それが仕事なのだから
さて、来客や数少ない本家の者が出入りする正門からなぞ到底入れない私が、通用門へ到着すると、そこはすでにごった返していた。
巫女以外の人間たちと……人間以外の存在たちで。
中には実体がなく、時代がかった服装や、透き通っているものたちも居て、豊富な取り合わせといってもいいだろう。
……いつもの話だが。
しかしそんな風に若干腰が引いている私でも、巫女の地位は高い。
よって私の存在に気が付くと、彼らはすっと「道」を開き、次々に頭が下げていった。
「おはようございます」
「ごきげんよう」
「本日も早う御座いますな」
あちこちから声が掛けられる。まるでこだまか、潮騒のように。
そんな声へ言葉を返し、相槌も打ち、礼を失わないよう気をつけもして、私は通用門を抜けていった。
こんな時、自分の立場がわからなくなる。
一族において、巫女は屋台骨のような存在だ。なくてはならないものだと教えられ、周囲からそう扱われる。
そんな生活が続くせいか、最近の巫女たちは、特に若い巫女たちは、選民意識のようなものが強い気がする。
それが気になって、通用門の辺りを見回してみると、私の直感は当たっていた。
通用門にいるものたちの数が、あまりにも多すぎる。
いや、以前も確かに多くはあった。けれど探せば、ぽつぽついたのだ。
自分の仕事なのだからと、側近や世話係にまかせきりにせず、一人で勤めに来る者も。
……まあ、どこかのお使い番組みたいに、影からその手のものたちが、気を揉みながら見守っていたりしたのだけれど。
それでも探せば、居ることは居た。けれど、今は……。
私はそこまで考えて頭を振った。上申する機会もないというのに、組織のことまで考えてなどいられない。
何より、下っぱの私からしてみれば、雲の上といえる人間たちが、頭を働かせているはずなのだ。
だって、それが仕事なのだから。
胸の内に沸いた疑念を封じ込めると、私は靴の泥を落とした。
本邸の入り口から中に入る。自分の職場へは、もう少しだった。