表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/34

〜七月〜 No.1鎮魂探偵伊武受雷来福

新たな波乱の予感。


伊武受雷は鎮魂探偵である。

彼は死体に触れる事によって、死者と会話が出来るのである。

その能力により数々の難事件を解き明かしてきた。 そして今回は・・・。


7月ある日のことである。

初夏とは思えない猛暑日、伊武受雷とその妻由美は、柳川駅へと降り立った。

柳川は観光地、しかしこの日は平日とあって駅付近は閑散としていた。

むあんと蒸し暑さを感じる。

額には汗が滲む。

すでに街に夕闇が訪れていて、構内をでると青々とした柳の枝が葉を静かに揺らしていた。

「久しぶりだな」

「ええ」

「十数年ぶりか」

「・・・そんなに」

 受雷には白髪が増え、髪の毛を染めている由美にも、皴があり寄る年を隠せない。

彼等は齢50代となっていた。

そこへ駆け寄ってくる若いカップルがいた。

「伊武さん」

懐かしそうに手を振る若い女性。

かつてこの地柳川で起きた怪事件で知り合った時、茜はまだ小学生だった。

「茜ちゃんか、大きくなったな。そちらは・・・」 受雷は右手を広げ尋ねた。

「婚約者の矢留健司です」

ぺこりと頭を下げる好青年。

「そっか、おめでとう」

由美は自分の事のように喜んだ。

「立ち話もなんだからお祝いの一杯も兼ねて行こうか」

受雷は右手でグラスを持つ仕草をつくる。

「はい」

「よろこんで」

茜の返事に皆は笑い合った。


伊武夫妻は、二人に連れられて、駅裏の小さな歓楽街にある沖縄居酒屋「なんくるないさー」へと入った。

受雷と茜は泡盛、真美と健司はオリオンビールを注文した。

付け合わせのミミガーをつまみに4人は乾杯する。 「ぷっはぁ、美味しい!」

真美が豪快にイッキ飲みする様子を見て、受雷は苦笑いする。

「で、受雷さん事件なんですか」

茜はド直球で聞いて来る。

これまた苦笑いする受雷だが、これ幸いと本題へと入った。

「ある事を調べて欲しいという依頼があってね」 「ある事って・・・」

健司は海ぶどうを啜りながら尋ねた。

「ご当地アイドルは知っている?」

真美の質問に、若い2人は顔を見合わせる。

「聞いたことあるような・・・」

健司は首を傾げ、

「あ、私この前、彼女たち乗せたよ」

茜は彼の肩をバンバンと叩く。

「・・・いて、いて、わかったって、自慢したいの」

「へい、ソーミンちゃんぷるーお待ち」

「ありがと」

真美が店員から大皿を受け取る。

若い2人はいちゃいちゃとやり取りを続けている。 「あー、えっとぉ・・・」

「ほら、YouTube動画でてるっしょ」

「あーこれ」

「ほら皆に観せて観せて」

「ところでなんで、俺のスマホ?お前のスマホですればいいやん」

「いや、私4ギガだから・・・」

「はい?・・・だからどういうこと」

健司は肩をすくめ、件の動画を受雷たちに見せる。

柳川の名所を舞台に元気に踊り歌う可愛らしい、いかにもなご当地アイドルだった。

勿論、川下りの映像もあった。

「あーこれこれ、CMLzちぇんじまいらいふって娘たちね。ほらほらこの船頭わたし」

受雷は茜の自慢顔をちらりと一瞥して映像を観る。今どきのアイドル衣装に身を包み、3人が歌いながら踊っている姿が映しだされる。

「ん?」

受雷は真ん中に位置する環をじっと食い入り観ている。

「どうしたの?受雷さん」

真美の問いかけに、

「いや、なんでもない」

「変な、受雷さん、あ、店員さん、ハイボールください」

「あ、俺も」

由美に続いて手をあげる受雷。

「はい。アグー豚のみそ焼きに、ハイボール2丁おまち」

「私たちはオリオンビール追加」

茜と健司は手をあげる。

「よろこんで、ありがとうございます~!」

受雷はポケットからフリスクを取り出すと、フリフリして10粒ぐらい手の平に乗せ、ハイボールをイッキに流し込んだ。

「うわっ」

ドン引きする若い2人。

「おいしいかもー」

おどけて、空のグラスをカラカラさせる受雷は急に真顔になり、

「茜ちゃん」

「はい」

「明日、よろしく頼むよ」

「はい、いつも通りやるだけなので、任せてください・・・って、その落差」

「ふふふ」

受雷は不敵な笑みを浮かべつつ、グラスをまたカラカラさせ、  

「おかわりかもー」

「やめてーカラカラさんは・・・」

真美は腹を抱えて笑い転げる。

和やかに居酒屋の夜は更けていく。

伊武受雷とは?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