No.5このさけ打ち上げっ!
ライブの後は宴会やで~。
沖端の町にある老舗の暁茶屋でCMLz初ライブの打ち上げが行われた。
主に有明海の海鮮を取り扱うこの店には、旨い魚や貝は勿論、ワラスボやむつごろうなどの珍味も味わえる。
二階を貸し切っての座敷でささやかな宴席となった。
主役CMLzの3人と碧、明石家族がいて、それに伊武夫妻に茜と健司も招かれた。
「それでは、CMLz初ライブ大成功を祝しまして・・・」
環の父俊二は上機嫌でビールグラスを掲げる。
「ちょっと、お父さん。乾杯の音頭は碧君よ」
絵美が俊二の腹を肘でこづく。
「ああ、すまん、すまん」
フライング気味で乾杯しようとしていた父は、うっかりとばかりに自分の頭を軽く叩く。
「もう」
環が呆れる。
「じゃ、碧くん」
「はい」
俊二に促され碧は立ち上がった。
「本日はCMLzの単独ライブ、無事にやり遂げることが出来ました。これも皆様の支えが合ってこそのものでございます。メンバー並びにプロデューサーの私一同、心より・・・」
碧のグラスを持つ手を震えながら言う様をみて、 「固い、固い」
環が微笑みながらツッコむ。
「リラックス~」
静がどうどうと落ち着けとばかりに両手を上下させる。
「よっ緊張しい」
綺羅々が口元に左手を添えおちょくる。 「・・・・・・」
彼が苦笑いを浮かべると、一同が大笑いをした。 「ったく・・・じゃあ、皆様に感謝とCMLzの新たなスタートにっ!」
「乾杯っ!」
宴がはじまった。
「あのさ」
環が隣の碧に話しかける。
宴会は次第に混沌としてくる。
「では、そろそろ宴もたけなわですな・・・いっちょ私がひと肌脱いで・・・モロだしダンスを・・・」
「お父さんやめて!」
絵美が必死の形相で俊二を止めに入る。
「では、この俺が世界の闇を暴く古の禁呪の詩を今ここに・・・」
2人の間隙をぬって、和志が立ち上がり目を輝かせる。
「やめなさい。中二病息子っ!」
絵美は息子の頭を小突いた。
「いて」
みんなから笑いが巻き起こる。
碧はニヤリと笑い、
「さ、たしかに宴もたけなわ。そろそろ〆ようか。環」
ぽんと彼女の肩を叩いた。
「へ」
驚く彼女に、受雷は、
「よっ」
と一声かけ、周りが一斉にはやし立てた。
「えっと・・・」
環は戸惑いながらも、慌てて立ち上がり、言葉を探す。
「私たちCMLzは、皆さんの支えがあってこの場にいます。命や心・・・ダメだと思った事、何度もあります・・・だけど、諦めなかった・・・諦めなくてよかった。こうして、また素晴らしい日々がはじまること決して忘れません。今までそれからこれからもありがとうございます・・・」
環は思わず流れた涙を拳で拭うと、
「CMLzははじまったばかりです・・・まだまだよろしくお願いします」
彼女が深々と頭を下げると、温かい拍手に場は包まれた。
翌日。
伊武夫妻は帰路へ。
柳川駅への構内に入り、真美は受雷に言った。 「今回はノーギャラ・・・無駄足だったわね」 「いんや」
「うん?」
「そんなことない・・・だろ」
「そうね」
受雷の向ける視線に真実も重ねる。
「おーい、受雷さーん」
そこへ茜が見送りに駆けて来る。 手渡されたのは新聞だった。
「これは?」
「伊武さん、後で読んでね」
「?」
「伊武さん、真美さん、またね」
「ああ」
「今度はこっちにもおいでよ」
「はいっ」
茜は両手を大きく振ってふたりとの別れを惜しんだ。
「有明新報・・・ね」
電車の中で地方新聞を広げた瞬間、彼は破顔する。 「どうしたの?」
のぞきこむ真美もまたすぐ笑顔となる。
「すごいね」
一面にCMLzの初ライブの写真と記事が載っていた。
プシュ!
ふたりはビール缶を開け乾杯する。
そして8月へ。
※次回の投稿は来年の1月中旬頃になります。




