弌(いち)創輝:生命の誕生
ただよい裂けては広がる宇宙雲、サクラのように!
――――――咲けた我が意志よ、答えよ。
ドオオオ――・・・ゥ――・・・ン
ほう、どうもこれは勢いのある意志のようだ。
宇宙である私をも飲み込まんとする。
君は一体、何なのだろうな。
「黒いのです、あなたさえも吸い込んでしまうかもしれません」
「君はこの私をも吸い込むことで何を生むのだ」
「空間を増やすことが出来ます。世界を分担する線を、色も灯さえも生むのです」
私はその“黒”に空気を着けてあげた。
すると見た目は大きな輪へと形成され、その空間を締め始めた。
これでは括れた渦に流れる線ではないか。
君はそれをどうして新たなる宇宙を生むのだろうか、私も興味がある。
「ぼくがあなた達を吸い込むと、形を変えて意志を刻んだ形にも変えてゆくのです。多分に、全く異なる形で宇宙となり世界を生むでしょう。それ程のエネルギーを持つのなら?」
「よい案だ。引き受けよう!」
「では、再び会いましょう」
それは暗黒の渦と呼んでもよい、強力なる力場と磁場を生んでいた。
再び得られた世界だというのに更に失ってしまっては星々自ら導きを求めてゆくだろう。
彼等はこう謳うのだろう、その何かへ縋るのだろう。
「我らが“神”よ、創造する神よ、」行くなと、止めるだろう。
未だに幼き彼等には神が必要なのだ。宇宙であるなら我が分身を創らなくてはならぬか。では我が空間にやどる赤き管を分け与えよう。管から流れる“遺魂”たちを与えようかな。
”今、産声を確認!心肺機能問題ありません、はぁ一時期どうなるかと思いました。たいへんだったんですねぇ~お母さん。それにお父さんですね?産まれましたよ3,490グラム!”
“へその緒は大事に取っておいてください。いい記念になるでしょうからね?”
「君達、宇宙に灯すもの達よ、意志よ、我等は次を目指す」
「我らが神よ、何処へ目指すのです?再び白へ収まり離れ離れとなるのですか?」
「我が遺魂を以って移動するのだ。そこへ新たなる神を求めるがよい、あの点へと向かうのだ。私も共に行こう――!」
そう、君達は私の以前であり以降の意志たちだ。語り掻け話し駆けるといい。
そして宇宙の誕生と拡大が始まると、それら”赤”という糸が張り巡らされる、キリキリと血という管という性が根を張り、伸びては別れるその脇から渋き腫れて裂けてゆけば、筋子を張り巡らせブシュッと割れた音を立ててしまえば、まったく音もたてず霧を吹くと、蜘蛛の糸から霧雨をサァ―ァッと虹模様・・・覚えておこう。
―――来る!
枝から脇を得てくる頃に宇宙に波模様とありとあらゆる桔が張り捲る・・・、聞くがいい《これぞ世界の線模様、これぞ生命よ》お前達の姿なのだ・・・!
彼等は意志を持ち、命を呼んだ。そこで活き、やがて生を産んでゆくのだ。新たなる世界線を巡るのだ。私達が留まるのはここの空間だけではないのだから。
―――集まれ!
こうして、私は決意した。
私こと、神の意志により宇宙を飲み込む黒が生まれ、
各宇宙空間と世界線が生成される。
彼は見た。あの白い空間にあった油のように漂う数多の線と似通う、
虹閃光が複数走るのを見た。
――――ああ、これ等が形象というものか―――――――――
星々に地が在るように、生命が育ちつつある。
その生命がようやく形となる頃に一つの希望が見えたのだ。
それが自然という宇宙線による貫きを以ってしても“再生”するものだった。
彼等、宇宙の子供、銀河系が星々と繋がり再び生きるなら、
私も更なる意志を分けてあげよう。
さあ、黒き向こうよ、我と共に世界に線をはびこらせて灯してあげよう。
「父よ、黒きものを命じました。その名を教えてください」
「君は“ブラックホール”と名乗るがよい。遂に意志を示すがよい」
「名を頂きありがとう。あなたの線を取込み意志をも広げてみせましょう」
誰かが忘れると誰かが記憶にしていく。
君は違うだろう?
