-光-
-そして、現在。時刻は不明。
そこは見渡す限りの闇だった。
物音もなく、静寂で真っ暗な空間。
自身の体制ですら恐らく寝そべっているのだろうぐらいしか掴めない状態。
増してや、浮いてるのか沈んでいるのかもあやふやなのである。
ただ、睡魔がひどく、意識が朦朧とする。
ここがどこなのか、どうやってここに居るのか、考えようにも睡魔が邪魔してすぐに諦めてしまう。
とにかく、眠い…。
だが、つい先程より現れた頭上の微かな光りが閉じかかっていた意識をなんとかつなぎ止めた。
一切の闇に唯一灯った色彩は、どこか暖かさを感じさせからだろう。
体を動かすのはこの上なく億劫だったのだが、右腕を光の方へ伸ばしてみる。
伸ばしてみると、遥か頭上の手の届かない場所だと思われた光は、意外にもどうにか届きそうな位置であることが分かった。
だが、更に手を伸ばしてみても、あともう少しのところで届かない。
睡魔よりも光が気になって一生懸命手を伸ばすが、やはり体は少しずつ闇の底へと沈んでいるのか、どんどん光との距離が離れて行く。
当初、心地よかった闇はここにきて言い知れぬ恐怖心を煽り、光が届かなくなってしまうと焦りに変わる。
手に届く位置にあるうちになんとか掴まないと。なんとか…。
眠気のせいなのか、右腕以外はまるで金縛りのように動かなかったのだが、渾身の力を振り絞ってどうにか上半身を起こすと、ここぞとばかりに最大限に手を伸ばす。
だが、それでもまだほんの少し届かない。
あとほんの数センチ…。
届け、届け、届け…、祈りを込めて何度も手を伸ばし続けた…。