にとって最大の侮辱だった。


「お気に召さないだと?

 だいたい海軍が此処にいること自体が気に食わねえんだ。

 負けてばかりの海軍がよくもぬけぬけと陸の上を歩けるもんだ。恥ずかしくねえのか?」


その一言に、さすがのバンダ一曹も頭に血が昇ったのか手を強く握り締め睨み返す。


「何だと!」


辛辣な言葉を吐いた軍曹に叫んだ。


海兵と陸軍が険悪な空気を辺りに振りまいているのを観て。


「先輩、止めましょうか?」


「うん。そうだね、止めた方がいいよね」


ミリアとミハルが立ち上がった。


バンダ一曹と3名の海兵が軍曹以下5名の陸軍兵と睨みあっている間に、

ミリアとミハルが割って入る。


「軍曹、今言われた言葉を撤回して下さい。陸軍の面目に関わる事ですから」


ミリアがミハルの後ろから声を掛ける。

2人の少女が陸軍戦車兵制服を着て近付いて来たのを知った軍曹が。


「何だ貴様等は。海軍の肩を持つのか!」


振り向き様に声を荒げた。

そして2人少女の内、一人が下士官服を着ているのに気付くとミハルの姿を眺め回すと。


「何だ貴様。

 同じ軍曹でもオレは善功章4本だぞ。

 お前よりずっと長く軍に居るんだ、止める権利なんて無いんだからな!」


陸戦騎下士官服を着たミハルに、上から目線で凄んできた。


「・・・どうやら言っても聴いてくれないみたいですね、ミハル軍曹。

 でしたら、見せてやったらどうですか、アレを・・・」


ミリアがミハルの耳元で呟く。


「そうね、ミリア。私の鞄から持って来てくれないかな」


眼前の軍曹を睨みながらミリアに頼んだ。


オープンテラスに置いてあるミハルの鞄からミリアが取ってきた物を、

直ぐに胸ポケットに刺す。


・・・それは・・・



突然の揉め事に、ミハルは伝家の宝刀を抜いた。

ミハルの胸に輝く騎士章に全員の眼が釘付けになる。


次回 撃破王<エース>の称号

君は仲間割れする者達を仲裁する。その偽らぬ気持ちで・・・

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