真相
夢の設定と同じで、テオはわたしの叔父だった。
偶然で片付けられないほどの類似点の多さ。奇妙としかいいようがない。
テオが語ってくれたところによると、ある時期からロシュミット様が頻繁に接触をはかってきて不気味だったらしい。
狡猾で抜け目のないタヌキジジイ(テオ談)であるロシュミット様が、すでに騎士団を退いて隠遁生活を送っている自分にいまさらなんの用だといぶかしく思っていた矢先、今回の湯治話が持ち上がった。
最初は話に乗る気などさらさらなかったけれど、あまりのしつこさに折れ、一緒にやって来た。
やって来たらきたで、自分たちのお気に入りの客室係を執拗にすすめるものだから、これはなにかあるなと勘ぐる。
「だが、おまえをひと目みて、もうどうでもよくなったよ。なにかウラがあったとしても構わなかった」
ひとを好きになるのに、時間とか人種とか立場とか年齢とか、まったく関係のないことに気付かされたよ。
でも、関わらないと決めた。
親しくなっても、この場限りで先はない。この想いを、恋にしてはいけない。
おれは、もう、だれかとつながることをやめたのだから。
なのになぜか、ついつい声をかけてしまった。
客室係の少女の顔が赤くなり、これは絶対体調不良からだと本気で心配し、いてもたってもいられなくなってしまい思わず抱きしめたら、頭のなかでなにかが弾けた。
もう、開き直るしかない。
そうしたら彼女もおれと同じ気持ちだった。
そして、名前をきき、目の前の少女が、かつて自分が探しても探しても見つけることができなかった姪だと判明した。
「テオはバルタザルの禍根を断ってくれた功労者だ。彼が喜びそうな褒美を、と考えていたら、ノアザ、おぬしを見つけた」
ロシュミット様は自分たちの世話をする客室係の身辺調査をした。身元が明らかでないものや不審者にその身をまかせられるはずがないから。
その結果。
わたしの父とテオの亡くなった奥さんが兄妹とわかり、以前テオがわたしを探していたことを思い出したのだという。
「もっと早くおぬしたちが打ち解けてくれるものと思っていたよ。毎日やきもきしていた。いっそこちらからバラしてやろうかとも考えたこともある」
このチャンスを逃せば、わたしとテオはまたバラバラになり、多分、もう二度とふたりの線が交わることはない。
「テオから話しかけるかどうかは賭けだった。なんせ王女からの求婚を断るくらいの朴念仁だからな」
はははと快活に笑い飛ばしたため、きき逃しそうになったけれど、ロシュミット様はいま、さらっととんでもないことをおっしゃった。
王女さまからの、求婚!?
「だがまさか、恋愛に発展するとは! いやはや、ひとの気持ちとは計り知れん」
わたしもいまでも信じられないでいる。
きっかけは、夢。
でも、いまのこの気持ちは現実。
これからわたしたちがどうなるかはわからない。
物語はまだまだ始まったばかり。
もし、ノアザの伯母さんがいいひとだったら? という思いつきで書きました。
楽しんでいただけたら幸いです。