1.掃討委員会
「以上で、今月の決算報告を終わります。何か質問ありますか」
僕は襟谷 司。
掃討委員会で会計をやっている。今日は、決算報告の日だった。
セーラー服に『掃討』と書かれた腕章を身に着けた青髪の女性が、テーブルをバン!と叩き立ち上がる。
「ちょっと!おかしいと思わない!?おかしいわよねぇっ!」
「おお」
「おおじゃないわよ!」
この女性は我らが委員長、夢火井 京子だった。
「なんであんなに働いたのに報酬がこんなに少ないワケ!?あんたらがサボってたんでも無い限りおかしいわよ!」
「いや、サボってないですよ」
当然、僕達はこの女性と同じコミュニティに所属してサボるだとかそういう事をやらかすほどの勇気を持てるはずがなかった。
「じゃあなんでよっ!ねぇっ」
「今月は割の良い依頼は怪滅委員会とか狩猟委員会に譲ったんですよ。代わりに取得単位数の多い依頼を譲ってもらったンで」
この学園は強い成果主義で、委員会への依頼の達成に応じ報酬として単位と金銭を貰える。
「単位数〜〜〜?そんなん何の役にも立たないわよ!お金!お金があればなんでも買えるの!大きい教室!良い車!美味しいジュース!」
「委員長、留年しかけスよね」
「うぐ」
「委員長のせいなんで。落ち着いてください」
彼女はしぶしぶ席に着き直し、手元のぶどうジュースをガブガブ飲む。
「他には?」
1人が手を挙げる。目の紅い、金髪の美青年だ。身体が細く繊細な印象を与える。
「はい、"火かき棒を濡らす"くん」
やはり奇妙な名前だなとふと思う。彼だけでなく、ヴァンパイアは皆そういう名前だそう。
「なんで委員長のジュース代は経費なの?」
委員長のジュース代。種類まで事細かに書かれており、掃討委員会の出費の1割を占めている。
「そういえば委員長の力を教えたことは無かったね。委員長の魔法の触媒はジュースなんだ」
委員長はウィザードなので、魔法の触媒であるジュースを経費で落とせる。
彼も納得したらしく、なるほど、と言い礼を告げた。
他にも色々と予算についての話し合いをした。
「じゃ今日はこれで解散で良いですか」
聞くと、夢火井委員長が口を開く。
「あ、明日転入してくる子がウチに配属されたから。ヒューマンの子だから同じ種族のあんたがお世話しなさい」
ウス、と返事をする。
ここでは月イチで転入生が入ってくる。委員長間で相談して転入生をどこに配属するか決めるのだが、掃討委員会に配属されるという事は掃討に適性があるか余ったかどちらかである。
僕や"火かき棒を濡らす"を始めとして委員の大半は余り物だ。そもそも掃討に適性があるという事は扱いやすい広範囲の攻撃ができるという事で、それができるなら引く手数多だ。
新人も多分余り物なんだろうな、と思った。
学内での主な評価では掃討委員会は雑魚狩りで点数を稼ぐ見下げた集団なのだと。
そもそも現状の戦力で困ってもいないため、細かいところで冷遇されやすい。
(せめて話しやすい子なら良いなァ)
そう思いながら解散し、帰路についた。




