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[全10話] 毒々独々。毒に始まり毒に終わるある毒術士の孤独で控えめな日々  作者: 安ころもっち


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3/10

毒々独々 03


 馬車内で子爵と話をするダーク。


 子爵はこの周辺の6つの街を管理する領主様で、商人の護衛依頼についていたことを知ると、領主権限を使って達成扱いとなるように計らってくれるという。

 恐縮するダークに対し、「このぐらいはさせて欲しい」と笑みを浮かべる子爵にダークは甘えることにした。


 何事もなくプリモエストまでたどり着いたダークと子爵御一行。子爵邸の前で別れ、冒険者ギルドへと向かうダーク。そのダークに同行する護衛騎士ルーセント。


「我々護衛騎士が盗賊を討伐する際、このダーク君が勇気を振り絞り、多少ではあるが手を貸してくれたのだ。彼が助けてくれなくば危なかったかもしれん。聞けば商人の護衛依頼中だったとか。

 特例で達成扱いして欲しいと我が主より願いがあった。もちろんその分の報酬はこちらで払おう。後で子爵邸に報酬分を請求して欲しい。お嬢さん、お願いできるだろうか?」

 そんなルーセントの願いに受付嬢ルチアは「かしこまりました」と短く返す。


 ダークは護衛依頼の報酬として受け取るはずだった1人分の報酬を受け取り、改めてルーセントに頭を下げた。

 そんな中、ダークの帰還を見ていた『疾風怒涛』の面々が様子を伺うようにやってきた。


「いやー、良くやったなダーク!俺達も助けようと思ったが護衛依頼があったし、仲間として誇らしいよ!」

「ダークを残したのは俺達の判断だったしな!無事にやり遂げてくれたんだな!嬉しいよ!」

 そう言ってダークを持ち上げる。


「お前達がダーク君のパーティメンバーだろうか?」

 やや冷ややかなルーセントの問いに「そうだ」と返す5人。


「話は全て聞いている!その不愉快な口を開くな!この痴れ者が!」

 その一言で5人に向け強い敵意を向けるルーセント。


 驚く5人はギルドから逃げるように出ていった。ダークに強い怨嗟の眼差しを向けながら……。


 冒険者ギルドを出ると、そのまま子爵家に招待されるダーク。

 再会した子爵からはお礼として拠点となる小さな一軒家を与えられる。子爵としてはほんの小さな……、ダークにとっては持て余す程の屋敷であった。


 さすがに受け取れないと恐縮するダークに、屋敷まで付き添ったルーセントは「我が主の御命はこの屋敷程の価値も無い……、ということだろうか?」と笑顔で言われたら、黙ってお礼を言うしかなかった。

 それを見て豪快に笑うルーセントは、「何かあればいつでも相談に来ると良い!」と言い残し帰って行った。


 5~6人程度なら十分に共同生活できそうな屋敷。

 確かに安宿暮らしをしているダークにとっては快適な生活環境ではあった。屋敷内に設置されていた最新の魔導具は、生活力のあまりないダークには正直ありがたかった。


 そんな屋敷をを拠点にソロ活動を続けるダークは、相も変わらず簡単な依頼をこなしながら、変化のない日々をそれなりに楽しんでいた。


 運が良いのか悪いのか、依頼の最中にはどうしても冒険者ギルドには出せないような魔物のレア素材を獲得してしまうダーク。

 その殆どを子爵家に買い取って貰ったことで、資金に余裕ができたダークは今まで以上にゆったりとした日々を送る。


 そんなある日、またも受付嬢ルチアにレア素材の探索依頼を押し付けられてしまったダーク。


 初心者向けの狩場ながらもプリモエストからは距離がある為、あまり人気の無い狩場。そこに出現する金毛鼠の魔物の捕獲依頼。

 あまり珍しい魔物ではないが、研究用にと10匹につき金貨1枚と破格の条件ではあった為、ダークの懐具合を知らないルチアが善意で押し付けたのだろう。そう思っていたダーク。


 余計なお世話だよ。

 ダークはそうは思いながらも「あなたの為よ!」と強調するルチアの依頼を、無下にすることはできなかった。


 時刻は昼過ぎ。冒険者ギルドから手配をされた荷馬車にゆられ、目的地である森へと到着したダーク。


「夕方にまたここに戻ってくる」

 そう言って元の道へを引き返して行った馬車を見送ったダークは、森の中へと入って行った。


 その時、森の中からそのダークをこっそりと覗く影があることに、ダークはまだ気づいていなかった。



 森の中に入ると、金毛鼠が出没しそうな湿地帯を探すダーク。

 冒険者ギルドから渡された手書きの地図を参考に奥へと入って行く。


「お、いたいた」

 独り言を言いながら目当ての鼠を捕獲する。


 すぐに目標となる10匹を捕獲し終えたが、考えてみたら依頼書には捕獲の上限が書いていないことに気付く。

 何匹程度狩れば良いのだろうか?

 そう考えながら早々に切り上げようと思ったダーク。


 そもそも今のダークはこれ以上稼ぐことは不要であった。押し付けられた依頼だ。最低限(こな)せば十分だと判断したダークは、早々に出口へと戻ることにした。


 そんなダークは視線を感じ足を止める。

 葉の揺れる音と共に木々の陰から人影が見えた。


 警戒し身構えるダーク。


 そんなダークに飛び掛かり、大剣を振り下ろしてきたのは『疾風怒涛』の剣士グッリェルモであった。

 その攻撃を受け流すように籠手でいなすと、その後ろから炎の攻撃が飛んできた。


 背後に飛び退き距離を取るダークは、飛び散る火の粉を手で払いながら自身への強化毒をさらに強めた。


「やっぱりお前、強かったんだな。子爵を助けたのもお前だな?」

 そんな声をあげるのは、疾風怒涛のリーダー、魔法剣士のバジリオだった。


 バジリオの手には冒険者ギルドでも使用しているレンズ型の魔道具があった。

 ダークは自身の左手を確認すると、指に装着していた偽職の指輪の石が割れていることに気付いた。火の粉を弾いた時に破損したのかも。そう考えながら、どう返答しようか迷っていた。


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