「えーっと●……●……●、●……●、●っと」
パソコンの電源を入れ、椅子を引き腰を掛ける。
ネックストラップを首から外し下げていた携帯電話を机の上の充電器へ差し込み充電を開始する。
ついでに首筋を揉んだり肩をまわすなどして体のこりをなだめると、引き出しの中から目薬とドリンク剤を取り出しそれぞれ服用した。
何だかこれから残業に臨むキャリアウーマンかサラリーマンのようだが、似たようなものだから仕方がない。
携帯電話にパソコンにドリンク剤。いわゆる文明の利器であるため、巫女が使うなど、と眉をひそめる方もいるだろう。
事実ドリンク剤はともかく他の2つにおいてはその通りとしか答えようがない。
だが残念なことにこの便利さには代えられないもの。
「えーっと●……●……●、●……●、●っと」
なのでこのようにたとえ雨だれも驚くような早さとはいえ手書きよりは遥かにはかどると割り切ってパスワードを入力し、例の起動音が鳴るのを待っている次第なのである。
「こんなことなら途中で投げ出さないで、ちゃんとお習字、励めば良かった……」
事務書類は手書き禁止
ただし達筆な場合を除く
……目の前の柱に大きく貼ってある書道家の作かと思わせるような注意書きの見事な筆使いとその内容に頭を抱えながら。