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ジョージは、
さっそく、クレヨンを使って、
大きな紙に、絵を描いていきます。
ポーラも、
じっと考えていましたが、たけしの書く絵に合うような形で切り絵を作っていきます。
さて、ジョンはというと、
のりを使ってやることが思い浮かびません。
のりを手にしたまま、することもなく、たたずんで、ほかの二人の作業をうらやましそうに見ているだけです。
さあ、
ジョージの描いていた絵が、七色の虹に、都会と大地の風景というふうに、立派になっていきます。
それに加えて、
ポーラの切ったお星さまや、雲がそのキャンバスを飾っていきます。
ジョンは、何か悔しくなりました。
自分が、クレヨンや、はさみを与えられておらず、のりなんかで何かしろといったお父さんが自分を小さく見ているようで悔しかったのです。
そして、ジョージやポーラが、自分の与えられた道具をうまく使いこなして、一生懸命何か作っているのを見て、いよいよ腹立たしくなってきました。
ジョンは、とんでもないいやがらせを思いつきました。
どうせなら、こののりを使って、ジョージやポーラの足や手やお尻をべとべとにしてやろう。
ジョンはこっそりと、作業に夢中になっている二人の周りにのりをこぼしました。
ジョージが言いました。
「のりすけー。そののりを使って僕らの作品を手伝ってくれ。一人にしてごめんね。君の出番だよ。
それがないとこの作品は完成しな・・・
うわっ!!」
と、ジョージが手を置いたところに、のりが敷かれていて、ジョージの手はのりまみれになってしまいました。
「どうしたの?」
と、ポーラが立ち上がって一歩を踏み出すと、ポーラの足にものりがひっつき、ベタベタです。
ジョンは知らんふりをして、トイレに行くふり。
ちょっと心残りはありましたが、遠くからその姿を見て一人で廊下で大笑いしていました。
そこに、お父さんがニコニコしながらかえってきました。
「会場にぞくぞくと楽しい人たちが集まってきているよ。
そろそろ開場なのだけれども、君たちの作った作品が、パーティ会場に飾られることになった。
さあ、作品を見せてくれ。」
ジョージは、洗った手を拭きながら、
笑顔で言いました。
「見てみて、パパ。
僕は、パパから借りたクレヨンで、素敵な世界の風景をかきあげたよ。
どう?」
お父さんは、それを見て、たいそう感激しました。
「ジョージ、お前はうまい絵を描くなあ。
クレヨンなんかじゃ物足りないだろう。
あとで、水彩絵の具のセットを渡してあげよう。
もっと頑張りなさい。」
と、お父さんはジョージをたたえました。
次に、
ポーラが、足を拭きながらいいました。
「見て、パパ。
私はパパのはさみを使って、お星さまや月や星などの切り絵を作り、ジョージの絵をデコレーションしました。
どうですか。」
お父さんは、それをみて感心しました。
「ポーラ。あなたもよくがんばったね。
はさみ一本じゃやりにくいこともあるだろう。
あとで、ものさしやコンパスも渡してあげよう。
さらによくなることを期待しているよ。」
と、お父さんはポーラを、ほめました。
最後に、
顔をお父さんからそらしながらうつむいているジョンが
余ったのりを見せて、ぼそっと言いました。
「パパ・・・。
こんなのりだけじゃ僕はなにもできなかったから、何もしていません。
こののりは、パパのだし、おとなしくそのまま返すね。」
パパは、のりを受け取り、
そののりの中身が減っているのを見て、悲しそうな顔をして言いました。
ほかの二人のしぐさを見て、ジョンが何をしたのかもわかりました。
「ジョン、よく聞きなさい。
あなたに、こののりを使えば、あなたは素敵なことができると信じて貸した。
それなのに、こんなひどい使い方をして。
二人はなぜ、体を洗っていたんだい。」
「僕は・・・何もしてないよ。」
のりすけは、パパの前で嘘をつきました。
怒られるのが怖かったし、自分のしたことがばれたらパーティに行けなくなると思っていたのです。
