第二十四章 決着
「何だ……その力は」
目の前の施設長が息をのむ。
「その能力は何だ! 炎生成能力とはあまりにかけ離れすぎている!」
俺は自分が初めて炎を出したとき出し方を体でわかっていたような感覚や炎を熱いと感じなかったりしたことに漸く合点がいった。
自分の能力は単に炎をつくるものではない。火の精になるものだった。
火炎と化した身体は軽かった。いつもより何倍も。肉や骨もなく自分の意志が直接身体を動かせる。負ける筈がない。
「まさか、その力は神性をもつもので――」
高速で背後へと回り込む。
「だが炎である限り――」
空間を切断、俺と施設長の間に行き来不可能な隔壁ができる。
速さを活かし、横にずれて炎撃を叩き込む。
「ぐっ……」
相手は一歩引き、慈救呪を展開して数と展開速度で勝ろうとする。
だがそんな脆い守りなどないに等しい。一瞬にして燃やし尽くす。
「貴様ごときにこれを出さなくてはならないとはな」
初めて両手を同時に振るった。幾重にも空間断絶による防壁がつくられる。
だが、空間という概念でさえ、神の前には無意味だった。
炎が空間を焼き尽くす。
「よくも巴をぉぉぉ!」
炎の身体はもう施設長の目の前にあって――
「おまえだけはぁぁぁぁぁ!」
爆発的に火力が上昇する。
「永遠の爆炎!!!!」
決して燃え尽きることのない火の精の火炎が煌く。
地面など容易に貫通し、下の階が見える。
相手は悲鳴をあげる間もなく――――
直ぐにもとの血や肉、骨のある身体にもどる。
「巴!」
急いで駆け寄ろうとするが、傷だらけの身体は言うことをきかない。視界が反転すると共に、巴の姿は視界の外に消えた。
壊れた床の下に落ちていく。
「祐!」
「祐クン!」
がしっ、腕が誰かに捕まれる。
そして自分の背後には足場はない筈なのに後ろから背中を押される。
「兄さん!」
視線の先に巴が映った気がした――――




