「いっただっきまーす」
自室のドアの前には案の定、食品宅配用の保温箱が置かれていた。
私の朝食。待ちに待った瞬間に顔がほころぶ。
「たっだいまー」
この喜びの前にして、ただいまも何も屋上から戻ってきただけじゃないか、という突っ込みさえ出しはしない。
いそいそと鍵を開け、テーブルの前へ直行し、保温箱の蓋を開く。
中にはおかず用のお弁当箱とご飯用のお弁当箱。そして汁物用のポットがきちんと並んでいた。
心が弾む。わくわくしながら手を差し込むと、十分過ぎるほどあたたかかった。
毎度のことながらこのあたたかみといったら……!!
実家暮らしの方にはわからないかもしれないが、独身単身世帯において、平日の朝に出来立ての朝食が並ぶことに勝る至福はないと思う。
浮き立つ心のまま手を洗い、保冷箱から出した朝食にお箸を並べると、
「いっただっきまーす」
と声を掛け、さっそく私は手をつけた。
中身は巫女のために作られた正真正銘の精進料理。
すなわち野菜やお豆を主体とした、肉好きには酷な献立といえなくもない。
しかし、一度食べたらもう離れられないといわれるほど、美味しすぎるんだな、これが。
「あー、しあわせ……」
こうして朝から気力も充実させた私は再度歯を磨き、支度を整え、部屋を後にしたのだった。