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№3環の気持ち

 さぁ。

 

 環が出ていき、その場が騒然となる中、

「俺ちょっと行ってくる」

 碧は慌てて彼女を追いかけた。


 全力で疾走し、ぐるりと辺りを駆け巡って、彼はすぐ彼女を見つけた。

(・・・いた)

 環は練習場の裏にある掘割の岸辺に、体操座りで俯き泣いていた。

 碧はそっと近づき、彼女の隣に腰かける。

「どうしたんだよ」

 彼は出来る限り優しい口調で話した。

「だって」

 彼女は嗚咽混じりで返す。

「俺や白石だってずっと考えて出した結論なんだよ。ちぇんじまいらいふはこれからだから」

「・・・・・・」

「それに環、あくまでも休学なんだから、学校辞めた訳じゃないし」

「うぇ・・・うん・・・うん」

 泣きじゃくり、鼻をすする彼女。

「ほい」

 彼はポケットテッシュを手渡す。

「・・・ありがと」

 鼻チーンし、空を仰ぐ環、

「どうしたんだよ・・・らしくないよ」

「・・・・・・らしくないの?」

「ああ」

「私らしくって・・・」

「いつも元気で明るくってさ・・・それが環だろ」

「・・・そうなのかな」

「そうだよ」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 環はずっと水面を眺め、碧は彼女を見つめ続ける。


「・・・アオちゃん」

 彼女はそっと右手を差し出す、彼はその手を握りしめた。

「ありがと」

「どういたしまして」

「ふふふ・・・」

 環はくすくすと笑うと空を仰いだ。

「どうした急に?」

 急に笑い出した彼女に碧はほっとしつつも戸惑う。

「アオちゃん・・・私ね。幸せなんだ。きっと」

「・・・・・・」

「だって、アオちゃん、みんなにも会えて、ずっとずっと嬉しかった。あの時からずっと頑張って来てよかったって、だから今があるんだって」

「うん」

 碧は静かに頷いた。

「・・・でも、嬉しくて幸せ過ぎるほど、最近、私の身体がたまに言う事をきかなくなるの」

 彼は握りしめる彼女の手を見た、うっすらと透けて骨がみえている。

「ね」

「・・・・・・」

「だから、私の為に頑張らなくてもいいんだよ」

「違う!」

「・・・アオちゃん」

「大丈夫だ」

 碧は環を引き寄せて抱きしめた。

「・・・アオちゃん」

「俺が、俺たちがお前を守る。だからだから信じてくれ」

「・・・うん」

「な」

「うん・・・うん、本当にありがとう」

 碧は環の手を見た。

 その手はもう血の通った人の手をしている。

「な」

「そうだね」

 と、笑い合うふたり。


 それから・・・。

 ふたりは手を繋いで練習場へ戻った。

「ごめんなさい、しーちゃん、綺羅々さん」

 ぺこりと頭を下げる環に、


「よ、ご両人」

 と、静はサムアップし、

「おめでとうございます」

 と、微笑む綺羅々。

 環は皆を信じ、ちぇんじまいらいふは全国デビューに向け、レッスンに励んだ。




 多少の不安と大きな希望をもって。

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