№8ふたりさんぽ
晩秋のさんぽ。
外寒さを身近に感じるようになった11月中旬、みんなは束の間の休みをとった。
最近、環の著しい身体の不調もあり、静が声帯を痛めたり、綺羅々が階段を躓き軽い捻挫などをして、モチベーションの低下がおこり、碧が休暇をとることを決断したのだった。
正直、デビューを間近に控えて休んでいる時間などはなかった。
が、いうてもついこの前まで普通の生活をしていた皆である。
その過労たるや想像に難しであった。
という訳でギリギリ2日間の休みで各自には碧からリフレッシュをする旨が言い渡された。
環は笑顔で喜んだ。
が、静は「今、休むべきではないでしょ」とくってかかったが、「まずはその喉を休めなよ」と碧はたしなめて返した。「・・・・」言い返せない彼女に、合いの手を入れ、綺羅々はうんうんと頷き「分かりました」と返事をし休みが急遽確定した。
で、環と碧は散歩をしている。
掘割沿いの白秋道路をゆっくりと歩く。
グワッ!
アオサギがけたたましい鳴き声をして真上を飛んでいく。
「うっさいな」
思わず空らを見上げ碧は呟く。
「あっカモ」
環は水辺を滑る親子鴨の群れを指さす。
「そうカモ」
「・・・つまんない」
碧の寒い一言に環は肩をすくめた。
「きびしいなぁ」
「ふふふ、そうでしょう」
環は悪戯っぽく笑う。
「・・・・・・ん」
碧は彼女に手を差し伸べる。
「うん」
環は頷くと彼の手を握り、ふたりは手を繋いで歩いた。
日吉神社の近く桟橋のある東屋まで来ると2人はベンチに腰をおろした。
「ちょっと待っていて」
碧は水上売店でホットコーヒーとおしるこを買って来ると、彼女におしるこを手渡した。
「ありがと」
「ん」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
彼のコーヒーをすする音、彼女は両手でおしるこを持ったまま黙っている。
「あのさ」
碧が少しの沈黙を破り環に尋ねる。
「うん?」
「体調どうなんだ」
「・・・どうなんだろうねぇ」
彼女は「ふ~う」とおしるこに息を吹きかけ一口飲んだ。
「自分の身体だろ」
「うん」
「なあ」
「私、幸せだなあって思うんだ」
「?なんだよ突然」
「うん。あのそう、幸せって思い感じるほど身体が重くなっていくような・・・消えてしまいそうな・・・」
「それって」
深刻な顔をする碧に、環は慌ててぶんぶんと両手を振るう。
「ああ、心配しないで大丈夫、大丈夫だから」
「・・・・・・だけど」
「今は大事な時じゃない!夢に向かって煌けだよね」
環は満面の笑顔で言った。
「ああ。きっと気の所為だよ」
碧はそう言って頷いたが、一抹の不安は拭えないでいた。
ふたりの思い。




