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ああ、下がっていく階数表示の速度が憎い
来た時とは逆の順をたどり最上階を後にした私は、自室へ戻るべくエレベーターへ乗りこんだ。
禊という巫女としての支度は済んだが、私自身の支度がまるで出来ていなかったからだ。
いかにこの地域が一族の人間で占められていようと、わかる人間にはすぐにわかる清めた気を纏おうと、世間体というものが存在する以上、寝巻き姿にすっぴんで外を歩くわけにはいかない。
何より私はまだ朝食を取っていない。お腹の虫も絶叫寸前。それに気が付いた時には私の機嫌も急降下していた。
ああ、下がっていく階数表示の速度が憎い。
もっと早くならないものか。
ふっくらと炊き上がった玄米ご飯が、私の箸を待っているというのに。
絶妙な塩加減のお漬け物も、暖かいお味噌汁も、私が帰ってくることを待ちわびているはずなのに!!
すっかり空腹感に乗っ取られた私が焦りながら階数表示を見ていると、次第に私の階数へと近づいて行って--。
行きと同じ開閉音がフロアに鳴り渡った瞬間、私は自室へ戻るべく猛然と飛び出して行ったのだった。