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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep4闘う意味Act3みんなで休暇を取ろうか

師団司令部に呼び出されていたミハルに師団長が贈った物は・・・

美しい青い瞳でリーンが頷く。


「はい。師団長閣下。

 それが私の運命というなら、抗ってみせます。闘い抜いて見せます。

 必ずバスクッチの想いを無駄にしません」


リーンの瞳は青く輝き、信じる想いを秘めていた。


「リーン中尉・・・・」


ミハルは強き信念を持ったリーンに誇らしさを感じて微笑んでいた。

まるで自分の事の様に。



「それでは、遺族の方にこの賞状をお渡しします。・・・お話は以上ですか?」


リーンが賞状を片手に持ち替えて退出しようと訊くと。


「まあ、待ちたまえ中尉。

 もう一つ感状を渡したいのだがね。

 これは本師団から・・・だ」


師団長の言葉に副官がもう一枚の賞状を出して、今度はミハルに差し出す。


「は?・・・はい?」


上官のリーンにでは無く、

下士官でもない一兵卒の自分に差し出された賞状に驚き、手を出しかねているミハルに。


「何を躊躇っているのかね、魔鋼騎士殿。

 これは君に贈られる個人感状なのだがね。

 本作戦最多撃破砲手にね」


師団長はミハルに笑いかけながら、その賞状を手に取る様に言った。


「えっ?私に・・・で、ありますか?」


魔鋼騎士と呼ばれて、更に身体を堅くしたミハルがリーンに眼でどうすべきかを問うたが。

黙って受け取りなさいと頷かれた。


副官から差し出された感状を受け取り官姓名の処を見て息を詰まらせた。


「えっ?私は兵長なのですが、閣下?」


何かの間違いで書かれたと思ったミハルが顔をあげて訊いた。


「はっはっはっ。何も間違ってはおらんよ、シマダ・ミハル魔鋼騎士殿。

 君はもう名実共に魔鋼騎士ではないか。

 ならば下士官が相当だろう?なぁ、軍曹」


感状の書面を見るミハルの眼には、自分の官位が軍曹となっているのが写っていた。


「で、でも私は任官試験も受けておりませんが・・・」


書面から顔を上げて師団長を見て訊ねるミハルに。


「知らんのかね、兵の階級を上げる権限を将官が持っている事を。

 ・・・つまり、そう言う事だ、シマダ軍曹!」


ニヤリと笑う師団長に。


「え?・・・あ、はい。解りました・・・」


慌てて頭を下げるミハルに、クスッとリーンは笑った。







リーンとミハルはMMT-6の元へ戻った。

そして皇王の賞状をキャミーに見せたリーンがこう言った。


「キャミー、私のお願いを聞いてくれないかな。

 その賞状をバスクッチ大尉のご遺族の方に渡してあげて貰えないかしら?」


賞状を見詰めて呆然としているキャミーにお願いする。


「どうして・・・ですか?

 あたしにどうしてそんな事をさせるのですか、中尉?」


呆然と賞状を見てうな垂れているキャミーが反抗する様に言って拒む。


「キャミー、伝えなければいけない事は一つじゃない筈よ。

 その賞状よりもっと大切な事が、あなたにはある筈よ。違う?」


リーンはキャミーにその指に付けている指輪へ目を向けて諭した。


「キャミー、それはあなたにしか出来ない事なのよ。

 あなたしか言う権利の無い真実なのだから」


2人が婚約までしていた事、2人が愛し合っていた事を遺族へ知らせるべきだと諭す。


「・・・中尉」


自分の指に填めたリングを見詰めたキャミーが決心して頷く。


「行きます。行かせてください。ウォーリアの故郷に。

 そして伝えて来ます、彼と愛し合えた幸せを、彼に出会えた幸せを・・・」


そう叫んだキャミーの肩に手を添えて、


「ありがとうキャミー。

 本小隊が基地へ還ったら直ぐに休暇を与えるから。その時はお願いね」


そう言ってテントを後にした。




野営地の片付けをしていたラミル、ミリア、ミハルに呼びかけた。


「みんな、これより撤収を始めるわ。

 一度エンカウンターの基地へ戻るから。いい?判ったかな?」


基地へ戻れると知ったミリアが。


「本当ですか!やった、やっとお風呂へ入れる。

 センパイ、一緒に入りましょうねっ!」


小躍りしてミハルに抱き付いて喜んだ。


「あいたたっ。こらっ、ミリア。怪我人を労わってよ」


抱き付かれたミハルは左足の傷を押えて怒ったが、その顔は少し嬉しそうだった。


「あーあっ。またミリアのミハル病が、再発したか・・・」


ラミルが顔を押えてしょうがないと呆れた。





__________





「休暇・・・ねぇ」


ふうっとため息を吐いてミリアを見ると、何かワクワクしている様子で誘って来た。


「ねえ軍曹。たまには息抜きも必要ですよ。

 遊びに行きませんか?

