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[全10話] 毒々独々。毒に始まり毒に終わるある毒術士の孤独で控えめな日々  作者: 安ころもっち


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毒々独々 08


 エリーゼにたたき起こされたダーク。


「そっとしておいてほしい」

 まだ混乱から覚めぬ中、辛うじてそう返答する。


「そうか!そうだよな!陛下に命じられているが、それに従う理由はない!」

「騎士団なんだし理由はあるのでは?」

 テンションの高いエリーゼに、ついそう返してしまうダーク。


「大丈夫だ!幸いここは2人で暮らすには十分な広さ!さあダーク君!ここで一緒に、お姉さんと愛を育もう!」

 その言葉に返答を避けるダーク。


 ご満悦なエリーゼに抱きしめられていたダーク。

 少しに匂うな。と失礼なことを考えていた。自身は定期的に泉で体を洗っていた。エリーゼは必死に俺を追ってきたのだろう。そう思うと鬱陶しさの中にほんの僅かだが申し訳なかったなという気持ちが芽生えた。


「陛下の命令に逆らって、エリーゼさんは大丈夫なんですか?」

「それは大丈夫だ!ダーク君の気にすることでは無いぞ?これはお姉さんの問題だ!騎士を辞めたとして、生活には困らない自信があるから心配しなくて良いぞ!」

 その返答に鬱陶しさが増したダーク。


 これ以上は責任持てないと感じたダークは、仕方なしに皇帝陛下の命に従い、帝都まで赴くことを決めた。


「本当に良いのか?お姉さん、ダーク君を養うぐらいの解消はあるんだぞ?」

 そう言うエリーゼの話はほぼ無視をしていたダーク。


 いざとなればその場で全員を無効化して逃げれば良いだろう。圧倒的な力を見せればもう追っ手を出そうなど思わないかな?そんなことを考えていた。


 第一、皇帝陛下は好奇心から自分を見てみたいと思っているのだろう。その程度ならば一度見たらきっと満足し、興味をなくす可能性だってある。それならば、逃げる必要もないのだ。

 その後はまたひっとりと平穏に暮らせば良いだけだ。


 そんなことをぐるぐると考えていたダーク。



 薄暗くなってきたこともあり、渋々ながらエリーゼと一夜を過ごすダーク。抱き枕替りにされたダークは翌日、寝ぼけながらも帝都に向け出発した。


 愛馬に跨り失踪するエリーゼ。

 そのエリーゼはダークを後ろから抱きかかえるようにしまがら、巧みに馬を操り爆走させいた。


 昨夜は泉で数日ぶりの水浴びをして身綺麗にしたエリーゼは、ダークを何度も抱きしめながら、自身の匂いを擦り付けていた。


 マーキングかな?それにしても同じ石鹸を使ったはずなのに良い匂いが……。馬に揺られるダークはそんなことを考えていたとか、いなかったとか。


 山を迂回して移動する道中で、2度ほど安宿泊し、やっとのことで帝都までたどり着いたのは出発から5日後のことだった。


 当然ながらすぐに謁見することはできず、報告がてら騎士団の詰所に寄った2人。結局は謁見までの間、ここに滞在することになった。


 逃亡防止の為なのか。またもエリーゼと同衾して眠ることになるダーク。

 逃げる気は無かったダークも、この状況に逃げ出したくなってしまう。だが逃げればまた同じことの繰り返し、そう考えてこの現状に黙って耐えていた。


 2人が謁見ができると言われたのはそれから3日後のことだった。




「それでは、午後には謁見できますのでお呼びするまでお待ちください」

 案内の女性にそう言われ高そうなソファに腰かけるダーク。


 すぐさま隣に座ったエリーゼに肩を抱かれ頭を撫でられる。抵抗しても結局聞き入れられないことが分かっているダークはそれを受け入れていた。

 午後になり、エリーゼに成すがままにされていたダークの元に案内と思われる男性がやってきた。その男性は2人を訝しげに見た後、舌打ちをしながらも皇帝陛下の元へと案内をした。




