妖精姫アリシア
アビッソ王国ラファガ侯爵家ディストピア領パーティー会場
現在、きらびやかな服を着た30人前後の男女が薄っぺらい微笑みを浮かべながら互いの弱みを握るために言葉のナイフを投げ続けていた。
そんな中で、ひときわ目立つ少女がいた。
彼女の名はアリシア。社交界ではエージェルト家の妖精姫と呼ばれるほどに聡明で美しい少女だ。
同時に、名ばかりの公爵家となったエージェルト家の体裁が保たれている理由の一つだった。
しかし、貴族が彼女を妖精姫と呼んでお茶会の話題や酒のおともにしている本当の理由は、名ばかりでいかにも消えそうな公爵家という地位に必死にしがみついているすぐに手折るそうな妖精という意味から使われている。
いくら落ちぶれたとはいえ三大公爵家の一つだ。既成事実を作って婿入りを目論む家督の継げない貴族の令息が夢見る理由もわからなくはないのだが、自分の年齢と見た目とスキルが釣り合っているか考えてから求婚しろ。12歳の少女にいいよっている40代の男ってなんだよ。
(アリシア視点)
「あら、ティエラ侯爵令嬢、久しぶりですね。」
「アリシア様、お久しゅうございます。」
こんなものは社交辞令の一環に過ぎない。
しかし同じ位の家である場合のみだ。
私の家は没落寸前とはいえ、公爵家、一つしたの侯爵家であるティエラ侯爵家はどんなに力を持っていても階級には勝てない。
侯爵家の人間が公爵家の人間に許可なしに名前呼びするなんてするのはあってはならないことだ。
現に私はティエラ侯爵令嬢に名前で読んでいいといった記憶など微塵にもない。
これは挑発だ。没落寸前であるエージェルト公爵家に対する。
きっと、ティエラ侯爵家は公爵家へ昇爵を望んでいるのでしょうね。
この国では貴族の家の数がそれぞれ位ごとに決まっているため昇爵するには、上の位に空きが出来たときのみ。
公爵家の枠は3家まで。
そして、三大公爵家で一番落ちぶれているのが、私の家、エージェルト公爵家だ。
つまり、私を名前呼びしているということは貴方が私を見下しているのもあと僅かよ。ねえ、没落寸前の公爵家の座にしがみつく惨めな妖精さん。
という意味だ。
気持ち悪い。もう、この国は公爵家と同じくいつ倒れてもおかしくない。
「ティエラ侯爵令嬢。私は貴方に名前呼びを許可した覚えはなくてよ。間違えてしまったならしょうがないわ。でも、私は公爵令嬢よ。勘違いしないでちょうだい。では、ごきげんよう。」
ティエラ侯爵令嬢と別れると、
「ゼン。馬車を出して、不愉快な気分になったので御暇するわ。」
「了解しました。お嬢様。」
無言で馬車に乗ると馬車はゆっくりと動き出す。
窓から見える景色は、一切緑が見えず、荒れた農地があるだけだった。
あそこにどれだけのものが埋まっているのだろうか。
ここがカタストローフェだったらいくらでも確かめられたのにな。
ああ、お腹すいたな。
帰ったらスラムにでも行くか。




