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No.6戦姫と戦鬼

 8月編はここまで。


 時は戦国時代、九州筑後は柳川の地において大名たちは、水に囲まれ難攻不落の要害と化す、この地の覇権を巡り幾度も戦を繰り返したのだった。

  先主蒲池氏が竜造寺氏に謀殺され、柳川に暗雲がたちこめる。

  九州に覇を唱えんとんとす大友氏は重臣、戸次道雪と高橋紹運が筑後への進出を果たした。

 時、同じくして九州の雄である島津氏が竜造寺を破り筑後へと進出し、かの地を巡り大友と島津は争うことになる。

 その最中である。

 久留米高良山で陣を構えていた戸次道雪は命が尽きる時、

「必ず柳川の地を手に入れよ」

  愛娘誾千代とその夫宗茂に固くそう言い残した。


  やがて、戦乱の火種は九州の各地へと飛び火するが、豊臣秀吉の九州仕置によって、かの地は平定された。

 その戦いで獅子奮迅の活躍を見せた立花家は、父道雪の宿願であった柳川の地を与えられたのである。

  それからは関ヶ原の戦で西軍加担の為、立花家改易の憂き目にあい、田中氏入封、復活と紆余曲折を経て、江戸時代が終わるまで柳川の地は立花家が治めた。


 そして・・・現在。

 立花道雪の愛娘にして、戦国地代のチート武将宗茂の妻、かつては戦姫と呼ばれた立花誾千代の魂は、今を生きていた流星綺羅々の身体へと転生する。

 魂が器に入る刹那、綺羅々の生前の思いが誾千代の魂へと流れだし、誾千代こと綺羅々は己の宿命を悟った。

 筑後柳川にはびこる、怨霊、化け物を誅す、それが妖怪ハンター流星綺羅々なのである。

 

 綺羅々は今まさに柳川の戦鬼と対峙している。     

 その鬼こそ環である。

 彼女は心をこの地に根付く、怨霊、闇環に取り込まれ鬼と化したのだ。

「とうとう環を喰らいおったか」

 綺羅々は誾千代の口調となる。

「ふふふ、ついに我は力を手にしたっ!」

「なにがそなたをそこまで駆り立てる?」

「分からぬかっ!立花誾千代っ!お前が憎い。何故、貴様如き、いち大友の家臣が、この我の地を奪い、のうのうと子々孫々繫栄し生き長らえたかっ!」

「決して、そんな事はないのだがな」

 すらり、愛刀雷切丸を鞘から抜いた綺羅々は正眼に構える。

「・・・蒲池か、竜造寺か、はたまた島津か、それともそのすべての恨みか・・・だが、知っているはず、栄枯盛衰、それは戦国の習わしの常であると」

 戦鬼環は美しい顔を般若へと変え激昂する。 「ぬかせっ!五月蠅いっ!お前たちがいなければ!」

「いなければどうなった?」

「我々は栄達を極めておったはず!」

「天下人に抗うてもか」

「・・・ぬう、この地を再び治めなければ、死んでいった同胞に報いることが出来ないのだ」

「今更」

 そう呟くのは綺羅々。

「もはや言葉は不要っ!死ねい誾千代!」

 戦鬼環は飛びかかり、死神の鎌を振り下ろす。

  斬撃。

  頭上への一撃を、綺羅々は雷切丸で受け止めた。

「我々をずっとこの機をうかがっていた、幾百年同胞の魂を集め、この強力な依り代をもって、柳川を取り戻すのだ」

  鍔迫り合いの後、綺羅々は押し返す。

「戯言を」

「戯言ではないっ!」

 戦鬼は後ろへ飛びのいた後、着地と同時に綺羅々へ横薙ぎの一撃を加える。

 ひらりとかわし彼女は宙に舞う。

  綺羅は着地後、再び正眼に構える。

「今を見よ。この世は平和だ」

「一体どこがだ」

「少なくとも戦はない」

「我は知っている。今を生きる者たちの心の闇を、だからこの地を平定して救うのだ」

「悪霊に、悪鬼には救えない」

「ぬかせっ!」

「ふんっ!」

 鎌が振り下ろされる刹那、彼女は踏み出し雷切丸を真っすぐ一閃する。

 鬼環の持つ鎌の柄の部分が真っ二つに両断される。

「さらば、戦国より根付く怒りと恨みの連鎖よ」  

 綺羅々は返す刀で、横に薙いだ。 戦鬼の首が刎ね飛び宙に舞う。

「な・・・たちばな・・・ぎんち・・・」

  鬼の身体は塵となり消えて行った。


 綺羅々は刀を払うと雷切丸を鞘へと納めると、落ちて来る環の頭を両手で受け止めて抱きしめる。

「たまき・・・さん」

「もう大丈夫です」

 綺羅々の長い黒髪が風に揺れる。

 彼女はそっと目を閉じ、祈りを捧げた。

 来月は9月編となります。

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