№2碧と静の決断に環は衝撃を受ける
まあね、
西日さす部屋でしばらく長い沈黙が続いていた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「学生の本分は学業と思いますが・・・違いますか」
学生課の事務職員はじっと碧の顔を見て、ゆっくりと諭すように言った。
「・・・はい」
彼は大きく頷き、真っすぐな目で職員を見返した。
「だけど、今はやらなくちゃいけないんです」
その言葉には断固とした決意があった。
「ふう。それがご当地アイドルのマネージャーですか」
「はい。今からちぇんじまいらいふは全国・・・いえ、世界に羽ばたきますから」
「・・・・・・」
碧の迷いのない言葉に、職員は眼鏡を直しつつ、彼の迷いのない眩しさに俯き目を伏せた。
「・・・夢ですか」
一言呟く。
「はい」
「・・・分かりました。休学届は預かりました、ところで、あなたがお世話になっている教授たちには、そのお話はされているのですね」
「はい」
「なんとおっしゃっていました?」
「頑張れと・・・あと馬鹿なのかと」
職員は頷き、
「でしょうね、だけど、あなたが選択した道です。私からも健闘を祈ります・・・ですが、君が一生懸命に勉強して入った我が大学です。出来れば戻って来てください」
「・・・・・・」
碧は何も言わずに深々と頭を下げた。
そして数日後。
全国デビューに備え、ちぇんじまいらいふのダンスのレッスン中のことである。
小休憩となった時に、環は何げなく碧に話しかける。
「最近、朝、見かけないね」
「ああ・・・うん」
「学校・・・休み」
「・・・いや」
「そうよね・・・何かあったの?」
環の追求に碧はぽりぽりと頭をかき、
「学校、今、休んでいる、目下休学中なんだ」
「・・・なんで」
「なんでって・・・」
二人の間に微妙に気まずい空気が流れる。
そんな中、おずおずと静が右手を上げて、
「私も」
「なんで、しーちゃんまで」
「なんでって・・・」
静も碧と同様の返しをして、ふたり顔を見合わせる。
「なんで!」
環は怒っていた。
まさか彼女がこんな反応をするとは、碧も静も思っても見なかったので、ただただ驚くばかりだった。
「そんなことしなくてもいいのに!」
横目で見ていた綺羅々はびくっと驚き、不安気な表情をみせる。
「・・・環」
碧は言葉を失う。
「2人の大事なこと投げ出しちゃ駄目でしょう」
「今はこっちの方が大事でしょ」
静ははっきり言った。
「そうだよ」
碧も同調する。
「・・・だけど」
「環、もうすぐ全国デビューだわ。生半可な気持ちじゃ、私たちに関わってくれているみんなに失礼だもん。そうじゃない?」
静はじっと環の目を見た。
「俺も全力でみんなを支えたいと思ったから・・・」
碧も環の目を見る。
彼女はふたりの視線から目を反らした。
「今のままででいいじゃん」
「そういう訳にはいかないよ」
諭すように言う碧の言葉に、環は思わず涙が溢れ、逃げ出すように練習場を飛び出した。
そう判断するよね。
でも環の思いは・・・。




