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エピローグ


「「行かなきゃ…だめ?」」


「だめです」


 孝太の差し出すチケットに、美奈子はため息をついた。


 彼のベルトを賭けた、初めての防衛戦。


 その、リングサイドのチケットだ。


 ボクシングなんて、見たことがない。


 孝太がやっていなければ、一生無縁だっただろうスポーツ。


 しかも、孝太が誰かと殴りあうところを、ずっと見ていなければならないのである。


 とても。


 とても、耐えられそうになかった。


 スポーツだと、頭では分かっていても、殴り合いなのだ。


「美奈子さんが来てくれなくても、オレは絶対に勝ちます…でも、美奈子さんが来てくれたら、絶対の絶対に勝ちます」


 そんなことを言われたら、行かなければならないではないか。


 最後まで、ちゃんと見ていられる自信がない。


 しかも。


「「誰も知ってる人もいないし…」」


 ぽつりと呟くと。


 えっと、孝太が驚いた声をあげた。


「いるじゃないっすか」


 満面の笑み。


「え?」


「オレ」


 自分の顔を自分で指差し、孝太は満足そうに笑う。


 出た、孝太理論。


 これが出てくると、美奈子は途端に叶わなくなってしまうのだ。


「「ちょっと目をそらしても…許してね」」


 ため息をつきながら、彼女は観念した。


「ダメです。ちゃんとオレを見ててください。これが、オレの仕事ですから」


 KO孝太という異名は、まさに見事としか言いようがない。


 美奈子を簡単にロープ際まで追い詰めて、フルボッコにしてしまうのだから。


 何で、この子はプロボクサーだったんだろう。


 美奈子は、こんな嬉しいんだか苦しいんだか分からない痛みを、これから何度も味わうことになるのだ。


 とりあえずは。


「へへ…美奈子さん」


 彼の腕に抱きしめられるという、嬉しい痛みを味わわされることになったのだった。








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