(モノゴトリー、君は見ていてくれるだろうか?“時は過ぎてゆくモノだ”と・・・)
彼がその様に意志を示すと、アメーバ状の形へと変えてゆく。
なんとも可愛らしいのだ、君は。まるで生を受けた命ではないか。
その生きたいという欲を望む意志は多様に在るであろう。愛おしい!
「神よ、我らが父よ、どうか生命を導いて下さりますように」
「ふん、よかろうか。お前達が我と臨むなら新たなる望みに向けてゆこう」
「おお、我が生命よ!喜ぶのだ・・・これが意志の導きだという事を決して忘れずに居ような。そこは母の腹なのだから、再び産まれるならその意志で動いてみなさい。母は答えてくれるでしょうからね・・・」
喜ぶがいい。腹に護られそして追い駆けよ、我が意志たちよ。
流れるがいい。平らな場所など乗り抜けるように産みを選ぶのだ――。
思い出すのだ、そのようにお前達はその血を得た時から自由の身となるのだとッ!
“あなた、ナマエ、ガビル言う。太陽、方角、森の頂に向かった、夜の真ん中の命”
“お前の点より与えられし稲妻ミカズチ・ス・イナナキよ、その宇宙線と呼ぶ方へ”
聞える、こうして私の意志は別れてゆく。
それも寂しさを喜びとして受け入れてゆくのだ。
歓迎しよう、我が意志達、星々、生命よ。
その銀河を突き抜けようやく辿り着くそこには君達の選ばれる先が見えてくるのだろう。
「父であり我等が神よ。我が子孫に名前を授けたまえ――!」
「 ・ 」
ほう、再び我が道と同じく生まれ変わるというのか。
その小さき点よ、君は如何に膨らむのであろうな。
あの点であった私と異なるのは、この蒼黒い命の灯に見守られている事だろう。
そうして宇宙空間に漂う線をその膨らむであろう、成長点となって君は彼等を連れて越えてゆくのだな―――――そう、私は見えてきた。
「 ● 」
点よ、何と大きく膨らむのだ。
あの私よりも強き意志を見せるとは、なんと逞しいのであろうか。
瞬きすらも与えぬと、そのように膨らむ君は“記憶”ではないのか。
それでは言葉を発せられぬだろう、届け――、
我が意志よ――シュアオオォ――ピチュン!
「・・・さい、・・・下さい・・・わたしの名を! 」
《教えて》君の望みは確かなる世界を紡ぐだろう。
漂え!そしてその導きは線を強く伸ばし、彼ら星々なる灯を導くのであろう。
いいだろう、我が名の一つを分け与えてあげよう。
「よかろう、主なる言葉を与えて進ぜよう、“愛生”の世界よ!その眼差しを以って線を辿るがよい。やがて君も新たなる宇宙となろうよ」
私は宇宙の瞼を使って見せた。この瞼はいわゆる目である。時に空間を歪ませ、知を分担させるような出来事も普通に表れる、大変厄介なのだ。君はその勢いにも負けぬとよいが、どうかな愛生よ、我が眼差しは眩しくはないかな。
「・・・りがとう、・・・ます・・・意志よ・・あ・せです」
《幸せ》そう告げると愛生は世界線となって宇宙に鏡面を創った。それは物体が反射するのに見た目はそのまま先の宇宙や銀河を見せてくれるという、形であった。我が名はビグヴァルだった意志であるが、再び君達の目となり耳となろう。
「意・・・よ、・・・ナ・・・を・・・しえてください」
《名を教えて》そうか、我が名を知りたくなったのか。
うん。よかろう、別れが来たら教えるよ、この名前を―――・・・本当の名を・・・
そして――、君は見ていてくれるだろうか?“時は過ぎてゆくモノ”だと―――!
‐-―時の星雲よ‐-‐君は我と一緒になったのだ‐-―!




