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第二十一章 最終決戦

 絶対、施設長は屋上にいる。俺は確信をもって言えた。

 官舎の一番東に位置する螺旋らせん階段を駆け上る。

 少し前、あの施設で過ごした最後の日の前夜、施設長は俺に話した。屋上のことを。

 ――屋上はいい。空には世にありふれたくだらないもの、有象無象がない。そして、そこに一番手が届きやすい場所だ。私はくだらない世界を壊して新しい世界をつくってやる。

 視線の先には屋上への扉。

 恐らく施設長が言っていたことは今回の騒動のことだろう。次の日の夜にともえ火印かいん中佐たちが助けに来ることがわかって戦力を減らさないためのまじない、洗脳。だが俺の記憶が戻ってきていたことによって失敗した。

 当初の予定としては今施設長の前に俺が立つことはなかったはず。だがさっき戦った相手には多分本人の無意識下で俺と戦って屋上を示唆するように仕込まれていたんだろう。

 対応の速さと周到さが頭にくる。絶対に勝利しなければならない作戦だという強い意志が感じ取られる。

「はぁっ……」

 扉の前まで来て少し息を整える。

 扉の横のパネルに手をかざす。

 ピー、と機械音が鳴り、横に開く。

 その先には――

「――施設長」

「きみならわかると思っていたよ。邦坂くにざかゆう二等兵、いや、斎藤さいとう卿人けいと

 後ろで静かに扉が閉まる。

「俺は邦坂祐だ」

「ついこの間までは私の下で斎藤だったものを、人の移り変わりとは早いものだ」

 目を細めて言う。

「移り変わりなんかじゃない。記憶を消しておいて……」

 反論するが――

「御託はいい。目的は同じ筈だ。始めようじゃないか」

「自分から話しておいて随分と自分勝手だな」

「交える言葉などもうないだろう?」

 一呼吸間をおいて言った。

「俺が勝つか――」

 あるいは

「――私が勝つか。さあ始めよう」

 最終決戦。俺はここで終わらせる、施設長は終わらせないための戦いが始まった。

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