7話 登録しよう。Part2
「さっきはお騒がせしました」
再び、受付嬢の元に到着し、声をかけた。
「いえいえ、此方こそ、何かの手違いですよね!」
笑顔で答えてくれる彼女は、全て無かった事にして、流してくれたようだ。
ありがたや。
「それでは、此方に手を」
そう促されるままに、登録石に手をついた。
すると、登録石が青く光り出し、何か文字が浮き出てきた。
やはり、さっきは全く反応してなかったんだな。だって青く光らなかったし。
「どうですか?」
光が収まってきたので、受付嬢に聞いてみる。
正直、自分のステータスや、どんな職業が向いてるのか……興味が尽きない。
「えっと、その〜」
俺のテンションの上がり具合とは打って変わって、受付嬢は微妙な反応を返してきた。
「え? また反応してなかったとか?」
青く光っていたし、そんな事は無いと思うけど、万が一があるし一応聞いて見る。
「ちゃんと反応はしていましたし、ステータスなども出たのですが…………」
歯切れが悪い回答が返ってきた。
「ハッキリ言っちゃってくださいよ」
「わかりました。先ずはステータスの方ですが、基本ステータスは他の人よりは高いです」
いきなりお褒めの言葉をいただいた。
しかし、そこで終わらないのが残酷な現実。
「ステータスは高いんですが、魔力……つまりMPが0なんですよね」
至極言い辛そうな感じで言ってくる受付嬢。
MP0…………そう言えば、アイリスもそんな事言ってたな。
「で、でも、戦士とかなら」
RPGでも、戦士系はあまりMPは多くなく、魔法を使う場面も少ないし、大丈夫だろう。大丈夫であってほしい!(願望)
最後の望みをかけて聞いてみたが、
「無理ですね。戦士職でも、自己の補助系魔法を使うのでMPは必須です」
えっと、魔法職は当然の事、魔法を一番使わなそうな戦士職にもなれないことがわかった。
冒険者人生オワタ。
「あ、でも! 商人や調合屋などは…………」
明らかに落ち込む俺を見て、受付嬢はフォローをしようとするが、そのフォローも途中で言うのをやめていた。
「商人や調合屋などは?」
聞き直してみると、
「その二つの職は、魔力は必要無いんですけど、運の高い人向けでして…………」
あ、察し。
「つまり、俺は運が高く無いから向いてない…と」
「はい、余計な事を言ってすみませんでした」
もう、受付嬢泣きそうになってる。
俺が泣かせたみたいになって、周りの視線が突き刺さる。
「大丈夫! 気にして無いから!!」
………
……
…
なんの職も向いてないという事で、《冒険者》と言う、適当な職に就く事になった。
受付嬢の話によると、
《冒険者》の特徴その1!
まずパーティーには入れない。
何故なら、『魔法も弱く、近接戦闘も弱い、正直戦力外だから』だそうだ。
《冒険者》の特徴その2!
全ての職のスキルを習得できる。
しかし、『職業補正が掛からないから、習得に必要なスキルポイントは膨大な上に、威力が本職の人の足ものにも及ばない』らしい。
《冒険者》の特徴その3!
レベルの上がりが早い。
早いが、ステータスが平均振りなのでひたすらに弱い。
《冒険者》の特徴その4!
以上の理由から、《冒険者》なんて職に就くやつは居ない。
《冒険者》には世知辛い世の中だ。
冒険者ギルドなんて言っておきながら、《冒険者》と言う職に対して、不遇過ぎやしませんかね!?
つか、本当に良いところ無いな。
唯一のメリットである『全ての職のスキルを習得できる』も、『威力が弱い』だの『習得に必要なスキルポイントが多い』などと、
1のメリットに対して、10のデメリットで、相殺どころかマイナスに振り切っている。
お先真っ暗だ。
「それでは、登録料1500ガルヅお願いします」
そう言えば、まだ登録料払ってなかったな事を思い出す。
あれ? ここの通貨の価値とか、俺知らないけど…………これで足りるよな?
ワルドから貰ったお金を取り出して考える。
1000と書いてある紙幣が3枚くらい、100と書いてある硬貨が5枚くらいある。
まあ、足りるだろう。
紙幣1枚と硬貨5枚を受付嬢に渡した。
「はい、丁度ですね。それでは改めまして、イサト ユキヤさん、冒険者ギルドへようこそ! 今後のあなたの活躍を期待しています!」
受付嬢から登録カードを貰った。