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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep3エレニア平原Act33強敵の出現

右舷の敵を撃つ為、攻撃目標の変更を決断したリーンの元に強敵の影が忍び寄っていた。

突然現れた敵に気付いた時には、絶体絶命の危機に陥っていた。

エレニア平原に一陣のつむじ風が舞い狂っていた。


それはこれから起きる事の前触れだったのか?



「何か変だな、ラコス周りの敵に動きはあるか?」


マーク兵長がレシーバーを押えて聞き耳を立てつつ周りを探って操縦手に訊く。


「え?いえ、何も。前方4000に居るM4隊が後退を始めた位しか解りませんが?」


ラコスは操縦に専念しているのか、左舷側を観測せずに答えた。


「そうか、何だかやけに敵の無線が騒がしくなりやがったからな」


無線を傍受し続けるマーク兵長が、ブスリと呟く。


「マーク、敵の無線は何を騒いでいるんだ?」


アルミーアが気になってマークに訊くのだが。


「さあ?何と言っているのか解りませんが、何者かが退がれと言ったみたいですね。

 それと、射撃の邪魔だとか何とか・・・」


肩を窄めてマークが答えた時、

アルミーアは照準器を睨んで敵部隊が急速に後退を始めた事に一抹の不安を覚えた。


ー  何故退くのか。味方4号部隊に優勢だったというのに?


アルミーアは照準器から目を離して振り向き様バスクッチに警戒を求める。


「小隊長!敵M4隊が急速に後退して行きます。

 味方4号に追撃させて我々はここから撃ちましょう。

 これ以上前へ出るのは危険だと思います。

 重砲の射程に入ってしまいますから」


「ここから狙えるか、アルミーア?

 ならばM4隊へ攻撃を掛けるぞ。ラコス停車。目標M4隊、攻撃始めっ!」


バスクッチは後退するM4へ追撃を掛けず、その場より前へ進む事を止める。


「はい、小隊長!目標後退するM4。撃ち方始めます。バークっ魔鋼機械発動っ!」


アルミーアは倍率を上げた照準器でM4を狙う。

4000メートルもの遠距離だが、アルミーアの照準に迷いは無かった。

その蒼く輝く瞳に狙われたM4は、真っ直ぐ後退を続けている。


「撃てっ!」


88ミリ砲弾が狙いすまして放たれる。

長砲身88ミリ砲の一撃はM4の装甲を軽々と撃ち抜いて撃破する。


「よし、いいぞ。どんどん撃て!」


バスクッチが射撃の継続を命じる。


斜め前方市街地寄りの位置に着けたリーン車も、射撃態勢に入るのが見えた。

僅か十数メートル先に停車し、

砲を市街地方向からM4隊の方へ向けつつあるのを確認して、


ー  リーン中尉も射撃するようだが、やはり市街地の重砲が気になっていたようだな


バスクッチはその市街地に目を向けた。

そして、とある土塁の変化に気付く。


ー  何だあれは?土塁が膨らんでいく?

   いや、違う。何かが土塁から出てくる!?


市街地の手前、中戦車がダグインしている陣地の奥にある土塁が盛り上がり崩れていく。

そこから現れたのは・・・


「砲身?何だあれは?あれが戦車だというのか!?」


土塁から現れた平べったい車体。砲塔を持たず車体から直接巨大な砲が突き出ている。

その車体が崩れた土塁を乗り越えて姿を現した。


「アルミーア!市街地方向に巨大な戦車が現れた。

  9時の方向っ、攻撃目標変更!」


咄嗟にバスクッチはアルミーアに攻撃目標を変更する様に言って、その不気味な車体を擬視した。


ー  あれは何だ?あれが駆逐戦車というやつか?

   それにしてもあの巨大な砲は危険だ。

   あれに撃たれたらいくら魔鋼騎といえどもひとたまりもあるまい!


バスクッチがマーク兵長に叫ぶ。


「マーク!リーン中尉へ連絡。左舷市街地に敵車両。急速後退しろと言え!」


バスクッチは尚もその平べったい車体から目を離さず、

その砲身が確実にリーンの乗るMMT-6に狙いをつけている事に焦りを募らせた。


「何?市街地から現れたの?」


キャミーがバスクッチからの警告を知らせると、

左舷のペリスコープから市街地を見たリーンの瞳にその車体が写った。


ー  何?あの車体・・・。砲塔が無いじゃない?!


平べったい車体、その上にある筈の砲塔が見当たらない。

しかし、その車体から突き出た太く長い砲身に眼が止まる。


ー  あれは一体?回転砲塔を持たない戦車。

   前方の敵を狙撃する為だけに造られた戦車。

   一撃で前方に居る戦車を駆逐する戦車。つまり、駆逐戦車?!


リーンの瞳にこちらに砲身を向けて車体を現した敵が、射撃態勢に入ったのが映る。

言い知れぬ恐怖が全身を駆け巡る。


ー  しまった。もう少し早く気付けば・・・

   M4を攻撃する為にミハルに命令を出さなかったのに!


そう、僅か数十秒前にバスクッチ車と同じ様にM4への攻撃命令をミハルに出したのだ。


ー  ミハルが市街地へ砲塔を向けていたのに・・・

   自分がミハルの意見に従っていれば即座に発砲出来たというのに


リーンは臍を噛んだが、全ては後付の後悔でしかなかった。


「ミハル!右舷市街地に出現した敵に目標変更!急いでっ!」


リーンに出来る事は敵が発砲する前にこちらから砲撃する命令を出す事だけだった。

M4への狙いを付けていたミハルには、リーンの命令はあまりにも突然の事だった。


ー  え!?市街地から敵が現れたの?

   しまった!やっぱり此方の隙を狙っていたのか!


それでもミハルは、リーンの知らせた敵に砲塔を旋回させようと砲向ハンドルを倒す。

砲が右舷9時の方向へ回転するまで1・5秒程掛かる。

その僅か1・5秒がリーンにもミハルにも無限の長さに感じられた。


「ラミル!急速後退っ!」


もう間に合わないと感じたリーンが叫ぶ。

一瞬の迷いが生死を分ける戦場で、リーンの命令は遅すぎた。

ラミルがギアをバックに入れ、

アクセルを踏み込むまで1秒も掛からないが、左舷のペリスコープに映ったのは。


ー  あっ!撃たれるっ!


リーンの瞳に絶望的な砲煙と赤く輝く砲弾の飛翔が映る。


ー  間に合わないっ!


照準器の中にまだ発砲した車体を捉えられずミハルの焦りは極限に達した。

真っ直ぐ此方の胴腹目掛けて飛んで来た砲弾を見て、


ー  駄目だ。避けれないっ!


思わず覚悟を決めて目を見開いたリーンの視界に何かの影が入る。


それは・・・最悪の瞬間が訪れる暗き影?!


巨大な砲身から放たれた砲弾が側面を狙って放たれた。

目前に迫った砲弾。被弾は避けられないと覚悟するリーンの瞳に影が映った。

その影とは・・・


次回 絶望の瞳

君はその砲撃に生き残る事が出来るか!?

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