パパは、ジョンの心を見抜いて、悲しそうな声で言いました。
「なぜ、あなたは、私が怒ったり、罰したりすると思うんだ。
正直に言って、あやまれば、許して、一緒にパーティを楽しもうと思っていたのに。
それに、あなたには、ジョージの絵とポーラの切り抜きを張り付けて一つにできる仕事があったじゃないか。
さあ、ジョン、そののりを返しなさい。
これは、あなたに使われるよりも、あとの二人に使ってもらった方がよっぽどいい。
さあ、二人とも、こののりを使って、作品を完成させなさい。
そして、パーティに行こう。
ジョン、君はしばらく、そこで反省していなさい。今、君には何をする資格もないのだから。」
ジョンは、机に座り、動くことも作業をすることもできず、じっとすること以外できませんでした。
悔しくて、「なんで自分だけがこんな目に合わねばならないのだろうか」と思うと、涙がぽろぽろこぼれてきます。
作品が完成しかかって、お父さんはみんなに呼びかけました。
「さあ、この作品をもってパーティに行こうか。」
ジョンは、自分もそのパーティに呼ばれていることを知っていましたが、
後ろ髪をひかれて引かれて、立ち上がる気にもなれません。
こんな心のまま、パーティにいっても絶対に楽しめないことを知っているからです。
二人は少し悲しそうな顔をして、机に取り残されたのりすけのことを気にかけています。
お父さんは、黙ったままです。
ジョージが、口を開いていいました。
「パパ、こんなのじゃ、僕たちは楽しいパーティに行けないよ!
いくら、ジョンが僕たちに悪いことをしたからって、一人だけおいてけぼりは、僕たちもつらいよ。」
「そうよそうよ。」
ポーラも口を開きます。
「本当は、この作品はまだ完成していないの。
ジョンにしか貼り付けることのできない箇所があって、それがないとこの作品は死んだままなの。」
「・・・・・・」
沈黙が流れます。
お父さんは言いました。
「ジョン、ふたりがああいってるぞ。どうする?」
ジョンは、それを聞いた瞬間、大声でわんわんと泣き出してしまいました。
そこで、ジョンは、やっとしゃくりあげながら、声もたえだえに言いたかったことを全部言いました。
「う・・・えぐっ、えぐっ。
ジョージ、ポール、ごめんなさい。のりをまいたのは僕です。」
「いいよ、もう済んだことだし。
でも、なんであんなことをしたの?」
「ぐやじがったんだよー。
君たちは、ものすごくいろんなことができて、パパにも認められているのに。
なんで、僕だけ、僕だけが、小さなことしか与えられないし、褒められないし認められないんだー!パパはどうせ僕のことなんか嫌いなんだ!」
パパが、近づいてきて、のりひこの前に座ってやさしくこういいました。
「それは違うよ。ジョン。
あなたに必要なものはみんな貸してあげた。それは、あなたにしかできないことなんだ。
あなたののりがなければ、この作品は決して完成しない。
ジョージの絵も、ポーラのはさみも、ほかのだれにも替われないお仕事で、それはあなたも一緒なんだよ。それなのに、なぜ他人と比べたりしたり、人の役割を邪魔しようとしたんだい。」
「パパ。せっかくパパが、僕のことを考えてくれたのに・・・ごめんなさい!
パパ、ごめんなさい。」
パパは、「よし、よくその言葉を言えたな。偉いぞ。」と、ジョンを抱きしめました。
ジョンは、大声で泣きました。
それを見ていた、たけしも、しずかも「ああよかった。よかったね。」と涙を流しました。お父さんも思わず涙を流しました。
「よし、じゃあ、この作品も、あと最後の詰めが残っている。
頼んだぞ!ジョン!」
最後、三人は協力し合って、無事に立派な作品を完成させ、パーティにもっていくことができました。
そのパーティでは、パパも、子どもたちも、みんな一人ぼっちになることなく、この上なくなかよく、楽しむことができましたとさ。
このパーティの日の出来事は、お父さんにとっても、子どもたちにとっても、忘れることのできない大切な思い出になったということです。
おしまい。