 謁見する為に案内された部屋のドアを開ける。

 そこでダークは懐かしい顔を見ることになる。


「ダークよ、久しいな。随分逞しくなったようだ」

 声を掛けてきたのはダークの父、サラマイデ公爵であった。


 思考停止に陥り返答することのできないダーク。

 その様子に何かを感じダークの前に立つエリーゼ。


 当然のようにエリーゼには「不敬だ」という周りからの声により正される。


「まあ良い。それが帝都で大暴れしたという猛者、そちの嫡男か?」

「さようで!武者修行の旅に出しましたが、思った以上い早く成果をあげてくれたようで。おっと、これ以上は自慢になってしまいますな!」

 そう言って笑う父親を見て、ダークは苛立っていた。


「僭越ながら陛下、発言することをお許しください」

 すでに膝をつき丁寧な口調でそう言うダーク。


 そんなダークを見て、情報どおり御貴族様だったのだなと、なぜか少しだけ悲しくなるエリーゼ。


 そして陛下から許可されたダークは、その重い口を開くのだ。


「そこにいらっしゃるサラマイデ公爵様は、確かに私の父でありましたが、今は勘当された身。今の私は家名を名乗ることを―――」

「何を言っておるのだ!恥を晒す気か!」

 ダークの言葉は憤る公爵により遮られた。


「公、静かにせんか!」

「しかし……」

 反論をしようとした公爵は皇帝陛下に睨みつけられ、小動物のように縮み上がり押し黙ってしまう。


 そもそも王国側から提案された公爵の同席を、興味本位から承諾したのは皇帝陛下だ。所詮は他国のバカ貴族。最初からその程度の扱いでしかなかったのだ。

 それなのに終始横柄な態度で接する公爵に、苛立ちながらも王国側の面子を潰さぬよう、必死で我慢をしていた皇帝陛下の我慢は限界を突破していた。


「今の私は、家名を名乗ることを許されず、ただのダークとして生きています。公爵家とはなんの関係もないただの冒険者です」

 顔を上げすにそう言うダーク。


 それを見てオロオロすることしかできないエリーゼ。


「では、ただのダークとやら。一介の冒険者として恩賞を、予からの命を伝える」

 そう言った陛下が軽く手を上げると、横にいた男性が取り出した書類を読み上げ始めた。


「国益を担ったダーク殿への恩賞として、今この場をもって賜爵し、男爵とする。直轄領から一区画を割譲、場所の選定は暫し待たれよ。後日伝える故、陛下の恩情に報いるべく懸命に励むことだ」

 そんなことを言われたダーク。


 一度は平民として生きることを、冒険者として生きる道を選んだダークは、今更貴族として生きる人生を考えることはできなかった。何より、冒険者として生きる今の生活は、孤独ではあったが楽しかったと思えていた。


「身に余る栄誉を賜り光栄です。ですが、あまりにも過分な賜りもの、謹んでお断り致します」

 淡々と返答するダーク。


 だがその返答に、周りに待機している騎士が身構えはじめた。

 陛下からの恩賞を無下にするなど、この帝国では有ってはならないこと。


「ならば、死ぬことになるが?」

 じりじりとダークに近づこうとする騎士達を手で制してそう言う陛下。


「何と言われようとも、僕は貴族になんか戻るものか!僕はそう決めたんだ!」

 言葉を崩し返答するダーク。


 途端、怒りの表情を見せた陛下はに呼応するように、騎士達が剣を抜く。


「やめろ馬鹿野郎ども!」

 叫ぶエリーゼにより、切りかかろうとしていた騎士の1人が足を止める。


 そして、気付けば部屋にいる殆どの者が意識を失い倒れ込んでいた。

 残ったのは陛下とエリーゼのたった2人だけ。その場でダークは冷たい目で倒れている公爵を見ながら口を開く。


「もう僕に、構わないでください……、もしこれ以上僕に何かするというなら……、こんな国、潰します」

 ダークはゆっくりと歩き出し、その場を後にした。


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