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プロローグ

 今この平凡な町並みを眺めていると、たった数百年前に大量虐殺があったとは思えなかった。


 約数百年前、この土地はアビッソ王国カタストローフェ領の都市ツァシュトレーンとい呼ばれる大陸きっての都市の一つだったらしい。

同時に、「狂楽の妖精女王の破壊行進」といわれた戦争のきっかけが生まれた場所でもあった。


その戦争はたった一人の狂った少女が巻き起こした。


少女の名をアリシア・フローラ・エージェルト


別称 食人の妖精姫


彼女の名は学者でも名前を出すほどを躊躇するほどである。

数百年たった今でも彼女が歴史に残した爪痕は深く残忍だった。


人という生物の限界をゆうに超えるほどに狂っており、彼女の足跡を追うことは人間という存在の禁忌に触れることに等しいからだ。

現に、彼女の足跡を追った者は見るにたえない姿で、わけのわからない言葉で喚き散らしながら、もがき苦しんで死んでいったのだからしょうがないといえばしょうがないのであろう。


彼女について書かれた貴重な文献は、どれも彼女の恐ろしさを綴ったものばかりだった。


ある文献は、全身が泥だらけになっても大怪我を負っても人を食べ続ける悪魔と書かれ


ある文献では、近親婚が産んだ化物と書かれ


他の文献では、人類史上最悪の汚点と書かれていた。



しかし、僕はそう思わない。

彼女こそが被害者だったのではないかと。

僕は思う。

彼女がこの戦争前に表立った食人に走らなかったのは何故だろうか?


戦争というものはいくら善良な人間でも無慈悲な冷酷な人間に変えてしまう劇薬である。

もしかしたら、愛する者が息絶えて行くところを見て、一緒になればさみしくないと思って食人に走ったのだろうか?

それとも、愛する者が殺されたからなのだろうか?


ともかく、僕は彼女という存在がどのようにして死んだのか、何故食人という行動に走ったのか知りたい。

けれど、いくら考察しても僕は、彼女の存在を一欠片も手に入れられない。


いつか、手に入れられること願っている。



僕という次の災厄の手助けとして。






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