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~四月~ №1四月嘘

 観光の町に・・・。


 碧は思う。

 あれは夢だったのか・・・。

 卒業式の後、家のベッドで目を覚ました彼は、もやもやとした中、春休みを過ごした。

 今日は4月1日である。

 環はふらりと碧の家を訪ねる。

 何事もなかったかのように、彼の母親と世間話をしている。

 彼はベッドから跳ね起き、転びそうになりながら玄関へと向かう。

「環っ!」

「ちょっと話をしない」

「・・・・・・ああ」


 2人は外にでて散歩をする。

 碧は環に気づかれないように、まじまじと彼女の姿をみた。

 それは再会した時と変わらぬ、美しい彼女だった。

「・・・あのさ」

 戸惑う彼に、

「ね、びっくりした?」

 彼女は彼の顔に自分の顔を近づけ笑った。

「・・・なにが」

 どきりとして、なんとか言葉を返す碧。

「・・・なにがって、あの時の私の姿・・・」

 一瞬の間があって、環は確信をつく凛とした表情をみせる。

「・・・ああ」

 彼は正直に頷いた。

「あれね」

「・・・うん」

「嘘なの」

「嘘?」

「だって、今日は何の日?」

「何の日って、4月1日・・・って・・・」

「そう、エイプリルフールよね。だから、あれ嘘でした~」

「・・・・・・」

「嘘よ、嘘」

「そっかあ、脅かすなよ」

「ごめん、ごめん」

 環のついた嘘に碧は半信半疑だが、今は信じようとした。

 そんな時、

「・・・あ」

 彼女はそっと両腕を後ろに回し、左腕をおさえた。

 ポロリ。

 彼女の隠した腕の肌が崩れ落ちた。


 二人はぶらりと沖端の町を歩く。

 春風が心地よい。

(夢じゃないんだ)

 碧はそんな気持ちを噛みしめた。


「あのさ」

「うん」

「俺」

「うん」

「いや」

「どうしたの?」

「混んでるね」

「うん」


 観光案内所の前までさしかかると、急に観光客の往来が激しくなり、二人は間をぬうように歩いた。

 ドン。

 碧の肩に観光客があたる。

「きゃ!」

 環がそう叫んだ瞬間、彼女の頭部が宙を舞った。

 碧の頭は真っ白となる。

 運悪く、走って来た観光客にぶつかってしまった環はその勢いで、頭部が外れてしまったのだった。

「ぎぃやややややああああ!」

 観光地はパニックとなる。

 環の頭がぽとりと地におちた。



 惨劇か。

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