 私の故郷へ。皇都の直ぐ近くなんですけど・・・」


眼を輝かせるミリアが故郷へ一緒に行こうと誘ってくれる。


「ふーん。ミリアの故郷って皇都の近くだったんだ」


ミハルは意外だと言わんばかりに驚くと。


「そうね、寄ってもいいかな。少しなら・・・」


その言葉を耳にしたミリアが勝手に喜ぶと、


「少しと言わず、ずっと一緒にいましょう!」


力一杯抱き付いて甘えて来た。


「あらミリア、それは駄目よ。ミハルは皇都で用事があるから」


いつのまにか二人の傍にリーンが立って笑い掛けていた。


「あ、中尉、居らしていたんですか」


ミリアがミハルから離れて、赤くなって訊くと。


「今来た処よミリア。

 話を聞いていたんだけど・・・

 ミリアには悪いけどミハルはずっと一緒って訳にはいかないわ。

 あなたも知っている通りミハルは弟君を探さなくてはいけない。解るでしょ?」


リーンがミハルを見て笑い掛けるのを止める。


「あっ、ごめんなさい軍曹。浮かれ過ぎていました、許してください」


ミリアがミハルの気持ちを思って謝った。


「ううん、いいのミリア。誘ってくれて嬉しかったから」


首を振ってミリアに感謝の気持ちを伝えたミハルが、


「マモルはきっとどこかで・・・私が助けに来るのを待っている筈だから」


そう呟くミハルは目を伏せて、

辛い気持ちを何とか顔に表さない様に耐えていた。


「そう・・・ですね。

 きっと弟君は軍曹が来てくれるのを待っているんですよね」


そんなミハルを見詰めてミリアが同情する。


「で、ミリア。あなたはどうするの?故郷へ帰る?ラミルみたいに」


すでに出発して行ったラミルの様に直ぐに帰郷するのかを訊くリーンに、


「え、はい。折角ですので・・・」


頷いて答えたミリアが、ミハルを見て少し寂しそうな顔をした。


「そんな悲しい顔をしないでミリア。

 皇都に近いんでしょミリアの故郷って。

 少しならいいよ、私。寄って行っても」


ミハルの一言に顔を輝かせたミリアが、


「本当ですか!ミハル先輩っ!」


嬉しそうに聞き返してきた。


「うん、焦って行動してもどうしようもない事だから。

 ね、リーン中尉、中尉もどうです?」


ミハルがどうせならリーンも一緒に行かないかと誘う。


「うーん。そうね、でも私は姉様の情報を早く集めたいから・・・

 ごめん、やっぱり私は先に皇都へ向うわ」


顎に手を添えて考えたリーンが一人ででも先に皇都へ向うとミハルの誘いを断わった。


「そう・・・ですか、残念です」


ミリアが本当に残念そうに言ったら、リーンがニヤリと笑い。


「2人で少しでも気休めを満喫して来なさいよ。

 ・・・でもね、ミリア。

 ミハルは私のモノだから、変な手を出しちゃ駄目よ!」


ミリアへ茶々を入れた。


「なっ!何を言ってるんですか中尉。私はそんな事、これっぽっちも・・・」


真面目にリーンの話を聞いたミリアがとんでもないと手を振って答えたら。


「ふーん?そうなの、ミリア。また何か企んでいたの?」


ミハルに突っ込まれて更に動揺して、


「先輩まで!本当に変な事なんて考えてませんからっ!」


思いっきり身体全体を使って二人に身の潔白を示した・・・


戦備が整う間に、搭乗員達はそれぞれの想いを込めて休暇を取った。


キャミーはバスクッチの遺族の元へ、ラミルは故郷の父母の元へ、

そしてミリアとミハルは連れ立ってウエンタムの港町へ、ミリアの父母の待つその街へと向う。

リーン一人が皇都へ向う間に。

次回 ウエンタムの港街

君は幼馴染と出会う。遠く離れていた違う軍に属している懐かしい人と・・・

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