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[全10話] 毒々独々。毒に始まり毒に終わるある毒術士の孤独で控えめな日々  作者: 安ころもっち


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毒々独々 06


 ダークは逃げるように安宿を取り引きこもる。


 あの洞窟付近に住んでいたことや、上裸の男の討伐に貢献したことは秘密にしていて欲しいとお願いしていたダーク。だがあのエリーゼの様子ではそれが守られるかは正直怪しいと思わざるを得ない。


 そう考えたダークの懸念は早くも現実となる。



 陛下との謁見では無難にダークの強さを隠すことに成功したエリーゼ。

 だが陛下はすでにダークの秘密を知っており、尚且つ翌日になってもダークが詰所に訪ねてこないことで、酒場でやけ酒をして嘆いていた。


「なんで来てくれないんだダーク君!お姉さんの何が悪かったんだ。ベタベタし過ぎたからかー!ダーク君に嫌われちゃったー!ああ、あんな強くて可愛い子、初めてときめいたのに!お婿さんに迎えたかったのにー!」

 そう言って咽び泣くエリーゼ。


「だいたい陛下も陛下だ!毒術士ってだけでさー?なんで警戒しなくちゃいけないんだよー!あんな良い子なのにー!私の王子様なのにー!ダークくーん、カンバーック!」

 そんなことを叫んではテーブルを叩き、追加の酒を注文し一気飲みしていた。


 一緒に飲んでいた上級鑑定士の騎士団員、サイリースは後悔していた。


 団長と比べても遜色のない能力値の、それもあらゆる毒を操る毒術士だということを隠している少年。


「警戒するに超したことはないと思われます」

 陛下に前もってそれを報告したのはサイリースだ。その報告も国を守る騎士団として当然なことだと思っていた。


「その少年、尋問の必要があるな。そちにはその少年をここに連れてくることを命じる。近日中に城へと連れてくるが良い!」

 エリーゼの報告を聞いた後でそう言った陛下。


 そのことも相まってエリーゼの愚痴は続いている。サイリースはそんなエリーゼを上辺は優しく介抱しつつ、面倒だなとため息をついた。



◆◇◆◇◆



 エリーゼが派手に口を滑らせている酒場の一角。

 嘗てのダークが所属していた『龍翼の輝き』のメンバー、ベルナルドとヴァレリオが、エリーゼの話に聞き耳を立てていた。


 2人は必死にダークの行方を捜すべく、馬車を飛ばしベントエストまで行く道中で、ダークらしき者が帝都付近で見かけられたと聞き戻ってきたところだった。


 ダークを追い出した所為で今はすっかり落ちぶれ、日銭を稼ぐ程度にしか活動できず、今やパーティは解散寸前。きっとダークが何かやったのだろう。そう思って5人はそれぞれがダークを探している。

 そんな2人がその話を聞き、ついにダークが帝都にいるのだと確信を得たのだ。


 2人はエリーゼの様子を伺いながら足早に店を出た。


「おい、ヴァレリオ。あの女の話、やっぱダークのことだよな!」

「間違いない!やっぱりあいつは本当は強かったんだ!俺達を騙して手を抜いて、だから俺達が今こんな目に会ってるのは……」

「全てあいつの所為だ!早くあいつを捕まえて……」

 2人は歯をギリギリと噛み締め悔しさに体を震わせながら、拠点としている安宿に戻ると、残りのメンバーにそのことを報告していた。



 それから数日。

 ダークを帝都内を探し回っているエリーゼと数名の団員達は、ダークの足取りを掴むことは叶わず諦めかけていた。


 そんなダークを最初に発見したのは、逆恨みから血眼になって探していた『龍翼の輝き』のメンバー達だった。

 昨夜遅くに宿の食堂でダークを見つけたベルナルドだ。


 すぐに他のメンバーにも報告し、早朝からその宿に集まっていた。

 宿の主になけなしの金貨をちらつかせ、ダークの部屋のドアを蹴破り寝ているダークを強襲する5人。


「なんで……」

 ドアをこじ開けられ驚くダークは驚きでとっさに動くことができなかった。


 剣士である『龍翼の輝き』のリーダー、ロメオにより床に押さえつけられるダーク。


「もう一度、やり直そうぜ!」

 ダークを強く押さえつけならがそう言うロメオ。


 ここ数日の聞き込みで、ダークが強い能力を持っていることを確信し、5人はダークをもう一度仲間に引き込むことに決めていたようだ。


「誰が……」

 痛みに耐えながらそう返すダーク。


 そんなダークをロメオはさらに強く押さえつける。


「一人だけ良いお思いをしようってことか?」

「違う!」

「じゃあ、良いだろ?もう一度、俺達とこの帝都で華々しく活躍しようぜ!」

「僕はお前達とは一緒に行けない……、もうお前達を信じられない……」

 なおも拒否するダークに、ロメオも、その他のメンバーも苛立っていた。


「いいから俺に従えよ、ダァーク!」

 拳を握りしめダークを殴るロメオ。


 その瞬間、ロメオの視界が大きくゆがむ。

 ダークの麻痺毒を直に受け、ぱたりと倒れるロメオ。それを見て怒りを露わにする4人は、狭い宿の一室にも関わらず、派手な攻撃を繰り出した。


 その数秒後、窓側が半壊した室内にはロメオも含む5人が倒れていた。


 もちろん殺したわけでは無い。

 だが、数時間は動けないであろう強い麻痺毒を受けた5人は、すでに意識を飛ばしていた。


 帝都は人が多すぎる。そう考えたダークはさらに西へと移動することになる。手早く食料を買い込んだダークは急ぎ街を出た。



◆◇◆◇◆



「派手にやり合ったんだな」

 そう言って破壊された宿の壁を眺めるエリーゼ。


 あのダークとの戦闘のあった宿を確認しにきていたのは団長であるエリーゼを含む騎士団の面々だ。その後の聞き込みにより被害を受けたのはダークと呼ばれた少年であり、その少年はすでにここにはいない事を知る。


「こんなところに……」

 考えもしなかった安宿に滞在していた事実を知り悔しさをにじませるエリーゼ。帝都の安宿を含む全ての宿を確認しなかったことを後悔した。


「しかし、なぜダーク君がこんな襲撃を?」

 そう呟きながら部下達のさらなる報告を待っていた。


 その夜、意識を取り戻した5人の証言により新たな事実が発覚する。


 5人の証言によると、パーティに迷惑をかけ逃げ出したダークを追ってこの帝都にやってきたという5人。ダークを許しパーティに戻ってくるように説得するためにやってきたのだと。

 だが結局、ダークは自分達を見て逃げ出そうと魔法を暴発させた。自分達は何も悪くない。もう俺達はあいつを許すことはない。捕まえるなら早く捕まえてくれ。そんなことを言ったそうだ。


 その話を聞いたエリーゼは当然のように憤慨し、5人のいる騎士団の詰所の一室へ訪れた。

 怒りを堪えながら「ダーク君はこのような攻撃魔法は使えるのか?」と尋ねれば、5人は口を揃えて「魔導具を使っていたんだ」と言い返された。


 魔導具だ。と言われれば、直接その現場に立ち会っていなければ真偽の程はわからない。エリーゼは渋々ながらそれを受け入れるしかなかった。



「ダーク君は絶対にあんなことはしない!」

 その夜もエリーゼはそう叫びながら酒を飲みテーブルを何度も叩いていた。


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