すけど
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「真治さん…女性と一緒に住むって、どうやったら出来ますかね」
今日の先輩は──ゼロコーラを吹いてくれた。
ぶふぁあっと。
「ごほごほっ…孝太…てんめ」
むせすぎて、真治はしばらく話が出来そうになかった。
欲というものは、次々と大きくなっていく。
一度、その味を知ってしまったら、離れられなくなっていくのだ。
「1、同棲。2、結婚。以上だ!」
まだげほげほ言いながらも、真治は簡潔な返事をくれる。
おお。
さすがは、先輩だ。
的確な話だった。
「結婚かぁ…」
孝太は、あっさり迷いもなく2番を選択する。
美奈子さんと結婚。
そんな、妄想の翼を広げようとした時。
「まて孝太…その女と付き合って、どれくらいだ?」
真治に妄想は打ち壊された。
付き合って。
知り合ってなら1年くらいだろうか。
付き合ってなら。
「ええと…こないだチャンピオンになってからだから…いち…」
折り曲げる指は、1本でよかった。
1ヶ月くらい、だったわけだ。
「付き合って、1ヶ月でプロポーズするアホウがどこにおる!」
たわけがああ。
飛んでくる蹴りを、ひょいとかわす。
「いやでも…オレ、美奈子さんと一緒にいたいんすけど」
「ちったあ、青春を楽しめよ、フライ級チャンプなんだぞお前。女なんか、よりどりみどりだろうが」
あああ、オレがお前なら、いまごろぉぉぉ。
真治は、天井に向かって何かを叫び始める。
でもオレ。
美奈子さんがいいんすけど。
まだ、早いのかあ。
孝太は、腕を組んで考え込んだのだった。