2話 旅立ち
タブレットに触れると、画面が輝き出し、魔法陣が現れた。
おお、ファンタジーっぽい!
でも、これタブレット型の意味あるのか?
気にしても仕方が無いし、終わるまで待機。
暫くして、光が止んできた。
「終わったようですね。画面に適正値の高い神具の名前が書いてありますよね? その中の物を一つ貴方に授けましょう」
言われた通り、画面を見てみる。
………うん、真っ白
「如何なさいました?」
唖然としている俺を見て、不思議にも思ったのか、女神が近づいて来た。
「いや、これは壊れてるのか?」
タブレットの画面を女神に見せる。
「……あれ?」
女神がタブレットを操作し、確認する。
「あー、これ、故障ではありませんね」
まさかの返事が返ってきた。
「いや、でも何にも書いてないよ? 馬鹿には見えない文字とか?」
「そういう訳ではありませんよ。
えっと、大変言い辛いのですが…貴方に適性のある神具が無いそうです……ププッ」
とても、言い辛そうには思えないくらい、あっさりと言ってくる。
つか、最後、堪えきれなって笑っちゃってんじゃねーか。
「ふふ、こんな事は今までなかったんですけどね……ふふっ」
つか、もう笑いを我慢する意思を感じられない。
俺の女神への信仰度は地面を突き抜けて行った。
「あ、どうやら、魔法も使えないっぽいですよ。MP0です。」
「え、神具だけでなく、魔法まで使えないの!?」
「ふふ、ええ……そう……なります……ね」
それじゃあ、俺はファンタジーの世界に何しに行くんだよ!
つか、声震えてるし……笑うのやめろ!
「あ、でもこのままだとさすがに可哀想ですね! 今回は特別です! 貴方の願い事を7つ叶えてあげましょう」
そう言って、手の上の魔方陣から何か出し、手渡してくる。
渡された物は、ケータイだった。
しかも、スマホじゃなくてガラケー……。
「何これ?」
「何って……ケータイですよ? あ、もしかして、ガラケーはケータイじゃ無いと言い張る派閥の人ですか?」
女神が訳がわからない力説を始める。
「いや、そんな事わかってる、つかそんな派閥聞いたこと無いんだけど……」
「ガラケーも立派なケータイです! これでいつでも願い事が言えると言う親切設計です。感謝して下さい」
ドヤ顔でそんなことを言ってくる女神。
「あ、ありがとうございます」
「どういたしまして」
………え?
「あの? これだけ?」
「不満ですか?」
「まぁ、ガラケー渡されて、さぁ異世界に出発だ! なんて聞いたこと無いし……」
伝説の武器じゃなくて、ケータイって……絶対おかしい
「凄くないですか? 7つも願い事が叶うんですよ? 7つのボールを集めて、やっと願いを1つ叶えてもらえる世界もあるんですよ?」
いや、確かにそう考えると凄いけど!、本場でも3つしか叶えてもらえないし!
「でも、願い事じゃ、戦えなくね?!」
「それもそうですね。それでは私の加護を与えましょう! 身体能力が強化されます! しかも【鑑定】スキル引っかからないおまけ付き!」
おまけ要らねぇえ!!
つか、何この女神さっきからテンションがうざい。
「さぁ、部屋の中心の魔法陣の上に立って下さい」
言われるがままに、移動する。
女神が何か呪文を唱えると、魔法陣が光りだした。
「それでは、貴方の二度目の人生に幸があらんことを」
なんか決め台詞を言って送り出してくる。
そう言えば、
「身体強化だけで、魔王とか倒せるの?」
そんなに強化された感じはしないし、とても魔王やドラゴンになんて勝てるとは思えない。
「無理ですよ?」
即答だった。
「え?」
「魔王どころか、その辺の魔物を倒すのがやっとです」
最後の最後で爆弾発言をしてきやがった。
「ちょ、ふざけんな! 転移やめろ!」
女神を止めるために、魔法陣から出ようとする。
「あ、今動いちゃいけません! 座標が、座標が!!」
女神に掴みかかろうとした俺の手は、宙を切った。




