8話 初めてのクエスト
忘れた頃に更新です
取り敢えず、簡単なクエストを受けよう。
クエストの紙が張り出されている掲示板の前に向かう。
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《グリフォン討伐》
オレット森林に突如現れ、暴れている
グリフォンを討伐して欲しい。
対象:Bランク以上の冒険者
報酬:230,000ガルヅ
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《ワイバーン討伐》
エルバ渓谷に住み着いたワイバーンを
討伐して欲しい。
対象:Aランク以上の冒険者
報酬:600,000ガルヅ
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《オーガ討伐》
度々、新人冒険者を食い物にしている
オーガを討伐して欲しい。
対象:Dランク以上の冒険者
報酬:110,000ガルヅ
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モンスター、本当に居るんだな。
まぁ、神具もなく、魔法も使えない俺には荷が重いな。
薬草集めとか無いかな?
あ、あった。
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《薬草採集》
回復ポーションを作るための材料、
《薬草》を集めてきて欲しい。
※随時募集
対象:制限無し
報酬:一株につき1,000ガルヅ
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おお、これとか良いんじゃ無いか?
早速受付に行ってクエストを受けた。
………
……
…
どうやら俺が落ちてきた森は、オレット深林という名前らしい。
そこに、薬草が生えているとの事。
道具屋で買ってきたリュックを片手に、森の中を歩き回る。
本来なら迷子になるのを懸念して、下手に動き回るのは危ないのだが、ケータイのナビ機能がある俺に死角は無かった。
「それにしても、薬草見つからねーなー」
受付嬢から貰った、薬草の特徴やイラストの書いた紙を眺めてそう呟いた。
かれこれ、2〜3時間くらい歩き回っている気がする。
心なしか、日も傾いてきた様に感じる。
そこで、受付嬢との会話を思い出した。
『薬草集め…………ですか?』
『え、なんかマズイ?』
『いえ、クエスト自体はかなり簡単な部類に入るのですが…………』
『ですが?』
『見つけるのが少し難しく、運にかなり左右されるので……』
あー、なるほど。
『イサトさんみたいな運が悪い人には、あまりお勧めできないクエストなんですよね』
今なら、あの受付嬢が俺を止めようとしていた理由がわかる。
《薬草採集》舐めていた。
しかし、リュックで金のほとんどを使ってしまったので、手ぶらで帰ると食べ物を買う事ができるかすら怪しい。
………
……
…
すっかり夜です。
虫やフクロウの鳴き声などが聞こえる。
夜の森って危ないよな。
「そろそろ諦めて帰るか…………」
1日くらい何も食わなくても問題無いだろう。
それに自分の命には変えられない。
そう考え、ナビ機能を用いて街に向かう。
すると、もう手遅れだったのか、狼型の魔物に囲まれていた。
「ちょ、嘘だろ?!」
戦える力が無いユキヤにとっては、死と同義の状況だった。
俺オワタ。
魔法でもあったらどうにかなったかもしれない。
でも、あいにく、そんなものは持ち合わせていない。
まぁ、簡単に殺されてやる気は無い。
狼を睨みつけながら、腰からあるものを引き抜き構える。
その焦りもなく、一切の無駄を省いたその動きは、まるで熟練者か達人の様であった。
「ふぅー……」
動き出す前に、深呼吸をする。
そして、その銀色の獲物が、月の光を反射させた…………その時!
ピッポッパッポッピ!
プルルルルル! プルルルル!
『はい、もしもし「助けて下さい!!」
目的の人物、アイリスが電話に出たと同時に話し出した。
『え?! あー、なるほど』
アイリスは、すぐに俺の置かれた状況を理解し、納得した様に声を出した。
「『あー、なるほど』じゃねぇよ! 今狼に集られて死ぬ寸前だよ!」
『戦ったら良いんじゃ無いですか?』
「勝てるわけねぇだろ! 帰宅部の男子高校生舐めんな! 大体、普通の成人男性が勝てるのは中型犬までだ! 狼なんて無理に決まってんだろ!」
どれだけ俺がピンチなのかをアイリスに力説した。
『勝てない事を自慢げに力説しないで下さい。それに、あなたに授けた特典があるでしょう?』
アイリスから貰ったものを思い出す。
そう言えば、7つまで願い事を叶えてくれるって言ってたじゃ無いか!
そもそも、今手に持っているケータイだって、『いつでも願いを言える様に』と言って貰ったものだ。
「なるほど、わかった。一つ目の願いだ!『そっちじゃ無いですよ!!』
願いを言う前に遮られた。
「何だよ!? 今はふざけていられるほど悠長な時間は無いんだよ!」
『私の加護があるでしょう!? ちゃんと運動神経は上昇していますから、逃げる事くらいなら出来ますよ!』
あ、そう言えば、そんな事言ってたな……。
「マジで逃げれるの?」
あんまり変わった様子は無いから、全く自信が無い。
『はい、基礎体力はもちろん、筋力、瞬発力、反射神経、平衡感覚など、どれを取ってもはるかに上昇しているはずです』
女神様のお墨付きを貰った。
その女神がアイリスだから、正直信用できないけど……。
「わかった。ありがとう、試してみるよ」
そう言って、電話を切った。
敵を警戒しつつ、体に力を入れる。
すると、体が軽くなり、周りの動きが遅く感じる様になった。
「すげー、周りの動きが少しゆっくりに見える」
取り敢えず、この場から逃げよう。
もしもの為にダガーを引き抜いておく。
動き出す前に、再び深呼吸をする。
今だ!
何となく、頭の中にその言葉が流れた。
「おらぁあああ! 道を開けろ!!」
町の方向に向かって全力で走り出す。
こちらが動き出したの見て、狼達が動き出す。
他の狼なんて関係無い、進行方向の狼だけに意識を集中させる。
その狼が、噛みつこうと頭を突き出してくる。
すると、頭に倒し方のビジョンが浮かんだ。
その通りに、狼の頭を掴み、首元にダガーを突き刺した。
狼は、その一撃で息を引き取った。
「よし! 取り敢えず1匹!」
倒した狼を、追いかけてきた狼に投げつけ、また駈け出す。
………
……
…
街にだいぶ近付いてきた所で、狼達は追いかけるのをやめ、森に帰って行った。
「はぁ、はぁ、帰宅部の俺にダッシュをさせるとか何のイジメだよ…………」
街の門が見えたところで、力が抜けて座り込んでしまった。
「取り敢えず、《女神の加護》とやらに助けられたな」
今度、アイリスに電話した時にお礼を言おう、そう心に決めた。
「しかし、《女神の加護》は凄いな。身体能力だけでなく、戦闘の補助もしてくれるとは……」
戦闘経験とか無い引きこもりの俺だ。
身体能力が上がっても、戦えるとは思えない。
「まぁ、生きて帰れてよかった!」
生きている喜びを噛み締めつつ、街の門に向かった。
なんか忘れてないか?
ふと、頭に何か引っかかる。
「…………あ! 金無いじゃん!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
金が無い、と頭を抱えている不審者の後を尾行する者2人がいた。
「あれが、空から降ってきた人間だ」
フードを被った老人が指をさす。
「あれが私の監視対象ですか?」
その隣に立つ16〜7歳くらいの少女が老人に尋ねる。
「あぁ、そうだ」
「怪しい行動があったら、速やかに排除します」
そう言いながら、手に持っていた杖を強く握る。
「うむ、お前が善行を積めば、妹の病も良くなるだろう」
老人は満足そうに頷いてそう言った。
実は《合成魔》よりも、こっちの方が大まかな話は出来ているのですが、中々書くことが出来ません……。